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2022.09.15

猫にエッセンシャルオイルがNGな理由を改めて調べてみました。[#調査隊レポート]

猫にエッセンシャルオイルがNGな理由を改めて調べてみました。[#調査隊レポート]

猫との暮らしの中で注意が必要なことについて調べてみると「猫にエッセンシャルオイルは絶対NG」というものがあります。
なぜ猫にエッセンシャルオイルは絶対NGなのか、それともハーブそのものがNGなのかなど、具体的について調べてみました。

猫との暮らしの中でお役立ていただけると嬉しいです。

猫にとってエッセンシャルオイルが危険な理由

まず、猫にとってエッセンシャルオイルが危険だといわれる理由としては、人間や犬と比較して猫が上手く成分を分解することができず、中毒症状を起こす可能性があることが挙げられます。少量のエッセンシャルオイルであっても体調を崩しやすいといわれています。

アロマセラピーなどに使用されるエッセンシャルオイルなどのオイル類は、一般的に水蒸気蒸留法によって大量の植物から精油成分を抽出しています。
そのため、植物が本来持っている防衛機能に役立つ成分(フィトンチッド)や機能性成分をより強く感じることができるのです。エッセンシャルオイルで植物の香りをより強く感じるのも、この香りの元となる成分を濃縮しているためです。

人間や犬などの他の哺乳類は、体内に取り込まれたエッセンシャルオイルの成分を肝臓が代謝して最終的には尿と一緒に体外へ排出しています。
ところが、猫の場合この代謝に必要な特定の酵素を体内で十分作れないことが近年わかってきました。このことが、エッセンシャルオイルの成分を上手く解毒できずに中毒を引き起こしてしまう原因となっているようです。

どんな使い方をしても危険なの?

エッセンシャルオイルの使い方はいくつもありますよね。例えば、オイルを使ってマッサージを行ったり、ポッドで加熱して香りを部屋に満たしたり。入浴剤として使用するほか、手作りのハンドクリームなどに混ぜ込むことなどもあります。
これらの使い方によって猫の体調への影響は変化するのでしょうか?

まず、猫の皮膚に直接エッセンシャルオイルを触れさせることはNGです。
それから、猫がこれらのオイルを舐めてしまうことも避けてください。
猫は自分の体を舐めて綺麗にしますので、オイルがついた手で触れてしまうと、グルーミングによって結果的に猫がオイルを舐めてしまうという事態にも陥りやすくなりますので注意が必要です。

オイルを舐めてしまうことはもちろん、皮膚に塗ることでもオイルに含まれる成分が浸透し、猫の体調に影響を及ぼします。
家族がエッセンシャルオイルを含むハンドクリームなどを使用する場合も、猫に触れる前に必ず手を洗うようにすると安心です。

 

■アロマを部屋に炊く、ポットやディフューザーも危険なの?

猫の体に直接エッセンシャルオイルを使用すること、舐めさせることは明らかに体調に影響することがこれまでの臨床研究で明らかになっています。
しかし一方で、現在でも不明確な部分が多いのがアロマポットやアロマディフューザーを使っている場合。
猫がオイルを舐めてしまったり、皮膚に直接触れた場合に比べると、急性中毒のようなことは起こりにくいようではありますが、呼吸をしているうちにオイル(精油)の成分は代謝・排出されずに猫の体内に蓄積されていく可能性があると指摘する獣医師もいて、NGとするのが一般的になっています。

いずれにせよ、現時点では研究者の間でも見解が分かれていることですので、猫と暮らしている家ではアロマポットやディフューザーの仕様はオススメできません。

とくに注意が必要なエッセンシャルオイルの成分はあるの?

実は、かつて猫用のシャンプーやケアアイテムにもエッセンシャルオイルが使用されていたことがあり、そのために体調を崩してしまう猫がいました。
この時、体調を崩した猫たちの体内から共通して検出された成分は、ノミ除けや虫よけや、殺菌・消毒などの働きがあるといわれていた「ティーツリー」と呼ばれる植物の成分でした。この成分は犬用の虫よけスプレーなどでもなじみ深いもので、犬では体調に影響した事例はほとんどありません。そのため「犬が大丈夫なら猫もきっと大丈夫」と多くの猫用の商品でも使用されるようになっていったようです。しかしこれが見当違いだったというわけですね。

 

これまで分かっている範囲では、猫に触れさせてはいけないオイルとしてよく知られる「ティーツリー」だけではなく、エッセンシャルオイル(精油)を構成している成分のうち、フェノール類、ケトン類、ピネン、リモネンといった成分が猫に対する毒性が特に高いと言われています。

家族が外出先などでエッセンシャルオイルを使用することは問題ありませんが、猫に触れる前に手を洗うことは意識するようにしてくださいね。

ハーブミックスなら猫に与えられます!

さて、ここまで猫にエッセンシャルオイルを使うことができない理由についてご紹介していきましたが、「猫にとっては植物由来の成分そのものが危険」というわけではないことも知っておいてください。
キャットフードなどには、ハーブやハーブミックス(複数の乾燥したハーブを混ぜたもの)が使用されることがありますが、これらは問題ありません。
というのも、エッセンシャルオイルは先述の通り、大量の植物の成分を濃縮させて作られています。その濃縮率は1/5,000以上ともいわれています。
もともと、植物の香り成分や殺菌作用をもたらす「フィトンチッド」は、植物が自らの身を守るために作られたごく弱い「毒」ですので、濃縮していけば体調に影響を及ぼすのは当然です。
しかし、この成分を濃縮することなく使用すれば、基本的には体調に影響することはないといわれています。

猫はそもそも自然の中で生きてきた動物です。猫の仲間の中には、森の中やジャングルで暮らしているものもいます。そういった動物たちが植物がたくさんある場所でごく普通に暮らせているのは、濃縮されておらず、自然のままの状態の成分であれば体調を崩すことはないからではないでしょうか。
そして、ハーブなどの植物の中には猫の体調管理に役立つ成分を含むものも多くあります。そういった成分を適度に取り入れることが大切です。
体に良いという成分であっても、摂取のし過ぎは良くないということなのでしょうね。

おわりに

今回は、猫が注意が必要といわれるエッセンシャルオイルについて調査してみました。
猫の健康にどのようにしてエッセンシャルオイルの成分が影響するのかを改めて調べてみると、意外にも皮膚などからも成分が浸透していくことが分かりました。
まだまだ猫とエッセンシャルオイルの関係については事例が少なく、分かっていない部分も多くあるようですが、今後研究が進んでいけば「こう使えば猫も安全」ということも出てくるかもしれません。でも、それまでは「猫がいる家ではエッセンシャルオイルは使用しない」、「外出先で使用した場合は必ず猫に触れる前に手を洗う」などを守っておけば安心かなと思います。
また、植物由来の役立つ成分を取り入れたい時は、猫にも使用できるハーブミックスや、そういったハーブを使用したキャットフードを取り入れるなどの方法があります。
適切に使用されたハーブは、猫の健康維持に大いに活躍してくれます。