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2019.11.15
古代エジプトの猫の神様とクレオパトラが愛した猫たちの魅力とは?
私たちを魅了し続ける猫ですが、では猫はいつから人間と暮らすようになったのでしょうか。
その起源は、約9500年ほど前までさかのぼるとされています。現在のところ、中東のキプロス島で見つかった遺跡で発見されたリビアヤマネコの骨が人間と猫の関りを示す最古の例とされています。その後、ネズミによる害を防ぐために人間が猫を重宝し、一緒に暮らすようになり、エジプトなどで、より人間との関係性が深まったと考えられています。
そんなエジプトでは、猫たちがとても大切にされていたことはよく知られています。
ということで、今回のお話は、古代エジプト人がどれほど「猫好き」だったかというお話です。私たち人間が、昔からどれだけ猫のことを好きだったのかをご覧ください。
古代エジプトの美しい猫の神様 バステト神
こちらのお姿はバステト神の像のミニチュアです。大英博物館に会いに行きたいです。
古代エジプトにはなんと、猫の神様が存在していました。その名はバステト。現代まで残っている姿は、壁画では猫の顔をした女神さまと、そのまんま、the 猫という像の二つが知られています。
特に大英博物館に収蔵されているバステト像は、大きな耳とすっと長い手足、しなやかな体格、意志が強そうな目付きをしています。首元や額、そして耳元に金でゴージャスな装飾を施されている辺り、なんだかおめかしをして、自慢げにおすまししているように見えなくもありません。
さらに、古代エジプト人のこだわりを感じさせるのは、そのバステト神の瞳。今では失われてしまっていますが、このバステト神の像の瞳には、当時は貴重なガラスがはめ込まれていて、猫の美しい瞳をばっちり再現していたのだとか。古代エジプト人もキラキラと輝きを変える猫の瞳の美しさに神秘的なものを感じていたのでしょうね。
美しく、猫好きの「ツボ」をしっかりと押さえた姿で現在でも大人気のバステト神。大英博物館ではお土産品としてぬいぐるみなどにもなっているのだとか。古代エジプトで生まれたバステト神は、今でも世界中の猫好きたちの心を掴んでいます。ぜひ、一度「大英博物館 バステト」で検索してみてくださいね。
バステト神ってどんな神様なの?
古代エジプトでもその美しさを余すことなく発揮していた猫の神・バステト神は、どんな神様だったのでしょうか?
バステト神は、「太陽神・ラーの目」として人々の行いをじっと見守り、時には罰する者とされていたようです。
大英博物館のバステト神も、瞳をガラスで再現されているように、猫は特にその目に不思議な力を持っていると考えられていたのかもしれません。吸い込まれてしまいそうな猫の瞳の美しさに、神々しさを感じることがあるのは現代人の私たちも、古代エジプト人も同じなんですね。古代エジプト人たちは、猫の前では悪さは絶対にできなかったのかもしれません。
その後、バステト神は「家を守る神」としての顔も持つようになります。子孫繁栄と人々を病気などから守る力を持っていると考えられていたようです。
これは、猫たちは一度にたくさんの子どもを産むこと、そして時には病原菌などを持ち込むネズミなどの害獣や、伝染病を媒介する害虫を猫たちが勇敢に倒してくれる姿に、人々は大いに助けられてきたことに由来しているのでしょう。
猫たちに命を救われた古代エジプト人たちは、さらに猫たちとバステト神の力を信じ、大切にしていくようになります。
猫の都・ブバスティス
遂には、聖地として古代エジプト人はブバスティスという都市を作りました。このブバスティスという街の名前は、バステトの家という意味で、この都市では特に猫たちを手厚く扱い、とても大切にしたといわれています。
有名なエピソードでは、高貴な人々だけに使用された埋葬方法のミイラが、たくさんの猫たちに使用され、埋葬されていたのがこのブバスティス。
古代エジプトのミイラは、高貴な人々が再び生き返ることを願って施された埋葬方法です。ブバスティスの人々は、亡くなった猫たちが再び自分たちの側に帰ってきてくれることを願って、特別手厚く葬ったのかもしれません。その証拠に、猫たちの食事として死後の世界で食べられるようにミルクとネズミと一緒に埋葬されています。
「戻ってくるときに猫たちが空腹だったらかわいそうだ」という気持ちで食事を捧げた古代エジプト人の気持ち、なんだかとっても良く分かります。
古代エジプト人が猫のせいで戦争に負ける?
さて、猫をとことん愛し、猫たちを大切にしてきた古代エジプト人たちですが、有名なエピソードに「猫のせいで戦争に負けた」というお話があります。
これは紀元前6世紀頃、ペルシャに侵攻されたエジプトは、軍を差し向けこれを撃退に向かいました。愛する祖国と家族、それから猫たちを守るために兵士たちは意気揚々と戦地へ赴いたことでしょう。
しかし、ペルシャ軍は「エジプト人は猫がとにかく好きらしい」という情報を入手。あろうことか、ペルシャ兵は盾に猫の絵を描き、更に猫たちを最前線に配置したというのです!
エジプト人たちは戦いに来たはずなのに、目に入るのはたくさんの猫。これにエジプト人たちは「ね、猫を攻撃するなんてできない…」と手も足も出せず、ついには降伏してしまったのだとか…。
このお話の信憑性には疑問が残りますが、古代エジプト人がどれほど猫たちを愛していたかということをイメージさせるには十分なエピソードですよね。
また、別のエピソードではエジプトの領内で猫を傷つけてしまった古代ローマ人が死刑になった、という事例も。こちらに関しては、シケリアのディオドロスという人物が残した文書によれば、猫を傷つけたローマ人をエジプト人は決して許さず、戦争すらも辞さない構えだったといいます。猫への愛が国をも動かす、それが古代エジプトという国だったのです。猫のせいで戦争には負けるけれど、猫のためなら戦争も辞さない。なんとも男気に溢れた猫への愛に共感せずにはいられませんね。
クレオパトラが愛した猫?アビシニアンの魅力と性格
クレオパトラが愛したといわれているアビシニアンには、下記のような歴史や魅力、性格を持ちます。
アビシニアンの歴史
アビシニアンは4000年前の古代エジプトの壁画や彫刻に描かれている、猫の化身に似ているといわれています。アビシニアンの特徴が持つティックドタビーの被毛が壁画の猫と似ており、これが古代エジプトにおける猫の化身と似ているのです。このような歴史的背景を持っていることから、アビシニアンはしばしば「聖なる猫」といわれることがあります。
世界中に広まった要因と考えられているのは、現在のエチオピアから帰還するイギリス軍人がアビシニアンを連れ帰ったことといわれています。1896年にはイギリスにおいて最初の血統登録がされ、アメリカには1900年以降であり、その後世界中に広まりました。
アビシニアンはクレオパトラが愛したといわれているほど高貴な雰囲気をただよわせていますが、性格は一般的に好奇心旺盛で少しヤンチャです。
アビシニアンの魅力
アビシニアンは長めの体と発達したしなやかな筋肉のほか、美しい毛並みを持つ猫の種類です。
身体能力が高く、ジャンプが得意で遊びを好む活発な猫であることから、猫のなかでも高い人気があると考えられます。
外見としては平らな頭頂部から鼻先にかけて三角形になっており、マズルと頬の境にはなだらかなくぼみがあります。耳と目はほかの猫と比較すると大きく、周囲のあらゆる状況に注意を払えるようになっており、用心深さを現しています。
ダブルコートの短毛ではありますが、耳には飾り毛である「タフト」が生えているため、ワイルドな印象を感じることもあります。背骨のラインに沿って毛色が濃くなっており、首や体の下や足の内側はグラデーションに沿って薄い色になっています。
アビシニアンの性格
先述の通り、アビシニアンは高貴な雰囲気をただよわせつつ、性格は一般的に好奇心旺盛で少しヤンチャです。
そのため、自宅のキャットタワーやキャットウォークだけではなく、高低差がある家具などに登る子が多いです。遊べる環境を整えることで自主的に運動するため、体力の維持やストレス発散を行えます。
また、アビシニアンは社交的であり家族と一緒にいることを好むため、積極的にスキンシップを図りましょう。自ら家族にすり寄っていくような子も多く、その人懐っこさに心を奪われてしまう家族も少なくありません。子どもやほかのペットとも仲良くできる子が多いため、一緒に暮らす場合も安心できる猫の種類といえます。
エジプトの壁画に描かれた猫?エジプシャン・マウの魅力と性格
エジプトの壁画にかかれるモデルとなったといわれている猫はアビシニアンだけではなくエジプシャン・マウという種類があります。下記にて、エジプシャン・マウの歴史や魅力、性格について解説します。
エジプシャン・マウの歴史
エジプシャン・マウの「マウ」はエジプトの言葉で猫を現すものであり、古代エジプトがルーツであることが有力説です。ピラミッドの壁画や当時のエジプトの工芸品などに斑点模様の猫が描かれており、これがエジプシャン・マウだといわれています。
世界に知られるようになったのは1950年代であり、ある国の女王がエジプシャン・マウに一目ぼれしたことがルーツになります。
エジプシャン・マウの魅力
エジプシャン・マウは筋肉質ではありますが、わき腹から後ろ足あたりまでルーズスキンが垂れています。一見太っているように見られますが、ルーズスキンは体の構造のため心配はいりません。
自然な丸みがある顔の輪郭のなかには大きなアーモンド状の目や大きな耳が付いており、全体的に斑点模様の毛が生えています。
エジプシャン・マウの性格
エジプシャン・マウは神経質で警戒心が強く、静かな日々を過ごしたい子が多い猫の種類になります。
先述したアビシニアンは好奇心が旺盛で家族と過ごしたい一方、エジプシャン・マウは構いすぎないように注意が必要です。
一方、認めた相手に対しては甘えてきたり、一緒に遊びたかったりするように、活発性を見せてくれるようになります。
その後の古代エジプトの猫の神様
古代エジプト文明は、プトレマイオス朝(クレオパトラの王朝)の滅亡を最後に、歴史の表舞台からは姿を消し、バステト神への熱烈な信仰も消えていきます。しかし、バステト神は古代ギリシャの神話や、北欧神話・クトゥルフ神話の中で姿を変え、生き続けることになりました。特にギリシャ人の解釈では、美しさと愛の女神・アフロディテ(ヴィーナス)などと同一化されていきます。
これも、猫たちの美しさや気高さ、そして家族へ向ける愛情の深さにギリシャ人たちも魅了された結果……なのかもしれません。

