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2026.02.12
【猫の噂を検証】シリーズ②:猫の鳴き声は人間に合わせて進化したって本当?[#猫研究所]
■猫はミステリアス。その魅力が生んだ噂の検証②
猫という動物は、昔から「ミステリアスな存在」として語られてきました。普段は静かなのに、急に甘えるような声を出して呼んでくる。あるいは、猫同士ではほとんど鳴かないのに、人間にはよく鳴く。こうした行動が猫の噂を生み出していきます。
「猫の噂を検証する」シリーズでは、世間で語られる猫の噂をひとつずつ取り上げ、猫の行動学の視点から「本当はどうなのか?」を紐解いていきます。
今回のテーマは多くの人が気になっている噂「猫の鳴き声は、人に向けて特別に使い分けられているらしい」というものです。
猫はなぜ、人間に対して積極的に鳴くのでしょうか?その理由を、最新の知見からわかりやすく解説します。
■猫はミステリアス。その魅力が生んだ噂の検証をするシリーズ猫の噂を検証シリーズはこちら
まず事実:成猫同士はほとんど鳴かずに暮らします
猫の鳴き声を理解するうえで、最初に知っておきたい事実があります。成猫同士は、鳴き声をほぼ使わないでコミュニケーションしているということ。
猫同士は、主に以下のような、音以外のサインで意思疎通します。
・匂い(フェロモン)
・体の向き
・耳やしっぽの角度
・目線
・距離感
・触れ方
これらのサインでほとんどの情報交換が完結してしまうため、声を使う必要がないのが猫社会の特徴です。
だから野良猫や外で生活する猫は、基本的に静かです。


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ランラン先生
猫の世界は「静かなお話」が基本です。

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ゴロー
ボクちんも猫同士ではあんまりおしゃべりしない無口な男なのであります。

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ナナ
だけど、いっつもお尻に近づいてくるー。
ではなぜ、家庭の猫は人に向けてよく鳴くのか?
ここからが本題です。猫が人に向けてよく鳴く理由はとても明快で「人間は、声で意思表示すると反応してくれるから」です。
猫はとても賢く、生活の中で次のような経験を積みます。
・鳴いたら扉が開いた
・鳴いたらごはんが出てきた
・鳴いたら家族がこっちを見てくれた
・鳴いたら近寄ってくれた
これが積み重なると、猫は学びます。
「人には鳴くと伝わる」
というルールを。
つまり、猫は人とのコミュニケーションに「鳴く」という手段を取り入れたと言えます。これは猫の柔軟さ・賢さを象徴する行動です。


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ムー
ニャ~ン!って言ったらマエダが来るからね~。

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クリ
声出したほうが伝わること、ボクたちはちゃんと知ってるんだよ~。
猫は人間向けの声を使い分けています
近年の研究でわかっているのは、猫はただ鳴くだけでなく、状況に応じて声の高さ・長さ・トーンを変えているということです。
いくつか例を挙げると、
■甘え声:高くて伸びる「ニャ~ン」
求めているもの
・甘えたい
・注目してほしい
・近づいてほしい
■ごはん要求:短い連続「ニャッ ニャッ ニャッ」
興奮が強い時の声。
■呼びかけ・返事:柔らかい「ニャッ」「ン~」
人間の声に反応して出す、いわば「会話の返事」。
■不安・警戒:低めの「ウ~」「ンニャ…」
これは人にも猫にも使う「否定的な声」。
これらは外で暮らす猫より、人と暮らす猫のほうが圧倒的に多様です。
つまり猫は、人間が理解しやすい声のパターンを、生活の中で身につけていくということです。


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ナナ
声の使い分けはコミュニケーションの基本だもん。

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ゴロー
ボクちん、お返事の時は元気よく、であります。
人間が猫の声に反応しやすいことを猫は理解しています
猫は、人間の反応の仕方をとてもよく観察しています。
たとえば
・高い声のほうが人間が振り向く
・甘えた声のほうが優しくしてくれる
・短く鳴くと、忙しいときでも反応してくれる
・鳴き続けると扉が開く
こうした経験が積み重なると、猫の中で最適なコミュニケーション方法が洗練されていきます。
つまり猫は「人に伝わりやすい声」を自分なりに選んで使っているのです。
これは非常に高度な社会的適応能力とも言えます。


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王子
人が動いてくれる声を使ってるのだ!

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ムー
ちゃんと聞いてくれる声ってあるもんね。
猫が「人に向けて鳴く」という行動は「絆」の証です
さらに重要なのは、猫が人に向けて鳴くのは、信頼している相手だからこそという点です。信頼していない相手には、猫は声を使って積極的にコミュニケーションを取ろうとしません。鳴き声は、猫のなかでも比較的弱いシグナルであり、仲間内や安全な相手にだけ使われます。
つまり猫は、「あなたには声で伝えても大丈夫」「あなたとなら会話が成立する」と感じているからこそ、鳴くのです。


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ナナ
声は「信頼してるよ」ってサインでもあるんだから。

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クリ
安心できるから話しかけるんだよ~
まとめ
「猫の鳴き声は人間に合わせて進化した」という噂は、厳密な意味では間違いですが、噂の背景にはとても重要な本質があります。
それは、猫が人間に向けて特別に鳴くのは、人と猫のあいだに「深い信頼関係と共同生活」があるからということです。
・猫同士では声を使わず生活する
・人にはよく鳴く
・声のパターンを使い分ける
・人の反応を観察して声を調整する
これらはすべて、猫が人と共に生きることを選んだ動物である証拠です。
猫が「ニャー」と呼びかけるのは、ただの要求ではなく、人に向けた特別なコミュニケーションなのです。

