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2026.02.05
【猫の噂を検証】シリーズ①:猫は人間を「大きな猫」だと思っている?[#猫研究所]
■猫はミステリアス。その魅力が生んだ噂の検証①
猫という動物は、どれほど身近にいても、どこか掴みどころのないミステリアスな存在です。
自由で気まぐれ、ツンデレで愛情深い。そんな複雑さが混ざり合うゆえに、猫をめぐる噂は昔から数多く語られてきました。「本当はこう思っているらしい」「この行動には深い意味があるらしい」など、根拠があるものから都市伝説のようなものまで多彩です。
そこで「猫の噂を検証する」シリーズでは、長年語られてきた、猫に関する噂をひとつずつ取り上げ、行動学や科学的知見をもとに、真相を探っていきます。
今回取り上げるのは、特に人気で広く信じられている噂「猫は人間を大きな猫だと思っている」という説。
果たして猫は本当にそう感じているのでしょうか。最新の研究や行動の意味をふまえて、じっくり検証していきます。
噂のはじまり:行動学者の言葉が広まった背景
この噂は、イギリスの動物行動学者ジョン・ブラッドショー氏の研究が広まったことがきっかけだと言われています。
ブラッドショー氏は著書の中で、
「猫は人間に対して、猫同士で見せる親愛行動をそのまま行う」
と述べています。
これが世間に広まる過程で、
・猫は人間を猫の仲間だと思っている
⇒ つまり、人間を「大きな猫」だと認識している
と、やや飛躍した形で解釈されてしまいました。
しかし、ブラッドショー氏は決して「猫は人間を猫と誤認している」とは言っていません。
本来の意図は、「猫が信頼できる相手に、猫同士の愛情行動を向ける」という意味にすぎないのです。


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ゴロー
ボクちん、マエダにスリスリするのは仲間と思ってるからであります!

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ランラン先生
研究が広がると解釈もいろいろになるんですね。難しいですね。
猫は“人間=猫”とは認識していません
噂とは裏腹に、猫が人間を「猫」と認識している可能性はほぼありません。 猫は五感が非常に優れており、種の違いをしっかり見分けます。
■嗅覚
猫は匂いで個体の識別をします。人間は猫独自のフェロモンを持っていないため、そもそも同じ種として扱うことはありません。
■視覚
大きさ、姿勢、動きのスピードがまったく違います。猫が見ても「同じだ」と思う理由がありません。
■聴覚
鳴き声の周波数が全く異なり、人間の音声を猫と誤認することは起きません。
こうした点から考えても、猫は「人間を猫と同一視していない」というのが行動学の共通見解です。


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ムー
私はマエダが猫じゃないのは知ってるわ。でも大事な存在よ。

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クリ
人間の匂いは猫とは全然違うもん。間違えようがないよ。
ではなぜ“猫扱い”されているように見えるのか?
噂の原因となったのは、猫は人間を「猫」とは思っていないのに、猫同士のような行動を向けてくることがあるからでしょう。
スリスリ、添い寝、ゆっくり瞬き。
これは、「猫が特別に信頼している相手にだけ見せる行動」だからです。猫は仲間や家族に示す行動を、人間にも自然と向けます。
代表的な行動はこちらです。
■スリスリ(頭突き・頬ずり)
猫同士では「仲間」「安心」のサインです。人間に対して行うのは、強い親愛と信頼の表れです。
■ゆっくり瞬き(猫のキス)
「敵意がない」「安心している」という意味で、猫にとって価値の高い愛情表現です。人間に向けて行うのは、完全に心を許している状態です。
■そばで眠る・布団に入る
睡眠中は無防備になるため、絶対に安全な相手にしか寄り添いません。
■グルーミング(舐める)
家族・強い仲間にしか見せない特別な行動です。人間を舐める猫は、かなりの愛情度です。
これらの行動が、「猫が人間を仲間として扱っているように見える」理由なのです。


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王子
仲間にしかしない行動もあるのだ。

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ナナ
安心するとゴロゴロしちゃうの〜。
猫はなぜ人間に“猫式の愛情表現”をするのか?
猫が人間にスリスリしたり、そばで眠ったり、ゆっくり瞬きを見せたり。これらはすべて、本来は猫同士で交わされる親愛のサインです。
では、なぜ猫は人間に対しても、猫相手と同じように愛情表現をするのでしょうか。
理由は大きく3つあります。そして前提として、「信頼できる相手なら種族を超えて愛情を示す」 という性質は猫だけでなく、犬や馬、うさぎなどにも見られる自然な行動です。
ただし、猫の場合はその判断基準や表現の仕方に猫ならではの特徴が存在します。以下では、その猫らしさを軸に理由を解説していきます。
①本能的な愛情表現で、安心できる相手にしか現れないから
スリスリ(頬ずり)など、猫同士の世界では「敵意がない」「安心している」「信頼している」という意味を持つ本能的なサインを、人間に向けて行うということは、「あなたは安全で、信頼できて、そばにいても大丈夫な相手です」という深い安心感の表れです。
信頼の基準が厳しい猫が多いため、無防備な行動が見られるということは、それだけあなたが特別な存在ということになります。
② 猫は種族よりも信頼で仲間を決める動物だから
猫は仲間を判断するとき、犬などの他の動物同様、見た目や種族をあまり重要視しません。
犬も馬も「優しい相手なら信頼する」のは同じですが、 猫は誰でもOKというタイプではなく、 ひとりひとりをじっくり観察しながら判断します。
■猫は相手の行動を細かく観察して判断します
猫はこんなところを見ています:
・無理に抱え込まない
・大きな音を立てない
・ゆっくりと近づく
・自分のスペースを尊重してくれる
・優しく接してくれる
これらを総合して猫が「この相手は危険じゃない。むしろ安心できる」と感じると、相手が猫でなくても仲間として受け入れます。犬や馬なども異種と信頼関係を築きますが、猫は個で相手を見る性質が特に強い点が特徴です。(犬は群れの仲間単位で判断することが多く、ここが猫との違いです。)
■そして猫は仲間だと判断した相手に、猫同士の愛情表現をそのまま向ける
猫らしさの大きなポイントはここではないでしょうか。猫は自分のスタイルを変えません。
犬のように人間向けに愛情表現をアレンジするのではなく、猫は猫式のまま人間に接します。
・スリスリ
・ゆっくり瞬き
・体を預ける
・寄り添って眠る
これはすべて、「あなたは私にとって信頼できる仲間」という意味です。猫が人間に猫同士のサインを向けるのは、猫の流儀で愛情を伝えているという、とても猫らしい特徴です。
③ 人との生活の中で、愛情行動がどんどん強化されるから
猫はとても学習能力の高い動物です。人との暮らしの中で、安心できる体験が積み重なると、猫同士の愛情表現が人間相手にも自然と増えていきます。
たとえば、
・スリスリ → 撫でてもらえる
・甘えた声 → 優しく声を返してくれる
・隣で寝る → 安心できる場所になる
こうした良い結果が積み重なることで、猫はその行動を「もっとしても大丈夫」と感じます。その結果、人と暮らすほど、猫は愛情表現が豊かになるという現象が起こります。
つまり、猫が人に見せる親愛行動は、本能 × 信頼 × 安心体験の三つが重なって強まっていくのです。
■猫はなぜ人間に“猫式の愛情表現”をするのか?
✔ 種族を超えて愛情を示すという仕組み自体は、猫だけのものではない
✔ しかし猫は「行動による信頼」を強く重視する独特の判断基準を持つ
✔ 信頼した相手には、猫同士のサインをそのまま人間に向ける
✔ 猫は群れではなく個で絆を築くため、その分愛情は深く個別的
✔ 人との生活の中でその愛情表現が強まり、豊かになっていく
結局のところ、猫が私たちに猫式の愛情を見せてくれるのは、「あなたは安全で、信頼できて、特別な仲間です」という、猫らしいシンプルでまっすぐな理由なのです。


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ムー
安心できる相手には猫のルールで愛情を伝えるのよ♪

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ナナ
あたち、人だろうと猫だろうと信頼したら猫式なの。
研究の結論:人間は猫にとって“唯一無二の特別な存在”
行動学では、猫が人間をどう認識しているかについて、次のように整理されています。
・猫は人間を「猫」とは認識していない
・しかし「信頼できる仲間・安全基地」として扱っている
・そのため猫同士の愛情行動を人に向ける
つまり、正しくは、「人間=猫」ではなく、「人間=特別な仲間(安全で大切な存在)」という認識です。猫は種を超えて信頼関係を築く柔軟性を持っているため、人間との関係にも自然に「猫の愛情表現」を適用するのです。


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ランラン先生
特別な相手だから、特別な行動をするんですよね。

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ゴロー
仲間だからスリスリするであります!
まとめ
「猫は人間を大きな猫だと思っている」という噂は、半分は誤解で、半分は猫の愛情表現に由来したものです。
猫は人間と猫を明確に区別しています。しかし、信頼できる仲間として人間を受け入れることで、猫同士の愛情行動をそのまま人間に向けるという事実があります。猫が人間にスリスリしたり、そばで眠ったりするのは、「大きな猫」だと思っているのではなく、「特別で大切な存在」と認識しているからです。
猫と人間の関係は、誤認や本能だけでは語れない、種を超えた深いパートナーシップなのです。

