2026.03.26

獣医師さんに聞いてみた|猫がかかりやすい病気は、ライフステージでどう違う?

獣医師さんに聞いてみた|猫がかかりやすい病気は、ライフステージでどう違う?

猫は本来、体の不調や痛みをできるだけ表に出さない動物です。そのため、食欲があり、普段通りに過ごしているように見えていても、体の中では静かに変化が進んでいることがあります。
動物病院の現場では「この年齢になると、こうした症状で来院する猫が多くなることがある。」「このライフステージでは、見逃されやすい変化がある。」といった声が聞かれます。年齢によって、注意したいポイントに違いが出てくることもあるようです。
今回は獣医師さんに、猫がライフステージ別にかかりやすい病気と、その理由について、Q&A形式で詳しく聞いてみました。

※なお、ここで紹介しているライフステージは、あくまでもひとつの目安です。猫の体質や生活環境、これまでの経過によって、体の変化の現れ方には個体差があります。

■猫の健康や体調に関する疑問を、獣医師の視点から紐解いていくシリーズ。獣医師さんに聞いてみたシリーズはこちら

CAT's TALK

獣医師 菱沼 篤子

【獣医師】菱沼 篤子

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです

Q1:子猫期は、なぜ体調を崩しやすいのでしょうか?

A:免疫機能と消化機能が未完成な状態だからです。

子猫期(おおよそ生後〜1歳頃)は、移行免疫*1が変化していく時期であることに加え、免疫機能や消化機能、体温調節、エネルギーの蓄えもまだ安定していないため、体調を崩すと一気に状態が悪化しやすい傾向があります。
そのため、以下の病気や症状に注意が必要です。

・猫風邪などのウイルス
└ 子猫は免疫が未熟なため、ウイルスに対する抵抗力が弱い状態です。一見軽そうに見えても、体力を消耗しやすい点が子猫期の注意ポイントです。

・細菌感染症
└ 免疫機能が十分に働いていない子猫では、細菌に対しても防御が追いつかないことがあり、症状が複合的になりやすいのが特徴です。

・下痢や軟便、嘔吐
└ 消化器官がまだ発達途中のため、食事の内容や量の変化に影響を受けやすい時期です。軽い下痢でも、子猫では脱水や体重減少につながりやすいため、症状が軽くても注意が必要です。

・寄生虫感染
└ 母猫や生活環境を通じて、比較的早い段階で感染が起こることがあるのが寄生虫です。下痢やおなかの張り、発育不良の原因になることもあり、症状がはっきり出ないまま進むケースもあります。

・低血糖や脱水
└ 子猫は体に蓄えられるエネルギー量が少なく、食事間隔が空くだけでも低血糖を起こすことがあります。また、水分量の変化にも弱く、下痢や食欲低下が続くと脱水に陥りやすい点も注意が必要です。

これらのトラブルは、子猫だからこそ起こりやすく、特に注意が必要なのは、症状の進行が非常に早いことです。成猫であれば様子を見られるような不調でも、子猫では一気に状態が悪化するケースがあります。

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ゴロー

ゴロー

王子は、子猫のころはちょっとおなかが変なだけで一大事だったって聞いたことあるであります。

王子

王子

そうなのだ!ボクは人間のベッドの上で粗相をしたりとダイナミックだったのだ。

*1 移行免疫とは:子猫が生後しばらくの間、母猫から受け取る一時的な免疫のこと。子猫は生まれた直後、自分自身の免疫機能がまだ十分に働いていないため、母猫の初乳を通して免疫成分を受け取ることで、感染症などから守られながら成長を始めます。成長とともにその効果は徐々に変化していきます

Q2:子猫の不調は、どのタイミングで受診すべきですか?

A:「元気そう」に見えても、迷った時点で相談するのがおすすめです。

子猫の場合、

・食べる量が急に減った
・便が数日続けてゆるい
・動きが鈍くなった
・寝ている時間が明らかに増えた

といった変化は、受診を検討する目安になります。
獣医師さんによると「早めに診せてもらえれば、軽い治療や経過観察で済むことが多い。」とのこと。

Q3:成猫期になると、病気の心配は減りますか?

A:重い病気は少ないですが、見逃されやすいトラブルが増えます。

成猫期(1〜7歳頃)は、行動や食欲が安定し「健康そのもの」に見えやすい時期です。
しかし実際には、以下の病気や症状が進行している場合も。

・下部尿路疾患(膀胱炎、尿石症)
└ 成猫期に多い膀胱炎や尿石症は、トイレの回数が増える、排尿時に違和感があるといった変化から始まることが多い病気です。ただし症状が数日で落ち着くこともあり「たまたま調子が悪かっただけ」と見落とされることも。実際には、水分摂取量や尿の性状、食事内容など日常の積み重ねが影響しているケースも少なくありません。

・歯周病
└ 歯周病は、成猫期から少しずつ進行していくことが多いトラブルです。口の中は普段あまりじっくり見る機会がなく、初期段階では食欲も落ちにくいため、気づいた時には進行しているケースもあります。口臭や歯ぐきの赤みは、見逃されやすいサインのひとつです。

・肥満
└ 成猫期は運動量が少しずつ落ち着く一方で、食事量が変わらないことも多く、気づかないうちに体重が増えていくことがあります。肥満はそれ自体が病気というより、尿路トラブルや関節への負担など、別の不調につながりやすい状態です。

・慢性的な軟便や便秘
└ 成猫期に見られる慢性的な軟便や便秘は、昔からこうだから、とか、元気だから問題ないと受け止められがちです。しかし、腸内環境の乱れや食事内容との相性など、日々の積み重ねが影響している場合もあります。症状が軽いため、受診のきっかけになりにくい点が特徴です。
また、猫の便秘は、人の便秘とは違い、長く続くことで腸が拡張し、機能そのものが落ちてしまうことがあります。
「出ないけど元気だから」と様子を見続けることで、かえって慢性化してしまうケースも少なくありません。
■関連記事:猫の便秘は人間とちょっと違う。症状・原因から予防法まで知るべきポイントまとめ[#獣医師監修]

成猫期のトラブルは、ひとつひとつは軽く見えやすいものの、原因が解消されないままくり返され、体への負担が少しずつ蓄積される場合があります。

Q4:成猫期の病気は、なぜ受診が遅れがちなのでしょうか?

A:症状が軽く、一時的に落ち着くことがあるからです。

例えば膀胱炎の場合、

・トイレに行く回数が増える
・数日で元に戻る

といった経過をたどることがあります。
その結果、「一時的なものだった。」「もう治ったみたい。」と判断され、根本的な対策が後回しになるケースも少なくありません。

CAT's TALK

ムー

ムー

平気な顔をするのは、猫のたしなみなのよ。

クリ

クリ

でもね、内心は結構がんばってることもあるよ。

Q5:シニア期になると、どんな病気が増えてきますか?

A:腎臓や心臓など、体の中の病気が増えてきます。

シニア期(7〜8歳頃〜)は、加齢によって内臓機能が少しずつ低下し、負担が表面化しやすい時期です。
特に多く見られるのは、

・慢性腎臓病
└ 慢性腎臓病は、シニア期の猫で非常に多く見られる病気です。腎臓は予備能力が高いため、機能が少しずつ低下しても、初期段階では元気や食欲に大きな変化が出にくいことがあります。水を飲む量や尿量の変化、体重の微減など、ゆっくりした変化として現れる点が特徴です。

・甲状腺機能亢進症
└ 甲状腺機能亢進症では、代謝が過剰に高まるため、よく食べているのに体重が減る、落ち着きがなくなるなどの変化が見られます。一見すると、元気なシニアに見えることもあり、体調不良として認識されにくい点が特徴です。

・心臓病
└ 心臓病は、初期にはほとんど症状が出ないケースも多く、見た目だけでは気づきにくい病気のひとつです。呼吸が早くなる、動くのを嫌がるといった変化も、年齢のせいと受け止められやすいため、注意が必要です。

・関節疾患
└ 関節のトラブルは、加齢とともに増えてきますが、猫は痛みを分かりやすく訴えることが少ない動物です。高いところに上らなくなる、ジャンプを避ける、動きが慎重になるといった行動の変化として現れることが多く、老化との区別が難しい点が特徴です。

・腫瘍性疾患
└ 腫瘍性疾患はシニア期に増える傾向がありますが、初期には目立った症状が出ないことも少なくありません。体重減少、食欲の変化、触ると分かるしこりなど、はっきりしない変化として現れるケースも多く、日常の観察が重要になります。

・糖尿病
└ 初期には目立った症状が出にくく、水をよく飲む、尿の量が増える、少し体重が減るといった変化も、加齢や季節の影響と受け取られやすい傾向があります。
また、食欲がある、むしろよく食べるといった状態が続くこともあり、体調不良として認識されにくいまま進行してしまうケースも見られます。

シニア期の病気は、どれもゆっくり進行し、年齢変化と重なりやすいという共通点があります。年のせいと感じやすい変化の中に、体からのサインが隠れていることもあります。

Q6:シニア猫の変化は、「年齢のせい」とどう見分ければいいですか?

A:「年齢だから」で説明できる変化ほど、注意が必要です。

食べているのに体重が減る
・水を飲む量や尿量が増える
・動きがゆっくりになる
・高いところに上らなくなる

これらは加齢による変化として見られることもありますが、病気の初期症状と重なることが多く、判断が難しいポイントです。

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ゴロー

ゴロー

ボクちん、落ち着いただけなのであります。・・・たぶん。

ランラン先生

ランラン先生

「たぶん」が増えてきたら、一度立ち止まって考えてもいいかもしれませんね。

Q7:ライフステージで病気を考える意味は何ですか?

A:病気を決めつけるためではなく、気づく準備をするためです。

獣医師さんは「ライフステージは診断ではなく、注意点を整理するための目安。」と話します。今の年齢で起こりやすい変化を知っておくことで、いつもと違う、に気づく感度が高まるのです。

まとめ

猫がかかりやすい病気には、ライフステージごとに傾向が見られることも。それは、日々の小さな変化を見逃さないためのヒント。
「もう年だから、そういうものなのかな?」と考えがちなシーンでも、年齢に引っ張られすぎず、今の状態を知ろうとすることが、猫の健康を支える第一歩。
このQ&Aが、猫の体と向き合うきっかけになれば幸いです。