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2019.12.05

カラギーナンについて調べてみました。#調査隊レポート

カラギーナンについて調べてみました。#調査隊レポート

皆さま、猫たちの毎日の食事であるキャットフードを選ぶときにはどんな基準で選んでいますか?猫の好み?原材料の種類?製造国や栄養バランスなど、色々な基準があると思います。

でも、無視できないのは「安全性」という観点ですよね。tamaでお取り扱いしている商品たちは、いずれも独自の視点とバイヤーたちの厳しい目で安全性についてもチェックをした上で、信頼できるものだけを選んでいます。しかし、インターネットが発達している今、「○○ってあまり良くないらしい」とか「あれはやめたほうがいいよ」など、心配になってしまうような情報が飛び交っていて混乱してしまうことも少なくないですよね。

そこで猫の健康を願うスタッフが皆さまに代わって、さまざまなキャットフードの原材料や製造方法について調べてみるシリーズ。
今回扱うのは「カラギーナン」という原材料についてです。それでは、調査隊のレポートを猫と一緒にどうぞご覧ください。

カラギーナンって一体なに?

カラギーナン、という成分は「増粘多糖類」に分類される"添加物"です。添加物と聞くと良くない印象を持つ人も多くいるかもしれませんが、カラギーナンはもともと自然界に存在している物質で、化学的な物質ではありません。

カラギーナンは海藻の一種である紅藻類から抽出されています。同じく海藻であるテングサから作られる寒天によく似た物質で、とろみをつけられるだけでなく、その使いやすさからウェットフードを固めるほか、ペースト状のフードなどに使用されることが多いので、意外と猫たちにとっては身近な存在なのかもしれません。

特に猫たちは食にこだわりが強いといわれているので、猫たちの好む食感を維持したり、作り出す際には重要な原材料となります。ウェットフードではゼリー寄せタイプのものや、ふわっとしたパテ状のものなど、猫からの人気の高いアイテムに使用されていることも。

この添加物という言葉自体に拒否反応を示す方もいるかもしれませんが、食品添加物は食品に添加することを認められた物質です。製造過程で食品に添加、混和などの方法によって使用するものと定義されています。日本では科学的な根拠に即して安全性が保証された成分だけが"食品添加物"として認められています。そしてカラギーナンはこの食品添加物に指定されているため、安全性という面で保証はされているはずなのです。

それなのに、なぜカラギーナンは危険、といわれるようになったのでしょうか?

■ カラギーナンが危険というイメージができた理由。

カラギーナンが危険といわれるようになった背景にはとある実験が関係しています。それは、げっ歯類にカラギーナンを皮下注射した結果、炎症がおきたこと。そして同じくげっ歯類にカラギーナンを大量投与した結果、消化器系にガンが発生した、という実験結果です。

この結果を受けて、カラギーナンは発がん性物質であるという説が大きくなり、やがて危険だといわれるようになったようです。

カラギーナンが有害だとは言えない3つの理由

しかし、この実験結果にはいくつか疑問が残ります。今回はこの実験から必ずしも「カラギーナンは危険」だと断定できない3つの理由をご紹介します。

■第1の理由:カラギーナンの摂取方法は適切か?

まず、げっ歯類に直接皮下注射した結果炎症が起きたということですが、食品として摂取する場合はこの実験の結果は適用されません。いくら猫たちの具合が悪いからといって、直接皮下注射で食事をそのまま取り込ませるようなことは、まずありませんよね。当たり前ですが、食事は口から入り消化管で消化され、タンパク質などであればアミノ酸レベルまで分解されて腸に取り込まれ、体の中で活用されていきます。
それとは全くことなる手法で体内に取り込まれてしまったカラギーナンを、そのまま「危険な物質」と受け取ることは正しい実験だとはいえないのではないでしょうか。

 

■第2の理由:猫たちとげっ歯類の消化のメカニズムは違う

また、発がん性が認められた実験も、げっ歯類での実験結果であること。
カラギーナンがげっ歯類で発がん性が認められたという結果には、げっ歯類だけが保有している腸内細菌の働きの結果である、という検証結果も出ており、こちらが有力視されています。

良く考えてみると、猫たちとげっ歯類たちではそもそも主食となる食べ物が全く違います。猫たちは肉類を中心とした食事、げっ歯類は穀類やナッツ類などを主に食べています。穀類やナッツ類をげっ歯類が消化できるのは、猫とは全く違う消化機能や腸内細菌を持っているから。このげっ歯類だけが保有している腸内細菌が消化の過程で、カラギーナンに含まれている物質の一部を発がん性のある物質に変えている、と考えられています。

 

■第3の理由:げっ歯類の体の大きさに対して投与量が過剰すぎる

この発がん性が認められた実験自体、カラギーナンを体の小さなげっ歯類に大量に摂取させた結果です。
実験で使用された量を猫に置き換えると、とんでもない量を猫が短期間に摂取することになります。いくら大食いの猫がいたとしても、猫が普通に暮らしている範囲では到底摂取できないほど、大量に摂取しているのであまり現実的な実験だとはいえないと指摘されています。

おわりに

カラギーナンは、ウェットフードや猫のおやつなどに使用されている成分で、海藻類から作られる寒天に似た物質です。
一部では実験の結果を受けて「危険なのでは?」と疑われることもあるようですが、その根拠の信憑性についても調べてみると必ずしも当てはまらないと思います。
「危険」という結果だけに限らず実験の結果が出ているからといって、それを鵜呑みにすることはできません。その実験がどのようなものだったのか、結果を信用できる内容だったのかなどをきちんと調べてみる必要性を改めて感じました。
知識を深めていくことでキャットフードの原材料表記や、人間用の食品の原材料の中で見かけても「ほうほう。とろっと食感の理由は海藻由来のあの成分ね」という風に、作り手の意図が分かって原材料を読むことがもっと楽しくなりました。