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2021.08.05

好き嫌いに関係する?あまり感じないって本当?猫の味覚について知ろう

好き嫌いに関係する?あまり感じないって本当?猫の味覚について知ろう

猫の毎日の食事となるキャットフード。

原材料、保証分析値、製造国など色々な視点でチェックを行い「これなら」と選んだものを、いざフードボウルに出してあげても少し食べて「これ嫌い」と猫がそっぽを向いてしまうという経験はないでしょうか。
tamaのスタッフも色々なフードをスタッフ猫に試してもらいましたが、猫が気に入らずメインのフードにメンバー入りとはならなかったフードは数知れず。

そこで疑問が浮かびました。
猫にとって「おいしいもの」とはどんなものなのでしょうか?猫の味覚に合っているフードとは?
猫の嗜好性や好き嫌いに大きく影響するのは、香りだといわれていますが、猫の味覚は嗜好性に影響しないのでしょうか?

今回は、猫の食事と嗜好性、好き嫌いについて「味覚」という観点に絞って調べてみました。

猫の味覚について知ろう

猫について調べていると、味覚に関しては「猫の味覚はあまり鋭くない」と紹介されている記事をよく見かけます。
でも、実際に猫と一緒に暮らしていると必ずしもそうではないと感じます。

猫は味をどのように感じているのか、調べてみました。

 

■猫があまり味覚が鋭くないって、本当?

まず、哺乳類が味を感じることができるのは、舌の上にある味蕾(みらい)と呼ばれる器官の働きによるものです。
味蕾はさまざまな性質を持つ複数の細胞から構成されていて、一部の細胞は味を刺激として認識する神経細胞として機能しています。

人間では味蕾の数は約10,000~7,000個といわれる一方で、猫の場合は約500ほどといわれています。数にして人間の1/20から1/14ほどしかないのです。
このことから、猫は味覚を感じる力が弱いといわれているようです。

しかし、人間の中でも「味覚が鋭い人」と「そうでもない人」がいますよね。日本人は味覚が鋭く、うまみを感じる能力が高いともいわれていますが、日本人と欧米人で味蕾の数を比較して日本人の方が味蕾の数が多いという研究はなく、大差ないのです。
つまり、味蕾の数が味覚の鋭さに影響しないと考えられているのです。

しかし、味覚の鋭い人は味蕾から得た味の刺激を処理する脳の働きに差があることが分かっています。
例えば、さつまいもの仲間を主食として食べているとある島の部族の方は、品種ごとに感じる微妙な違いすらも感じることができるようになるのだそうです。これは繰り返しさまざまな種類のさつまいもを食べた経験から、脳が受領した味の情報をより細やかに分類することができるようになったためだと考えられているそうです。

このことから、猫も味蕾の数が少ないからと言って人間と比較して味をあまり感じないとは言い切れないのではないでしょうか。

普段から美味しいものを食べている猫の場合は味を感じる脳が発達して、うまみや風味をより繊細に感じるようになっている……という可能性は否定できないと思います。

 

■猫が好きな味ってあるの?

猫の好き嫌いに味覚は影響していると考えられます。
過去に行われた実験では、アミノ酸を含む水と全く含まない真水を猫に与えた時には、アミノ酸が含まれている水を好んで飲むことが分かっています。

さらに別の実験では、猫の味蕾には複数のアミノ酸を味として認識する機能があることが分かったのです。
人間では、「グルタミン酸」などのアミノ酸をうま味として認識することができますが、猫も同じようにアミノ酸を「味」として認識しているようです。

猫はアミノ酸を含む水をより好んで飲んだこと、そしてアミノ酸を猫が「味」として知覚することができることを踏まえると、猫はアミノ酸を豊富に含むものを好んで食べる傾向があると言うことができそうです。

とはいえ、アミノ酸であれば何でもよいのかというとそうではないようで、アミノ酸の中には苦味を感じるものもありますし、アミノ酸の組み合わせの絶妙なバランスによって味は決まるといわれています。(人間の味覚でも同じです)

肉食動物である猫は、アミノ酸に対する味蕾だけが発達したため、人間よりも味蕾の数が少ないのかもしれませんね。
猫が好むアミノ酸の配合バランスが分かれば、より嗜好性の高いキャットフードが生まれることになるのかもしれませんが、結局は猫それぞれになりそうな気もします。

参照

*1 "Biophysical and functional characterization of the N-terminal domain of the cat T1R1 umami taste receptor expressed in Escherichia coli" Belloir C, Savistchenko J, Neiers F, Taylor AJ, McGrane S, Briand L (2017) PLoS ONE12(10): e0187051, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0187051

猫の味覚と好き嫌い

猫の味覚について基本的な情報をご紹介しましたが、多くの方が悩んでいる「猫の好き嫌い」と猫の味覚にはどのような関係があるのでしょうか。

 

■猫が苦手な味は、苦味・酸味

避けようとする味という意味で、特定の味を苦手とする猫が多いといわれています。それは、苦味と酸味です。これらを強く感じると、拒否反応を示します。

苦味は、猫だけではなく動物にとって良くない作用を持つ成分に特徴的に感じられる味わいだといわれています。毒物などから身を守るために、苦味を感じる食べ物は拒絶するように本能に刻まれているのです。

酸味は、酸化したり腐敗している食品から感じる味わいのため、猫はこちらも避ける傾向にあるといわれています。ちなみに、私たち人間にはフレッシュに感じる柑橘系の香りも猫たちは苦手としていますが、これも酸味を連想させるためです。

これらの味わいには猫は非常に敏感に反応を示す傾向があり、開封後時間が経過して酸化が進んでいるキャットフードなどを拒絶します。

■味覚以外でも好き嫌い・食いつきに影響する要素

ここまでは味覚を中心にご紹介してきましたが、猫の好き嫌いや食いつきに影響するのは味覚だけではありません。
以下の要素が猫の好き嫌いや食いつきに影響している可能性もあります。


【猫の好き嫌いに影響すること】
・キャットフードの香り
・粒の大きさ、形
・フードの固さ、歯ざわり(サクサク、バリバリなど)
・フードの形状(ドライフードか、ウェットフードか)

そもそも猫が「食べよう」という興味を引かれるのはやはりおいしそうな香りの影響が大きいです。
そのあと猫が少しでも口に入れて食べてから、吐き出してしまったりフードを残すようであれば「味が好みではない」可能性や、粒の食感・サクッと感、口の中で感じる香りが気に入らない可能性があります。
しかし、「全く口をつけない」という場合であれば「香り」や「粒のサイズ、形」が好みではない可能性が好みではない可能性が高いと思います。
また、使用されている原材料は香り、味の両方に関係しますので、キャットフードを選ぶときには猫が食べ慣れている原材料や、オヤツなどで好んでいる食材を選ぶことをオススメしています。

DOG's TALK

ちなみに、猫がそれまで気に入っていたフードを急に食べなくなってしまうこともあります。これはフードの味に単純に飽きてしまった可能性のほかに、フードの酸化が進んでその香りが嫌で食べなくなっている可能性もあります。
猫は酸化のニオイにとても敏感です。大袋の方がお買い得なケースも多いですが、食の好みがはっきりしている猫の場合は、小さめの袋をあえてこまめに買い、酸化してしまう前に使い切るという方も多いです。

おわりに

今回は、猫の好き嫌いと猫の味覚についてご紹介しました。
猫の味覚は人間よりも鈍いと紹介されることが多いですが、実際に猫と暮らしていると「美味しいものを分かってるな…」と感じる場面も多いと思います。
調べてみると、味蕾の数は必ずしも味覚の鋭さを左右しないこと、そして猫はさまざまなアミノ酸を味として感じる能力があることが分かり、猫には猫なりの複雑な味覚があるのではないかと感じるようになりました。

まだまだ謎が多く残っている不思議で可愛いいきもの、猫。猫の味覚についてのさまざまな研究が進めば、より猫の好みに合わせたキャットフードや、猫が嫌がらずに続けられるお薬なども登場し、より豊かな猫との暮らしが実現するかもしれません。

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