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2025.12.18
猫と人間の違い【感情編】喜怒哀楽のかたち〜猫と人間の「気持ち」のしくみを探る〜[#猫研究所]
「猫にはどんな感情があるのかな?」もっと猫の気持ちを知りたい。
猫は言葉で気持ちを伝えることはできませんが、表情・しぐさ・鳴き声・行動などを通じて、感情をしっかり表現しています。
この記事では、「猫の感情の仕組み」や「人間との違い」を脳科学と行動学の視点から解説し、猫研究所のスタッフ猫たちと一緒に「喜怒哀楽」を探っていきます。
■寿命や記憶など、人間との違いが判ると猫のことがもっと好きになる、仲良くなれる。人間と猫の違いシリーズはこちら
人間の感情は記憶と未来予測に結びつく
人間の感情は、大脳辺縁系や前頭前野が関与する高度な情報処理の結果として生まれます。
喜び・怒り・悲しみ・楽しさは、過去の記憶や未来への予測、社会的な価値観と結びついているため非常に複雑です。
例:
・「明日の予定が楽しみ」
・「去年の失敗を思い出すと悲しい」
・「あの人の言葉に腹が立つ」
人間は時間軸を超えた感情を持てる動物の中でも数少ない存在です。
猫の感情は《今》に生きる
猫にも感情はありますが、人間のように複雑ではなく、本能や生理的な状態に基づいたシンプルな感情が中心です。
猫の感情は、今この瞬間の環境や刺激に対する反応として現れます。
■猫の「喜び(うれしい)」
猫が「うれしい」と感じるのは、安心・快適・満足感が満たされているときです。たとえば、信頼する人と過ごしているときや、心地よい環境にいるときに、その感情が表れます。
■具体的な行動と理由:
・ゴロゴロ鳴く:これは猫特有の「幸福サイン」。ゴロゴロ音はリラックス時に出ることが多く、私たちとの絆を深めるコミュニケーションでもあります。
・しっぽを立てて近づく:しっぽを立てるのは「親愛のしるし」。猫同士でも仲良しの証として使われる行動です。
・すり寄る:これは「自分の匂いをつけて安心したい」というマーキング行動でもあり、同時に愛情表現です。
・目を細めて見つめる:「ゆっくりまばたき」は猫界の「愛してる」のサイン。敵意がないことを示す仕草です。


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ゴロー
ボクちん、スリスリしているとすぐゴロゴロであります!それが《うれしい》ってことなんであります!

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ナナ
お膝の上で抱っこ、それがあたちの幸せ~
■猫の「怒り(イライラ・不快)」
猫が怒るのは、不快・警戒・ストレスを感じたときです。これは防御本能に基づく自然な反応で、危険を回避するためのサインでもあります。
■具体的な行動と理由:
・耳を伏せる:耳を後ろに倒すのは「攻撃態勢」や「防御態勢」のサイン。強いストレスや恐怖を感じている証拠です。
・唸る、シャーと鳴く:これは「近づくな!」という警告。猫同士のケンカでもよく見られます。
・爪を出す:攻撃準備の行動。相手を威嚇し、距離を取らせるためです。
・しっぽをバタバタ振る:しっぽの動きは感情のバロメーター。激しく振るのは「イライラしている」証拠です。


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ムー
気分じゃないときにしつこくナデナデされると、イラっとするかも

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王子
ボクは注目を浴びてないとおもしろくないのだ!でもすぐ寝て忘れるのだ!
■猫の「哀しみ(寂しさ・不安)」
猫は、人間のように「過去を悔やむ」「未来を憂う」といった時間を超えた悲しみは持ちません。しかし、今この瞬間の喪失感や孤独、不安に対しては強く反応します。これは、社会性や安全欲求に関わる本能的な感情です。
■具体的な行動と理由:
・鳴き声が変わる:普段より高い声や長い鳴き声は「不安」のサイン。私たち家族を探しているときや、仲間がいなくなったときに見られます。
・隠れる:ストレスや恐怖を感じると、安全な場所に身を隠します。これは「危険回避」の本能です。
・食欲が落ちる:強い不安や孤独は、食欲にも影響します。長引く場合は健康チェックが必要です。
・毛づくろいの回数が減る:気分が沈むと、セルフケアの意欲が低下します。逆に過剰な毛づくろいもストレスのサインです。


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ランラン先生
猫は《今ここ》の感情に反応するのです。仲間がいなくなると、寂しさを感じることもあります。

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ムー
気分が沈むと、毛づくろいの気力もなくなるわ。美意識にも影響するのよね・・・。
■猫の「楽しさ(興味・遊び)」
猫の「楽しさ」は、好奇心や狩猟本能が刺激されることで生まれます。これは、猫にとって心身の健康を保つために欠かせない感情です。
■具体的な行動と理由:
・おもちゃに飛びつく:動くものを追うのは狩猟本能の表れ。遊びは「狩りの練習」でもあります。
・走り回る:エネルギーを発散し、ストレスを解消するための行動です。
・鳴きながら遊びに誘う:「遊ぼう!」というコミュニケーション。私たちとの絆を深める時間です。
・人間の動きに反応する:動くものへの興味は、猫の本能的な習性。私たちの手や足もターゲットになることがあります。


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ゴロー
ボクちん、ひもが動くだけでテンションMAXであります!それが《楽しい》ってことであります!

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王子
遊びは心の栄養。退屈は最大の敵なのだ。
猫と人間の感情と記憶の関係
人間は、感情を記憶し、それをもとに行動を変えることができます。たとえば、「あの人に会うと楽しい」「あの場所は怖かった」など、感情と記憶が結びついています。
このような記憶は「エピソード記憶」と呼ばれ、時間・場所・感情がセットで保存されるのが特徴です。
猫にも、嫌な経験を避ける・楽しいことを繰り返すといった学習行動は見られます。ただし、猫の記憶は「時間」や「文脈」よりも、「感覚」や「結果」に基づいているため、感情の記憶はよりシンプルです。


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ムー
私は、おいしいご飯をもらった場所はちゃんと覚えてるわ。でも「昨日の午後」とかは覚えてないのよね。

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クリ
ボクは、あの病院の匂いだけで逃げたくなるよ。あれはもう《嫌な記憶》だね。
猫と人間の感情と表現力の違い
|
感情 |
人間 |
猫 |
|
喜び |
笑顔・言葉・ハグ |
ゴロゴロ・しっぽを立てる・すり寄る |
|
怒り |
怒鳴る・顔をしかめる |
耳を伏せる・唸る・爪を出す |
|
不安 |
ため息・落ち着かない動き |
隠れる・瞳孔が開く・鳴き声が変わる |
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愛情 |
言葉・プレゼント・スキンシップ |
そばにいる・毛づくろい・目を細める |


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王子
ボクは愛情表現が得意なのだ!でもツンデレなのだ!

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ナナ
猫の「好き」は、そっと寄り添うことだから。言葉はいらないのよ。
猫の感情は《瞬間》に宿る
猫は、今この瞬間の環境や刺激に対して、感情を反応させる生き物です。
過去や未来に思いを巡らせることは少ないですが、その分、感情の表現は純粋でストレートです。
・嫌なことはすぐ避ける
・好きな人にはすり寄る
・安心できる場所で眠る
これらはすべて、猫なりの感情表現なのです。


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ゴロー
ボクちん、今が楽しいならそれでいいであります!未来のことは・・・。お昼寝してから考えるであります!

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ランラン先生
それが猫らしさ。感情はあるけど、人間とは違う形で生きているんです。
まとめ:猫と人間、感情のかたちは違っても
猫も人間も、感情を持つ生き物です。ただし、その感じ方・記憶の仕方・表現の仕方には大きな違いがあります。
人間は、言葉と記憶を使って感情を複雑に育て、社会の中で共有します。猫は、今この瞬間の感覚に忠実に、シンプルな感情を体で表現します。
どちらも、その種らしさに根ざした「気持ちのかたち」。違いを知ることで、猫との暮らしがもっと深く、もっと優しくなるかもしれません。

