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2024.02.29

最新研究から見る、分離不安・猫の気持ちを落ち着かせる方法とは

最新研究から見る、分離不安・猫の気持ちを落ち着かせる方法とは

猫は基本的に単独行動する習性を持っている動物です。だから、家族が出かけて留守番をすることになっても、マイペースに一人の時間を楽しむことができるといわれています。
しかし、何事にも例外があるように、猫の中にも一人で過ごすのが苦手な猫もいます。
今回はそんな一人にされることが苦手な猫についての研究と、対策について分かってきたことをご紹介します。

やむを得ない理由で猫を預けることになったり、留守番をさせる度に困った行動に悩んだ時の参考にしていただければと思います。

一人に慣れない猫たち

猫がクールに見えて、実は家族との絆を大切にしてくれていることは、実際に猫と暮らすと日々感じますよね。家族のそばにいたがる猫は少なくありません。そばに寄り添ってくれる猫の存在は家族を癒してくれます。

でも、トイレやお風呂に行くときでもついてきて中に入ろうとしたり、ドアの前で大きな声で鳴き続ける…こんな行動が見られるようなら、今後悪化するとちょっと困った行動につながるかもしれません。

猫は本来、成猫になり自立すると単独で狩りを行い、生活していく習性をもちます。しかし、成猫になっても精神的な自立ができず、家族の姿が見えなくなると強い不安に襲われたり、パニックになってしまう、強いストレスから体調に異常をきたすなどの症状が見られるようになる猫も一定数います。これを『分離不安』と呼びます。

甘えん坊な性格の猫や家族が大好きな猫は、家族にとっても可愛いもの。でも、その行動が行き過ぎてしまい、家族の暮らしや猫の体調に影響を及ぼすようになったり、ご近所トラブルにつながるようであれば、対策が必要になると思います。

■ 分離不安について知ろう

『分離不安』とは、猫が家族と離れることに、極度の不安を感じて起こす困った行動や反応全般を指します。
中には「飼い主と離れるのが嫌で呼び戻そうとして延々大きな声で鳴いてしまう」のように、ご近所トラブルの原因となってしまうようなものもあります。
家族と離れる強い不安が精神的なストレスに結び付き、体調を崩してしまう場合もあります。

・分離不安の猫で見られる困ったトラブルの例

ものを壊す(室内を荒らす)
誤飲をする
大声で鳴く(過剰に鳴き続ける)
トイレ以外の場所で排泄をする
過剰なグルーミング(毛づくろい)
 

落ち着いた性格の猫であっても、一人ぼっちにされてしまったと理解すると、これらの行動を見せることはありますが、時間経過とともに落ち着いていきます。分離不安の猫ではこれらの行動、反応が家族が戻るまで延々続きます。
現在は大きなトラブルにつながっていなくても、やむを得ず猫を一時的に預ける必要が出たとき(入院など)のことを考えると、猫自身の体調のためにもある程度落ち着いて過ごすことができた方が安心です。

多くの場合、分離不安傾向の猫であっても留守番に慣れたり、精神的に成熟する、あるいは不安な気持ちを落ち着かせるサプリメントなどを取り入れることで、少しずつ適応していくことができます。
すぐに改善することはほとんどありませんので、猫と家族が根気強く向き合っていく必要があるかもしれません。

飼い主のニオイがついたものは効果があるの?

不安を感じやすい傾向にある猫を落ち着かせる方法として、「大好きな家族のにおいがするものを置いておく」というものがあります。
この方法について研究を行った論文(「The effect of owner presence and scent on stress resilience in cats」和訳:飼い主の存在と匂いが猫のストレス耐性に及ぼす影響)がありますので、その結果についてご紹介します。

 

■ほとんどの猫は飼い主の存在を感じるとストレスを軽減する?

猫は家族と一緒に過ごすことでストレスを軽減させることが分かっています。これは愛着効果と呼ばれるもので、人間の母親と赤ちゃんがお互いに存在を感じることで幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」が分泌され、ストレスを軽減させる作用に近いものだと考えられています。
猫は、家族は母親と同じように安全と安らぎを提供してくれる存在=全基地(Secure Base)と認知していると考えられるようになりました。

そこで、アメリカ・オレゴン州の研究チームが調査したのが、猫が家族の匂いのついたモノでも気持ちを落ち着かせることができるのか、ということです。

方法は、まず家族の匂いのついた靴やくつ下、パジャマや毛布などを用意し、家族と猫がその部屋で過ごします。猫は自由に動き回りますが、家族は一定の範囲内から動きません。その後、人間だけが部屋を出て、猫だけが残ります。
次に、家族の匂いがついたモノを円の中心におく、または家族が戻ってくる場合の猫の行動を記録するという実験です。
この検証を通して、とあることが分かりました。

 

■家族の匂いがする物体は効果なし!

家族がいなくなってしまうと、不安になったり、家族を心配して大きな声で鳴きはじめたり、グルーミングをするなどの行動を取る猫が多かったようです。(初めての状況を作る実験であれば当然の反応ですね)
家族が戻ってくると鳴きやむことが多かった一方、全く効果がなかったのが、家族の匂いのついたモノ(靴やくつ下、パジャマや毛布など)を置いた場合。心が落ち着くどころか、それ以外のケースよりも頻繁に鳴くことすらあったそうです。

家族の匂いがついたもの=落ち着く、というのは、実は犬では恐れやストレスを軽減させるということが立証されています。しかし、猫では真逆の結果になってしまったというのですから、改めて「猫は猫」という基本的なことを教えてくれるような結果となりました。
入院時や一時的にペットホテルや知人に預ける時、よかれと思って、家族の匂いがついたモノを一緒に預けていたという人にとっては、ちょっと驚きの結果かもしれませんね。

一番猫の気持ちを落ち着かせるのは…


実は全く効果がなかった家族のにおいがついたアイテムですが、では猫の不安な気持ちやストレスを軽減させるのに一番効果的なのは、何なのでしょうか?

それは…家族との触れ合いです。
一時的に家族と離れて過ごすことになったとしても、家に戻ってきたら猫とたっぷりと触れ合いの時間を作ることで、「待っていれば家族が帰ってきてくれる」と猫も理解するようになります。
家の中を荒らされたり、トイレの失敗などがあると、ついつい片づけを優先させたり、猫にお小言を言いたくなってしまいそうですが、まずは猫との触れ合いを作ってあげてください。
家族と一緒におもちゃを使って遊ぶことが猫の中では一番人気だったようですが、研究によると話しかけたり、体を撫でたりするだけでも猫は喜びを感じてくれているとのことです。

猫にとって、家族と一緒に過ごす時間は大きな喜びであり、ごほうびでもあるのです。

おわりに

今回は、猫の分離不安と猫の不安や精神的なストレスを軽減させる方法についてご紹介しました。これまで、多くの情報媒体などで言われていた「家族の匂い」が猫の困った行動に拍車をかけていた…というのは驚きでしたね。やはり、猫は猫として、正しく知り、理解することが大切なのだと改めて感じました。
すでに分離不安傾向が出ている猫の精神的な成長を促し、自立心を養うことは容易ではありません。しかし、最近ではそんな猫のための精神的な安定をサポートするサプリメントなども、動物病院で処方されることがあるようです。困ったときは動物病院で相談することもぜひご検討ください。