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2026.04.30

猫と人間の違い【表情編】猫の表情はなぜ分かりにくい?[#猫研究所]

猫と人間の違い【表情編】猫の表情はなぜ分かりにくい?[#猫研究所]

■猫と人間の違いシリーズ:vol.15(表情編)

猫の顔を見て、「今、どんな気持ちなのだろう」と考えたことはありませんか。無表情に見えたり、不機嫌そうに見えたり、時には笑っているように感じることもあります。人は無意識のうちに、顔の表情から相手の感情を読み取ろうとします。それは、人間同士の関係ではごく自然な行動。
しかし、猫にその読み方をそのまま当てはめると、ズレが生じやすくなります。猫にも感情はありますが、人間とは表情の使い方が大きく異なるのです。なぜなら、そもそも、猫は顔で感情を細かく伝える生き物ではないから。そのため表情だけを手がかりにすると、猫の気持ちは分かりにくく感じてしまうのです。
この「表情編」では、猫と人間の表情の違いに注目し、なぜ猫の顔が読み取りにくいのか、その理由を整理していきます。顔に答えを探す視点から少し離れることで、猫の気持ちが見えてくるはずです。

■寿命や記憶など、人間との違いが判ると猫のことがもっと好きになる、仲良くなれる。人間と猫の違いシリーズはこちら

人は相手の顔を見て、感情を読み取ります。笑っていれば安心し、強張っていれば警戒していると感じます。人間は社会的な生活を営む中で、感情を顔に表して共有する能力を発達させてきました。表情は言葉よりも早く、相手の状態を伝える重要な手段であり、意識せずとも使われています。
人間の顔には、細かく分化した表情筋が存在します。眉、まぶた、口元などを動かす筋肉が複雑に連動し、驚きや不安、喜びといった感情を微妙な差として表現できます。この仕組みによって、人は相手の感情を瞬時に察することができました。表情そのものがコミュニケーションの中心にある、という設計です。

CAT's TALK

ゴロー

ゴロー

人間さんは、気持ちがすぐ顔に出るでありますよね。

ランラン先生

ランラン先生

表情筋が発達していますからね。感情共有が前提の生き物です。

ゴロー

ゴロー

ボクちんには、ちょっと分かりやすすぎるであります。

ムー

ムー

本当かな?お兄ちゃんいつも空気読めないじゃん?

一方、猫の顔を前にすると、何を考えているのか分からない、と感じることがあります。ただしそれは、猫に感情が乏しいからではありません。人間と猫では、感情を外に出すための仕組みが大きく異なっているのです。猫にも感情はありますが、人間のように顔でそれを説明する必要がありませんでした。

CAT's TALK

ナナ

ナナ

分からないって言われること、よくあるよね。

ムー

ムー

顔で語る設計じゃないだけよ。だからクールって言われるけどね。。

猫にも顔の筋肉はありますが、人間のように表情を作り出すための筋肉は発達していません。猫の表情筋は種類や可動域が限られており、感情の変化を顔だけで細かく表す構造にはなっていないのです。無表情に見えるのは、意図的に感情を隠しているからではありません。そういう進化をしていない、というだけのことです。ここは重要な違いです。
猫は単独行動を基本とする動物であり、仲間と顔を見合わせて感情を共有する必要がほとんどありませんでした。そのため、表情よりも即座に伝わる行動によるサインが発達しました。静かに距離を取る、体を硬くする、耳を向けるなど、行動そのものが感情表現として機能しています。

CAT's TALK

王子

王子

顔に出ない=気持ちがない、ではないのだ。

ランラン先生

ランラン先生

構造の問題です。猫の表情筋は、人ほど精密ではありません。

王子

王子

つまり、顔だけ見ても判断できない、なのだ。

比較すると、この違いは犬でよりはっきりします。犬には人間の眉に相当する部分を動かす筋肉が発達しており、困ったような表情や、相手の注意を引く顔つきを作ることができます。研究では、この筋肉が人とのコミュニケーションに役立っている可能性が指摘されています。人と共に暮らす歴史の中で、人間が反応しやすい表情を持つ個体が残ってきたと考えられています。
猫は犬ほど人に依存せず、狩りや生活を自力で完結させてきました。そのため、顔の表情を豊かにするよりも、全身の反応によって状況を伝える方向へ進化しました。犬と猫は、同じ哺乳類でも、人との距離感が異なることで表現方法が分かれたのです。

CAT's TALK

ムー

ムー

犬って眉を動かすのよね。人に伝える必要があったから。

ゴロー

ゴロー

なるほど、人と協力して生きた結果でありますな。

ムー

ムー

猫はそこにリソースを割かなかった。それだけの違いよね。

猫の感情は、主に次のような要素に表れます。
・耳の向きや角度
・しっぽの位置や動き
・体の緊張や姿勢
・人との距離の取り方
これらは一時的な仕草ではなく、全体として見ることで意味を持ちます。表情だけを見て判断すると分かりにくくても、行動を含めて観察すると一貫した状態が見えてきます。

CAT's TALK

クリ

クリ

耳、しっぽ、距離感。ここ見てほしいよね。

ナナ

ナナ

顔だけ見て、だいたい誤解されるもん。

クリ

クリ

でも全身見ると、けっこう正直だよね。

人が猫の表情を読み取りにくいと感じる理由の一つは、人間側が顔中心で相手を理解しようとする習慣にあります。真顔を不機嫌と感じたり、半目をやる気がないと解釈したりするのは、人間の基準を当てはめている結果です。猫にとっては、どちらも特別な感情表現ではない場合が多いのです。

CAT's TALK

王子

王子

真顔=不機嫌、は短絡的なのだ。

ランラン先生

ランラン先生

人間側の読解ルールを当てはめているだけですね。

王子

王子

ボクは、だいたいいつも真顔なのだ。

猫と人間では、感情を表に出す場所が異なります。
人は表情に多くを託しますが、猫の場合、顔はその中心ではありません。その違いを知らずに表情だけを見ていると、猫の気持ちが分かりにくく感じられでしょう。
猫の顔が静かに見えるのは、表情筋の構造によるものでもあります。その一方で、耳やしっぽ、体の使い方や距離の取り方には、さまざまな情報が表れています。顔に変化が少なくても、安心しているのか、落ち着かないのかを示す手がかりは、別のところにあります。
表情に答えを求めすぎず、全体の様子を見ていくことで、猫の気持ちは少しずつ読み取りやすくなります。
猫は感情を隠しているのではなく、伝え方が人とは違うだけ。その違いを知れば知るほど、猫との豊かなコミュニケーションにつながるでしょう。(なんてかわいいんでしょうね。)