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2022.04.14

マグネシウム、ナトリウム、カリウムってどんな栄養?気になるミネラルについて調べてみました[#調査隊レポート]

マグネシウム、ナトリウム、カリウムってどんな栄養?気になるミネラルについて調べてみました[#調査隊レポート]

猫の健康に関する情報の中には、マグネシウムやカリウム、ナトリウムといったミネラルの制限について触れているものもあります。
これらの成分がなんとなく制限が必要だということは知っていても、実際のところどんな食材に含まれていて、どんな時に必要なのか、そして猫の健康にどのように影響するのか分かりにくかったりしませんか?

そこで今回は、猫の健康と深くかかわる「ミネラル」の中から、比較的よく見かける「マグネシウム」「ナトリウム」「カリウム」の3つの栄養について調べてみました。猫にとってどんな栄養なのか、どんな時に制限が必要なのかなど、ぜひ参考にしてみてくださいね。

猫にとってのマグネシウムとは

マグネシウムは、動物の骨や筋肉に多く含まれるミネラルです。骨を丸ごと食べることができる小魚や、骨も粉末やミンチにしたタイプのフードやオヤツなどでは十分に摂取することができます。

マグネシウムは、食べ物からエネルギーを作り出す「代謝」を行う際にサポートをする"補酵素"として重要な役割を担っています。どれだけタンパク質や脂質、炭水化物などのエネルギー源となる栄養を取り入れても、マグネシウムなどのミネラル類が十分でないと、エネルギーを適切に作ることができません。

それから、もうひとつのマグネシウムの重要な役割として、筋肉の収縮や神経伝達にかかわるというものがあります。心臓は縮んでから広がり、それを繰り返して全身に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、マグネシウムが不足している状態ではこの心臓の動きにも影響が出ることも。
ある種の処方薬を内服しているなど特別な場合を除き、基本的に総合栄養食タイプの食事を与えていれば、マグネシウムが不足することはありません。

マグネシウムは猫の体内で健康的な骨格や歯を作る際にも必要不可欠の栄養素です。成長期の子猫などでは適量をしっかりと摂取していきたいですね。


基本的な働き:エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経伝達、健康的な骨格・歯を作る

AAFCOの基準:0.08g以上(成長期)、0.04g以上(維持期)

 

■ストルバイト結晶とマグネシウム

猫の体内で重要な役割を持っているマグネシウムですが、実はストルバイト結晶を構成する成分のひとつでもあります。
ストルバイト結晶の正体は、"リン酸アンモニウムマグネシウム"という成分の結晶で、リン酸、アンモニウム、マグネシウムという成分がそれぞれ膀胱の中の尿で濃度が高くなると発生しやすくなります。
そのため、尿に含まれるマグネシウムが過剰にならないように食事に含まれるマグネシウム量をコントロールすることで、ストルバイト結晶が起こりにくくするという療法食もあります。
ただし、猫のストルバイト結晶はマグネシウムだけが原因となっているとも限りません。再発予防の観点ではストレスや運動不足といった他の原因にも配慮しつつ、結晶がみられる時はマグネシウムを豊富に含む煮干しなどのオヤツを控えてみることをオススメしています。

猫の健康とナトリウム・カリウム


ナトリウム、カリウムはいずれも体内の水分量をコントロールするときに関係するミネラル類です。ナトリウムは生肉や生魚に多く含まれ、野菜やフルーツにはカリウムが多く含まれる傾向が見られます。
また、いずれもエネルギー代謝や神経伝達にも関係していて、ナトリウムとカリウムは相関関係にあり、バランスよく取り入れることが健康維持を意識する上では重要になります。

 

■ナトリウムとは?

ナトリウムは主に塩分として摂取されることが多い栄養素です。猫にとって塩分は不要なものであり、制限するべきという意見が多く見られますが、健康を維持するために重要な栄養素のひとつです。

ナトリウムは血液などの体液に多く含まれていて、体内の水分量を一定に保つことが重要な役割です。栄養の吸収・輸送などにも深くかかわっていることが分かっています。それから、胆汁や膵液などの消化液を作る際にも使用されています。

人間ではナトリウムを過剰に摂取すると体内に保持する水分量が増え、高血圧になりやすい傾向にあるといわれていますが、猫ではナトリウム量と血圧の関係は基本的にはないといわれています。

キャットフードでは、主に飲水量を増やしたい時に与える療法食などで、ナトリウムを多く含むものが作られています。ストルバイト結晶や膀胱炎などの治療の一環として与える療法食ではナトリウムの値が高くなっていて、心配される方も多いです。
ですが、2022年現在でもナトリウムを多く含む食事であっても猫の健康への明確な影響は立証されておらず、AAFCOの栄養基準でも食事中に含まれるナトリウムには上限値が設定されていません。
これは、猫は人間よりもナトリウムを尿として上手く排出することができると考えられているためです。猫がもともと生肉などナトリウムをそれなりに含む食事を食べてきたため、上手く排出する能力を持つようになったからなのかもしれません。

基本的な働き:体内の水分量・飲水量のコントロール、エネルギー代謝、筋肉の収縮、神経伝達
AAFCOの基準:0.02g以上(成長期、維持期共通)

■カリウムとは?


カリウムは野菜やフルーツに多く含まれているミネラル類で、ナトリウムと同様に体内の水分量をコントロールする際に重要な役割を担う成分です。

ナトリウムが体内に水分を保持しようとする働きがある一方、カリウムは尿として水分やナトリウムを排出させる働きを持っています。
どちらかだけが過剰になってしまうと体内のバランスが崩れ、水をがぶ飲みするようになってしまったり、下痢が止まらなくなってしまうなどのトラブルが起こることもあるようです。

カリウムに関してもAAFCOでは上限値は設定されていません。これは猫の体にはカリウムを多く摂取したとしてもナトリウムとの相互のバランスを保つ機能があって、不要なカリウムは吸収されず、吸収されたとしても排出されることが分かっているためです。

基本的な働き:体内の水分量コントロール(ナトリウムと相関関係)、神経系の健康維持、筋肉の収縮、体内のpHバランスの維持
AAFCOの栄養基準:0.7g以上(成長期、維持期共通)

マグネシウム、ナトリウム、カリウム。それぞれどんな猫は注意が必要?

これまでご紹介してきたミネラル類は、それぞれ体内で重要な役割を持っていました。基本的には猫の健康維持に必要な成分ではあるのですが、体調管理のために制限が必要なケースもあるそうです。

 

■こんな場合はマグネシウムの摂取量に気を付けよう

マグネシウムに注意が必要なのはストルバイト結晶ができやすい体質の猫の場合。マグネシウムはストルバイト結晶を作る成分の一つですので、ストルバイト結晶ができてしまった時には食事やオヤツの内容を見直すことをオススメしています。
一度ストルバイト結晶ができてしまった猫は、その後も繰り返しやすい傾向にありますので、動物病院での治療が落ち着いたあとも再発を防ぐ目的でマグネシウムの量を意識して、食事やオヤツ選びを行うと良いかもしれません。

 

■こんな猫はナトリウム・カリウムの量に気を付けよう

ナトリウムとカリウムは心臓病の猫ではコントロールが必要になります。心臓にトラブルがある場合、体液の量が増えることで心臓に負担が増えてしまう可能性があるためです。
また、腎臓病が進行している猫でもナトリウム・カリウムに注意が必要なケースがあります。健康的な腎臓は、余分なナトリウムやカリウムを排出しているのですが、腎臓病になった猫では上手くこれらのミネラルを排出することができず、ナトリウムやカリウムがより体内に多く留まってしまうことがあります。
このことで体内の水分量やミネラルのバランスが崩れ、食欲不振や不整脈、心臓への負担が大きくなるなどのトラブルが起こりやすくなります。
このことから、腎臓病が進行している猫ではナトリウムとカリウムはある程度制限する必要が出てきます。
全ての猫はシニア期になると腎臓の機能が低下する傾向があります。そのため、シニア期の猫はまだ腎臓病と診断はされていなくても、ナトリウムやカリウムの量を意識して、オヤツや食事の内容を見直してみるのも良いかもしれません。

おわりに

今回は猫の健康維持にかかわるミネラル類の中から、「マグネシウム」「ナトリウム」「カリウム」についてご紹介しました。
調査を行ったスタッフ自身も「なんとなく制限が必要なもの」、と思っていました。でも、実際は常に制限が必要な成分ではなく、具体的にどんな時に意識するべきなのか、どんな食材に多く含まれているのかを踏まえて適切に食事選びをしていくことが重要です。
「あれもダメ」「これも良くない」と何かと食事の選択肢を狭めることはせず、猫の健康状態や体質などを踏まえながらその時、その時に適切なものを適切量取り入れることができれば理想的ですね。