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2020.12.03

猫の筋力維持に役立つ成分。「BCAAアミノ酸」について調べてみました。[#調査隊レポート]

猫の筋力維持に役立つ成分。「BCAAアミノ酸」について調べてみました。[#調査隊レポート]

体内で合成することが出来ず、食事から摂取することが必要な「必須アミノ酸」というものがあります。基本的には、これらの必須アミノ酸は総合栄養食の基準を満たしているキャットフードを食べさせていれば不足することはありませんが、それぞれに大切な役割を持っています。

今回は、必須アミノ酸の中でもとくに「猫の筋力維持」に関連する成分、BCAAアミノ酸について調査してみました。

BCAAアミノ酸って、一体なに?

■まずは復習。アミノ酸とは?

筋肉や皮膚、被毛などのさまざまな細胞を構成しているタンパク質。そのタンパク質を構成しているものがアミノ酸です。
肉や魚などはタンパク質として体内に取り込まれた後に消化というプロセスを経てアミノ酸まで分解され、あるものはエネルギーとして使われたり、再びタンパク質に合成されて体を作ったりとさまざまに使用されていきます。

アミノ酸の中でも、猫が食事から摂取する必要がある必須アミノ酸は全部で10種類。(詳しくはこちらの記事でご紹介しています。「良質なタンパク質って?アミノ酸スコアからタンパク質を考える Dr.マイの猫学」)
猫の必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンがBCAAアミノ酸と呼ばれています。

 

■BCAAアミノ酸について知ろう


BCAAとは、「branched chain amino acid(分岐鎖アミノ酸)」のことで、枝わかれするような分子構造をしていることからこう呼ばれています。

BCAAアミノ酸は筋力の維持に関係することから、アスリートやトレーニングを行う人には以前から注目されている成分でした。
その働きとしては、筋肉を構成する重要なアミノ酸であること、そして筋肉が分解されることを防ぎ、BCAAがエネルギー源として使用されるというものがあります。運動時に筋肉を分解してエネルギーを作ってしまうことを防ぎ、しっかりと筋肉を維持するために役立てられている訳ですね。

しかし、このBCAAアミノ酸の働き=筋力を維持することは猫にどのように役立つのでしょうか?

猫にとって筋力維持が大切な理由

■シニア期の猫の筋力維持に

高齢になった猫は、徐々に全身の筋力が低下していきます。これは加齢に伴う自然なことなのですが、やはりいつまでも若々しく元気で過ごしてもらうためには、筋力を維持することはとても大切です。
そのため、シニア期はそれ以前よりも多くのアミノ酸を摂取することが推奨されています。アミノ酸の中でも、筋肉を作ったり、分解を防ぐ働きに関係しているのがBCAAアミノ酸なので、シニア期の猫の健康維持に役立つアミノ酸として考えられているのです。

猫は本来素晴らしい身体能力を持っていますが、筋力が低下していくことによって運動能力が低下したり、寝たきりになってしまうと排泄に苦労するようになるなどの問題も出てきます。

 

  

■療養中の猫の体力維持に

病気の療養中の猫たちにとっても、BCAAアミノ酸で筋力を維持することはとても大切なことになります。腫瘍や心臓病などの病気が進行すると、徐々に全身がやせ細っていってしまいますが、これは筋肉が分解されてエネルギーとして消費されていってしまうことが関係しています。
BCAAアミノ酸は筋力が分解されるのを防ぐだけではなく、筋力よりも先にエネルギーとして消費されるので、体重減少を防ぐとされています。
病気と闘っていく猫たちの体力をサポートするために、動物病院の治療でもBCAAアミノ酸を豊富に含むサプリメントが処方されることもあるようです。

 

■体重管理をしたい猫に

BCAAアミノ酸は体重管理が必要な猫にもオススメです。ご存じの方も多いかもしれませんが、基礎代謝は筋肉量に比例して大きくなっていきます。
当然、基礎代謝が大きくなれば食事量は変わらなくても体重が減りやすくなっていきますので、筋肉をしっかり作って運動することが体重管理にはとても大切。
逆に筋肉が落ちてしまうと基礎代謝が落ちて、太りやすくなるといわれています。

そのため、体重管理が必要な猫は筋肉量をしっかり維持することも意識したいところ。もちろん、BCAAアミノ酸を摂取したら自然に筋肉が増えるということはありませんので、BCAAアミノ酸を意識した食事をとりつつ、適度な遊びや運動を続けることが理想的です。

猫の筋力維持のための食事とは?

では、BCAAアミノ酸を意識した食事を猫に与えたいと考えたとき、どんな食事を与えるのが良いのでしょうか?

その答えは、さまざまなものをバランスよく食べさせる、ということ。

ご存知の方も多いかもしれませんが、猫の必須アミノ酸には「アミノ酸の桶理論」というものがあります。これは、必須アミノ酸のうち、アミノ酸がどれだけ豊富にあっても、必須アミノ酸のうちどれか1種類でも少なければ、そのほかのアミノ酸も極端に少ない1種類に批准した量しか利用できないというものです。

この必須アミノ酸のバランスを整える方法のひとつが、さまざまな栄養を持っている食品を組み合わせるというもの。必須アミノ酸の凹凸を食品同士で補うことで全体の必須アミノ酸を底上げすることが出来るのです。
シニア猫やダイエット中の猫たちの食事は、どうしても「これは食べさせちゃダメ」ということに意識が向いてしまいがちです。
ですが、そんな時には「さまざまなものを少しずつ」でアミノ酸のバランスを取る方法もあることを覚えておくと、なんだか気持ちに少しゆとりができそうな気もしますね。

おわりに

今回は、必須アミノ酸のうち、BCAAアミノ酸と呼ばれるものの働きと摂取させるときの考え方についてご紹介しました。
室内でのんびりと暮らしている猫たちですが、筋力の維持はシニアになっても元気で過ごしてもらうためには注目したいポイントです。シニア期の健康のために、さまざまな食品からバランスよくアミノ酸などの栄養をとれる食事を意識してみるのもいいかもしれませんね。