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2026.02.26

猫と人間の違い【体の作り編】腸の変化が教えてくれること[#猫研究所]

猫と人間の違い【体の作り編】腸の変化が教えてくれること[#猫研究所]

■猫と人間の違いシリーズ:vol.11(体の作り編①)

腸が健康に深く関わっていることは、よく知られています。免疫や栄養吸収、体調管理に関わり、腸は「第二の脳」と呼ばれるほど重要な器官です。この点は、猫も人間も変わりません。
ただし、その重要性が体にどう現れるかは、猫と人間で大きく異なります。
人間では、腸は健康を支える重要な要素のひとつとして、他の器官や生活習慣と連動しながら働きます。
一方、猫では腸の状態がより直接的に現れ、便や食欲、元気、毛づやだけではなく、さらに腎臓への負担として、より顕著に表れるケースも少なくありません。
同じ哺乳類でも、体の作りが違えば、腸の役割も変わります。猫と人間を比べると、「腸が大事」という言葉の意味が、少し違って見えてきます。
この記事では、人間と猫の腸の役割の違いをスタッフ猫たちと一緒に探っていきます。

■寿命や記憶など、人間との違いが判ると猫のことがもっと好きになる、仲良くなれる。人間と猫の違いシリーズはこちら

腸は単なる「消化の通り道」ではありません。大きく言えば、腸は①栄養を吸収して体の材料にする/②体に入るものを見張って守る(免疫)/③全身のバランスを整える、という複数の役割を同時に担う多機能な器官です。
だから腸が乱れると、便だけでなく、食欲や元気、皮膚・被毛などにも波及しやすい。ここまでは猫も人間も共通の前提です。

CAT's TALK

ゴロー

ゴロー

腸って食べたら出すだけじゃないであります!

ランラン先生

ランラン先生

ええ。吸収・防御・調整をまとめて担うからこそ、乱れると影響が大きいのです。

ムー

ムー

なるほど。健康の司令塔みたいな感じなのね。

猫は完全肉食動物として、主に肉のタンパク質と脂質をエネルギー源に生きてきました。狩りで得られる食事内容は比較的安定しており、「毎回ほぼ同じ種類の栄養を、確実に体に取り込む」ことが求められてきた生き物です。
一方、人間は雑食動物として、肉・植物・穀物など、その時々で内容の異なる食事に適応してきました。食べ物の種類や栄養バランスが一定ではないため、「うまく消化できない部分があっても、後から調整しながら処理する」体の仕組みが必要でした。
この食性の違いは、腸の働き方そのものに反映されています。猫の腸は、限られた栄養を素早く無駄なく処理することに特化した構造で、人間の腸は、食事内容の違いに応じて処理の仕方を変えながら、時間をかけて対応できる構造です。
つまり、猫と人間では「どんな前提で腸を使うか」というスタート地点が、そもそも違っているのです。

CAT's TALK

王子

王子

ボクは雑食向きじゃないのだ。

ゴロー

ゴロー

ボクちんたちはお肉仕様であります!

ナナ

ナナ

同じ腸でも、得意分野が違うってことなのね。

猫の腸は、人間や草食動物と比べて短く、構造もとてもシンプルです。これは欠点ではなく、完全肉食動物として効率よく生きるための設計です。
猫は、肉に含まれるタンパク質や脂質を、できるだけ早く消化し、吸収する必要がありました。そのため、植物の繊維を腸内細菌でじっくり発酵させたり、後から回収したりする工程はほとんど持っていません。言い換えると、猫の腸は「遠回りせず、一直線で処理する」ことに特化した作りです。
この処理の速さとシンプルさは、うまく機能しているときには大きな強みになります。
一方で、食事の変化やストレスなどによって腸の働きが少し乱れた場合、その影響を途中で受け止めたり、時間をかけて調整し直したりする工程が少ないという特徴もあります。

人間の腸であれば、
・食べ物を腸内に長く留める
・発酵によって栄養を作り直す
・腸内細菌の働きでバランスを補う

といった緩衝する工程があります。猫の腸では、こうした工程が限られているため、腸で起きた変化が、便・食欲・元気・毛づやといった形で比較的まっすぐ体に表れやすいのです。
これは「猫の腸が弱い」という意味ではありません。
腸が担う役割が多いにもかかわらず、立て直すための工程が少ない構造だからこそ、影響の出方が分かりやすい、それが猫の体の作りです。

CAT's TALK

ゴロー

ゴロー

ボクちんの腸は、一直線コースであります!

クリ

クリ

速いけど、寄り道はできない感じだね。

ランラン先生

ランラン先生

ええ。その分、変化が体調に反映されやすいのです。

人間の腸は長く、腸内細菌の多様性や発酵など、状況に応じてバランスを取り直せる仕組みが発達しています。
だから腸が一時的に乱れても、食事内容や生活の工夫で立て直しやすく、影響が急に全身へ出にくい傾向があります(もちろん個人差はあります)。
この調整の工程の多さが、猫との大きな違いです。

CAT's TALK

ムー

ムー

人は後から整えるができるのね。

ゴロー

ゴロー

猫は最初から崩さないが大事であります!

王子

王子

なるほど、腸の設計の目的が違うのだ。

実際に、猫の慢性腎臓病では、腸由来の尿毒素が増えることが報告されています。さらに、腸由来の尿毒素の変化が、高窒素血症(いわゆる腎数値の上昇)が見つかる前の段階から観察された研究もあります。
ただし、こうした腸内環境の変化は、日常生活の中で目に見えて分かるものではありません。
そのため、「変化に気づいてから対応する」というよりも、腎臓の異常がはっきりする前から、腸に負担をかけにくい環境を整えておく視点が重要になります。
日々の食事の工夫や、乳酸菌などを用いた腸内環境のケアは、腸の状態を安定させ、結果として腎臓に余計な負担をかけにくい条件づくりにつながる可能性があります。
※ただし、これらは治療ではなく、あくまで日常的なサポートの一環です。

CAT's TALK

ゴロー

ゴロー

腸の話が、腎臓までつながるでありますか!

ランラン先生

ランラン先生

はい。腸で生まれた物質を腎臓が処理する場面があるのです。

ナナ

ナナ

腸が荒れると、腎臓のお仕事が増えちゃうってことだ?

ケアは、症状が出てから始めるもの、と思われがちです。しかし猫の腸ケアの場合、早い段階から意識しておくことに意味があります。

■理由①:猫は腸の乱れが全身に直線的に出やすい

短くシンプルな腸は効率的ですが、乱れが緩衝されにくい。便・食欲・毛づやなどの変化が早めに出やすいからこそ、小さなズレの段階で整える価値があります。

■理由②:腸由来尿毒素の話は「腎臓が悪くなってから」だけではない

慢性腎臓病の猫では腸内細菌叢の変化や腸由来の尿毒素の上昇が報告され、診断前の段階から、健康な猫とは腸内環境や代謝物に違いが見られたとする研究もあります。腸の状態を整えることは、腎臓の負担を増やしにくい条件を作る一手になり得ます(※ただしこれは、治療ではなくサポート)。

■理由③:介入は「強いこと」をするほど難しくなる

腸が荒れてから大きく変える(急な食事変更、過度なサプリ追加など)ほど、猫はストレスを受けやすい傾向にあります。だからこそ、元気なうちに、腸内環境を崩しにくい暮らし*1を作るほうが理想的です。

腸は猫にも人間にも重要な器官ですが、猫は体の設計上、腸の変化が全身に反映されやすい生き物です。
さらに近年、猫でも腸と腎臓のつながりが注目され、腸由来の尿毒素や腸内環境の変化が腎臓の負担と関係する可能性が示されています。
だからこそ猫の腸ケアは、特別なことをするというより、急な変化を避けて、崩れにくい条件を早めに作る、という考え方がもっとも安全で実用的です。
腸の小さな変化がサインとして現れたとき、そのサインを見過ごさないようにして、猫にずっと元気でいてほしいです。

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