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2022.03.31

猫のがんが分かったら。ごはんは?家での過ごし方は?家族が意識したいこと。

猫のがんが分かったら。ごはんは?家での過ごし方は?家族が意識したいこと。

もしも、猫に大きな病気が見付かったら、ショックを受けて困惑してしまう方がほとんどだと思います。「どうしたらいいの?」「この子に何をしてあげられるんだろう?」と様々なことを考えて、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
でも、病気と闘う猫のために家族だからこそできるサポートもあります。

今回は、「がん」が分かった猫のために家族ができること、という視点で食事のことや家庭での過ごし方についてご紹介します。

猫のがんと栄養素の関係について

猫のエネルギー源となる基本的な栄養素、タンパク質、脂質、糖質(炭水化物)。
これらの栄養素はがんになった猫の食事でも意識するポイントになっています。

 

■炭水化物は制限が必要

中でも特に注意が必要なのは炭水化物で、がんの治療中は炭水化物を抑えた食事を与えるよう指導されることが多いです。
がん細胞は正常な細胞と異なる使い方で炭水化物を利用しており、がん細胞が炭水化物を利用すると、最終的に乳酸を生み出します。この乳酸の処理にさらにエネルギーが必要となるので、がん細胞が自身のエネルギー源として炭水化物を利用するたびに、猫の身体からはエネルギーが奪われてしまい、身体が消耗してしまう、という悪循環に陥るため、炭水化物の制限が必要になります。

 

■良質なタンパク質をしっかり摂取

タンパク質を構成するアミノ酸は、細胞の増殖のために必要な栄養素です。これはがん細胞も同じで、がん細胞が増殖するためにはアミノ酸が必要です。「それなら、タンパク質やアミノ酸も制限した方ががんの増殖を抑えられるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、アミノ酸の摂取量が不足すると、がん細胞は筋肉を分解して猫の身体自体からアミノ酸を手に入れようとします。ここでも体力を消耗することになってしまいます。
そのため、がんを発症した動物の食事では、がん細胞から体を守るために良質なタンパク質を適切に摂取することが推奨されています。

 

■脂質をエネルギー源として活用

脂質もエネルギー源として活用される栄養素ですが、がん細胞は脂質をエネルギー源として利用することを苦手としています。
そのため、がんを発症した猫の食事では、脂質を増量しエネルギー源を確保することが推奨されています。
脂質には様々な種類が存在しますが、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3脂肪酸は、がん細胞の成長や転移を抑制する効果を持つと考えられています。一方で、リノール酸やγリノレン酸などのオメガ6脂肪酸は、その逆で、がん細胞の成長や転移を助長する可能性があると言われていますので、脂質に関してはただ量を増やすだけでなく、その種類にも気を付ける必要があります。

がんの治療中、猫の食欲が低下してしまったら。

がんの治療中は、痛みや不快感などの、がんそのものによる症状、治療の副作用など、さまざまな原因で猫の食欲が落ちてしまうことがあります。そんな時、家族はどのようなことができるのか、簡単にご紹介します。

 

■とにかく食べさせることが大切

食事を自分で食べることができるようなら、EPAなど魚油(脂質)をトッピングすることがオススメ。
しかし、食欲が低下したりまったく食べなくなってしまったというケースも少なからずあります。病気にかかった動物は体内で食欲を抑制するホルモンが出ることが研究で分かっているほか、抗がん剤や度重なる通院のストレス、痛みなどで食欲が落ち込んでしまっていることが考えられます。
どんな病気でも、戦うためには基本となる体力が非常に重要です。まったく食べず、どんどん痩せてしまうようであれば、獣医師に相談の上で柔軟に対応してみてもいいかもしれません。

例えば、ウェットフードを温めて香りを立てたり、ドライフードをお湯やスープでふやかすことで食欲が出てくることもあります。
そのほかにも、猫の大好物を少し食べさせてみるのもいいと思います。
とにかく猫が食事に興味を示すきっかけとなるものを用意してみてください。
おいしい好物を食べることで食に対する関心が復活して、そこから徐々に食べるようになった、というケースもあるといいます。

 

■家族だけができる、食事の工夫を。

単に「食欲がない」というだけではなく、体の状態が原因で「食事が摂れない」、「摂りたくない」という場合もあります。
例えば、食事をする場所まで行くのが辛い、という様子であれば家族が口元まで食事を運んであげたりすると食べるようになることもありますし、口の中に腫瘍などがあり、食べたり飲みこんだりすることが辛そうであれば、水分量が多いウェットフードや、水で溶いて与える高栄養のパウダーフードを与えてみるなども選択肢になります。
また、猫にとって一番安心できるのは家族と過ごす自分の家ですし、猫の普段の様子を一番よく知っているのは一緒に暮らす家族です。
食事の内容については動物病院と密に連携をとるように心がけながら、猫の様子を細かく観察しつつ適した食事のスタイルを模索してみてください。

獣医師からのコメント 病気と闘う猫のためのこんなお手伝いも。

猫が重い病気にかかってしまったとき、食事を食べなくなることは、ある意味では自然なことです。闘病中の猫のご家族は「用意した食事がおいしくないから」「工夫が足りないから」とついつい自分を責めてしまわれる方が多いのですが、治療中の猫の体内では食欲を抑制するホルモンが出ますし、抗がん剤治療の影響で食欲が低下していることも考えられます。ご家族のせいではありません。
ですから、ご家族は思いつめすぎないでください。猫も大好きな家族が辛そうな顔をしているのを見て、悲しい気持ちになってしまうかもしれません。

食べてくれず、困ったときには動物病院で相談していただければ、猫の食欲を促進する薬を処方することもできますし、場合によっては病院で食事を与えてくれることもありますので、ぜひ頼ってみてください。
「食べる」ことは猫にとっても大事なことです。体にいいもの、健康なものでなくとも興味を示すかどうかを優先に、食のサポートをしてみるのでもいいと思います。

 

おわりに

今回は、猫のがんと栄養素の関係、そしてがんが分かった猫のためにできる食事の工夫をご紹介しました。大きな病気をしてしまった猫は食欲が低下することが多くありますが、それは自然な反応であり、家族に原因があるとは限りません。
病気の看護を行うにあたり、大切なのは家族も猫も無理なくできる工夫を少しずつ続けていくことです。厳密な食事の制限が必要なケースもありますが、基本的には猫の体調を観察しながら食べたいものを与える時があってもいいと思います。