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2021.01.07

猫にとって塩分が危険って本当?塩分とナトリウムについて調べてみました[#調査隊レポート]

猫にとって塩分が危険って本当?塩分とナトリウムについて調べてみました[#調査隊レポート]

猫の健康管理において、たびたび言われる言葉の中に「猫に人間用の食事を与えると塩分が高すぎて良くない」というものがあります。多くの方は塩分に注意して猫に与えるオヤツやキャットフードを選んでいると思いますが、実際のところ猫にとって塩分は危険なものなのでしょうか?

今回は猫と「塩分」、そして塩分の主な成分である「ナトリウム」について改めて調査を行います。

猫にとって塩分(ナトリウム)は必要なの?

まず、猫にとって塩分はどのような栄養なのかをご紹介します。
私たちが一般的に言う「塩」「塩分」は、塩素とナトリウムが結びついた"塩化ナトリウム"という化合物であり、塩味を感じるのはこの塩化ナトリウムによるものです。

猫にとっては、塩分(塩化ナトリウム)を構成するナトリウムは、健康維持のために非常に重要な役割を持つ栄養素のひとつです。
そのため、保証分析値などでは「塩」という項目ではなく、「ナトリウム」としての数値が紹介されています。
塩に含まれるナトリウムは、体内で血液の量や細胞と細胞の間を満たす細胞間液と呼ばれる水分の量をコントロールするほか、体内の酸とアルカリのバランスを調整する働きがあります。また、神経伝達にも関与しています。
肉食動物である猫の主食である肉などには、野菜などと比較すると多くナトリウムを含む塩分が含まれているため、あまり不足することはないといわれています。

AAFCOの基準量は?

次に、猫の総合栄養食の栄養基準であるAAFCOの基準を調べてみましょう。

現在、総合栄養食の基準として多くのキャットフードに適用されているAAFCOでは、ナトリウムの基準値が定められています。

◆AAFCOによるナトリウムの基準値
子猫用:0.2g以上/100g中
成猫用:0.2g以上/100g中

AAFCOの基準値は、乾物100g中で算出されていて、キャットフードから水分量を除いた後に100gあたりどれくらいの量が含まれているべきかという表記です。

基本的に、総合栄養食の栄養基準は猫にとって必要最低限の基準となります。この基準をクリアしているフードを給与量の目安量与えていれば、十分なナトリウム量を摂取できることになります。

猫にとってナトリウムの最低限の量はご紹介しましたが、多くの方が心配されている「どれくらいから過剰なの?」という疑問に対する答えとなる、猫のナトリウムの摂取量の上限は定められていないのでしょうか?

AAFCOでは猫のナトリウム摂取量の上限の目安は設定されていません。
これは、猫は人間よりもナトリウムを尿として上手く排出することができると考えられているためです。また、人間では塩分やナトリウムの過剰摂取によって高血圧のリスクが高くなると言われていますが、猫は血圧の変化にナトリウムが影響するという報告はありません。

これも、猫がもともと生肉などナトリウムをそれなりに含む食事を食べてきたため、上手く排出する能力を持つようになったからなのかもしれません。

■ 塩分が多めに含まれるキャットフードについて

キャットフードの中には、塩分を意識して一般的な総合栄養食よりも多めに使用しているものもあります。
代表的なものでは、膀胱炎やストルバイト結晶などの下部尿路疾患のために作られている療法食です。
塩分を多めに入れることで、猫も喉が渇きやすくなります。そのため自然に飲水量が増え、オシッコの量を増やすことが出来る…というものです。
これらの下部尿路疾患は、オシッコをしっかりと排出させることがなによりも効果的な予防になります。

下部尿路疾患以外にも、体内の水分量のコントロールが必要な病気の療法食などでは、意図して塩分を多めに含んでいることがあるようです。

こんな猫は塩分に注意が必要

しかし、基本的には人間よりもナトリウムの排出が上手い猫であっても、摂取する量に注意が必要なこともあります。

代表的なのは、腎臓の機能が低下している猫やシニア猫です。
これはナトリウムの排出に腎臓が関係しているためです。腎臓は、余計なナトリウムを腎臓でろ過して排出します。しかし腎臓の機能が低下していると、ナトリウムを上手くろ過することが出来なくなってしまうのです。
そのため、腎臓病のステージによっては、タンパク質の制限と合わせてナトリウムの制限が必要になる場合もあります。


また、心臓に不安がある猫も同様です。
塩分に含まれるナトリウムを摂取すると体内に水分を溜める性質があるといわれていて、循環血液量が増えます。過剰にナトリウムを摂取すると多くの血液を循環させるために心臓には負担がかかります。
心臓が弱っている場合は、心臓に必要以上の負担を与えないようにこちらも塩分(ナトリウム)の量に注意するように指導されることが多いようです。

いずれも、注意したいのは塩分自体が腎臓や心臓の病気の原因になるというわけではないことです。すでに腎臓や心臓にトラブルがある状態の猫の負担を減らすために、ナトリウムの制限が必要ということです。
健康的な猫にとってはある程度の塩分は必要ですので、これらの病気が分かっていたり、動物病院で注意するように指示を受けているわけではないのであれば、必要以上に塩分を避けたりする必要はないということですね。

おわりに

本日は猫の健康維持と塩分・ナトリウムの関係について調査した結果についてご紹介しました。
猫の健康維持のため、塩分量を気にされる方も多いですが、塩分やナトリウムが直接の原因となって猫の病気の原因となるという明確な報告はないようです。
ただ、シニア期の猫は腎臓の機能が低下する傾向にありますので、シニア期の猫はナトリウム量少なめを意識するのがいいかもしれません。