• コラム
  • スタッフコラム

2021.12.23

ユールキャットって知ってる?クリスマスのちょっとコワい猫のお話

ユールキャットって知ってる?クリスマスのちょっとコワい猫のお話

いよいよクリスマスがやってきます。長いように感じた2021年ですが、もう終わり。慌ただしく年末年始を迎えることになりそうです。

さて、本日はそんなクリスマスと猫に関するお話をお届けします。世間一般では楽しかったり、心温まるクリスマスのお話があふれていますが、今回のクリスマスに関連する猫のお話は、ちょっとだけホラーテイスト。
調べてみると北欧の昔話や、人々の暮らしが見えてきました。

クリスマスにやってくる不思議で不気味な猫、ユールキャットのお話です。

ユールキャットって、知ってる?

日本でお住まいの皆さまは、ユールキャットといわれてもどんな猫なのかピンとこないという方がほとんどだと思います。

ユールキャットは、北極圏のアイスランドの昔話に出てくる黒猫です。「ユール」とはクリスマスの時期をさす言葉なので、「クリスマスの猫」という意味になり、なんだかとってもハッピーなイメージが湧きますが、このユールキャットはなかなかのワルモノです。というのも、ユールキャットはクリスマスイブに子供たちを連れ去って丸呑みにしてしまう…恐ろしい存在なのだそうです。

もちろん、ユールキャットだって無差別に子供をさらっていたわけではありません。ユールキャットが狙うのは、「クリスマスの時期に寒そうな格好をしている子供」。真冬なのに半そで短パンでいたり、裸で寝ているような子供を、ユールキャットは大きな目をギラギラさせて狙っているのです。

アイスランドは北極のすぐ下に位置する島ですので、冬はものすごく寒くなり、氷点下になることも多いといわれています。
そんな土地でクリスマスシーズンの真冬に寒そうな格好をしている子供なんて、まずいないと思いますが、お母さんのいうことを聞かずに寒そうな服装でいると、「ユールキャットがやって来るよ!」と叱られるのだそうです。

なぜユールキャットは子供をさらうの?

では、なぜユールキャットは子供をさらってしまうのでしょうか?その答えは、ユールキャットの家族にあります。
ユールキャットのお世話をしているのはグリーラという巨人族の女性です。彼女は日本でいうところの「なまはげ」のような存在で、お母さんのいうことを聞かない"悪い子"を連れ去って、食べてしまうという恐ろしい女性なのです。

そんなグリーラの様子を見ていて、ユールキャットはきっとこう思ったことでしょう。「なるほど、子供っておいしいんだ!」と。
家族が食べているものに興味を持って食べたがる猫は一定数いますが、もしかしたらユールキャットも同じようなタイプだったのかもしれません。
せめてお魚が好きな家族や、チキンが好きな家族と暮らしていれば、ユールキャットはもう少しかわいらしさがあったのかも。なにも子供をさらうところを真似しなくても…と思わずにはいられません。

 

■なぜユールキャットは寒そうな姿の子供をさらうの?

なぜユールキャットに狙われてしまう子供は寒そうな服装をしている子供に限定されているのでしょうか?
それは、この昔話に込められた教訓とアイスランドの環境に関係していました。

アイスランドでは、伝統的にクリスマスのプレゼントとして暖かい羊毛の服や手袋、ブーツなどの防寒具をもらう文化がありました。寒さが厳しい北極圏ですから、防寒具は命に直結するような重要なものだったのです。
「きちんと働いて防寒具作りに必要な羊毛を手に入れることができなければ、命がないぞ!」という話が徐々に変化して、「防寒具を持っていないとユールキャットにさらわれる(死んでしまう)」という話になり、いうことを聞かない子供にことさら恐ろしく伝え聞かせるために「寒そうな服装をしている子供は、ユールキャットにさらわれる」という風に変化していったと考えられているようです。

一見するとちょっと不気味なユールキャットのお話の中には、厳しい寒さを安全に、暖かく過ごしてほしいというアイスランドのお母さんたちの子供たちへの心配や、健康に育ってほしいという願いも込められていたのかもしれません。

 

■ユールキャットのおかしな家族たち

さて、ユールキャットにはグリーラ以外にも一緒に暮らす家族がいます。それぞれがとっても個性的。

まず、グリーラの旦那さんのレッパルージ。この人は自ら子供をさらったりはしません。その理由は、ずばり怠け者だから。奥さんであるグリーラに子供をさらわせて、家で怠けてばかりいる困った(?)人です。

グリーラとレッパルージの間には13人の妖精の子供がいて、彼らはユールラッズと呼ばれています。

ユールラッズたちは母親のグリーラや、猫のユールキャットのように子供をさらったりはしませんが、クリスマスの時期になると人々の家にこっそり忍び込んで、ちょっと困ったイタズラをしかけていきます。
なにせ13人もいますので、それぞれのイタズラの中からちょっと面白いものだけをピックアップしてご紹介します。

例えば、フライパンにくっついている料理の残りを食べるために、フライパンを盗むもの。そのほかにも、汁料理をすくうためのお玉をなめるだけのもの、急いで鍋のあるところまで来て、鍋の残りを食べるものもいます。

窓から覗き見をするという恐ろしいものや子供たちに付いて行って、ろうそくを盗んだりドアをバタンと音を立てて閉じる悪戯をして喜ぶものなど…。

ほかにもいろいろないたずらをする妖精の兄弟がいるのですが、いずれも母親であるグリーラやユールキャットの悪行と比べると、ものすごくスケールが小さい悪さばかりをしています。ユールラッズのイタズラはクスッと笑えるものばかりですので、そこまで子供たちに恐れられてはいないようです。
この時期、フライパンがもしも見当たらなかったら……、急にドアがバタン!と音を立てたら、ユールラッズたちがイタズラをしていったのかもしれません。

おわりに皆さま、ユールキャットとそのファミリーにはご注意を!

今回は、クリスマスのちょっと怖い猫のお話、ユールキャットについてご紹介しました。
ユールキャットの伝説は、子供たちに無事に健康的に成長してほしいという家族の願いが込められていると考えられています。
これから日本でもどんどん寒さが厳しくなっていきますが、暖かそうな服装をしていれば、ユールキャットは悪さをせずに素通りしていくそうですよ。皆さまは、ユールキャットに狙われないように体調管理には気を付けて、暖かくしてお過ごしくださいね。