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2025.12.04

猫の病気のサインを見逃さない!体調変化に気づくための観察ポイントと受診の目安[#獣医師監修]

猫の病気のサインを見逃さない!体調変化に気づくための観察ポイントと受診の目安[#獣医師監修]

季節の変わり目に、人間も体調を崩しやすくなるように、猫も環境の変化に敏感です。ところが、猫は不調を隠す習性があるため、「気づいたときには症状が進んでいた」ということも少なくありません。
「最近食欲がない」「なんだか隠れている時間が長い」――そんな小さな変化が、病気のサインかもしれません。
この記事では、猫と暮らす家族が知っておきたい体調不良の初期サインと、毎日の生活でできる観察ポイントをわかりやすく紹介します。

CAT's TALK

獣医師 菱沼 篤子

【獣医師】菱沼 篤子

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです

猫が突然食べなくなったり、食べる量が減ったりする場合は、何らかの体調不良が隠れている可能性があります。特に48時間以上食欲がない状態が続く場合は、消化器系の疾患や内臓の異常が疑われます。

食事の量が急に減った
→ 好みの変化だけでなく、口腔内の痛みや胃腸の不調が原因のことも。
食べたがるのに食べられない様子
→ 歯や口のトラブル、喉の違和感などが考えられます。

中でも体重の減少は、猫の体調変化を見極めるうえで最もわかりやすい指標です。たとえば、体重4kgの猫が80g減るというのは、体重の2%が失われた状態であり、これは人間で言えば体重50kgの人が1kg減るのと同じ割合に相当します。意識的にダイエットをしたわけではないのに、体重の2%程度(約1kg)減るということは、人間なら自分の不調に思い当たることがあるのではないでしょうか。
10gの変化でも猫にとっては0.25%の体重変化となるため、見逃さないことが理想的です。

猫の体重管理では、10g単位での計測ができる体重計を使い、週に1回程度の定期的な測定を習慣化することが、健康維持のために非常に有効です。わずかな変化を早期に察知することで、病気の予防や早期発見につながります。

週1回以上、10g単位で計測できる体重計で測定する
→ ペット用として販売されている高精度体重計が便利です。

同じ時間・条件で測定し、記録を残す
→ 食後や排泄後など、条件を揃えることで正確な比較ができます。

体重の変化は、腎臓病・肝臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症などの疾患の初期症状として現れることもあるので、変化に敏感になることが大切です。

猫は毛づくろいによって毛玉を吐くことがありますが、嘔吐や下痢が2日以上続く場合や、便秘が3日以上続く場合は注意が必要です。消化器系の疾患や食事の不適合、感染症などが原因となることがあります。

嘔吐が週に2回以上ある
→ 毛玉以外の内容物(未消化の食べ物、液体など)がある場合は要注意。
下痢が2日以上続く、便が水っぽい
→ 腸内環境の乱れやウイルス感染の可能性があります。
便秘で3日以上排便がない
→ 腸の動きが弱っている、異物の誤飲などが原因のことも。

便の状態は、腸内環境や食事の質、ストレスの影響を反映するため、日々のチェックが重要です。特に、便の色や臭い、形状の変化は、内臓の状態を知る手がかりになります。

■猫の便秘は人間より深刻になりやすい理由と受診の目安

猫の便秘は、人間の便秘と比べて深刻化しやすい傾向があります。人間の場合、便秘を感じたら水分や食物繊維を意識的に摂取するなど、自己判断で初期ケアができます。しかし、猫は自分で水分を増やしたり食事を調整することができません。さらに、猫の腸は人間より短く、便が腸に長時間滞在すると腸の動きが低下し、悪循環に陥りやすいという特徴があります。
この状態が続くと、腸が伸びきってしまう「巨大結腸症」という重度の病気に進行することもあり、外科手術が必要になるケースもあります。

□受診の目安
・丸2日以上排便がない場合は便秘の可能性が高い
・3日以上続く場合や、嘔吐・食欲不振・元気がないなどの症状を伴う場合は、すぐに動物病院へ
・トイレで力んでいるのに便が出ない、お腹が張っている、触ると嫌がる場合も要注意

□ポイント
「たかが便秘」と思わず、早めの対応が猫の健康を守るカギです。特に高齢猫や持病のある猫は、便秘が長引くことで体への負担が大きくなり、重い症状につながる可能性があります。早めに対応することで、猫の健康を守ることができます。

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顔まわりの変化は、外から見てわかりやすい病気のサインです。目や耳、口の状態は、感染症や炎症、腫瘍などの兆候として現れることがあります。

目やにが多い、充血している
→ 結膜炎や角膜炎などの可能性があります。
耳を頻繁に掻く、臭いがする
→ 外耳炎や耳ダニなどの感染症が疑われます。
口臭が強くなった、よだれが増えた
→ 歯周病や口内炎、腎臓病の兆候として現れることも。

これらの症状は、猫が不快感を感じているサインでもあります。口腔内のトラブルは食欲不振にもつながるため、早めの対応が望まれます。定期的な歯のチェックや、デンタルケアの習慣も予防に役立ちます。

猫は体調が悪いとき、普段と違う行動をとることがあります。性格や年齢によっても違いはありますが、いつもと違う様子が見られたら注意が必要です。

隠れる時間が増えた、呼んでも出てこない
→ 痛みや不安を感じている可能性があります。
触られるのを嫌がる、攻撃的になる
→ 体のどこかに違和感や痛みがあるかもしれません。
トイレ以外の場所で排泄する
→ 泌尿器系のトラブルやストレスが原因のことも。
鳴き方が変わった、鳴く頻度が増えた
→ 不安や不快感、認知機能の変化などが考えられます。

行動の変化は、猫が言葉の代わりに発しているSOSです。特に高齢猫では、認知機能の低下による行動の変化も見られるため、年齢に応じた観察が必要です。

猫の体調に不安を感じたときは、早めに動物病院を受診することが重要です。症状が軽いうちに相談することで、早期発見・早期治療につながります。

受診前に確認しておくとよいこと:

・症状の出始めた時期と頻度を記録する
・食事・排泄・行動の変化をメモしておく
・便や嘔吐物を持参する(可能な場合)、もしくは写真
・普段の食事内容や生活環境も伝える

受診は、猫にとっても家族にとっても不安な時間になりがちですが、準備を整えて冷静に対応することで、スムーズな診察が可能になります。

猫は体調不良を隠す傾向があるため、日常のちょっとした変化に気づくことが、健康を守る第一歩です。今回紹介した症状は、いずれも病気のサインとして現れることがある重要なポイントです。

・食欲不振(48時間以上)や体重減少
・嘔吐・下痢(2日以上)・便秘(3日以上)
・目・耳・口の異常
・行動の変化
・受診のタイミングと準備

これらを意識して観察することで、猫の健康状態をより深く理解できるようになります。「いつもと違うかも?」と思ったら、迷わず行動することが、猫の健康を守ることにつながります。日々の小さな気づきが、大きな安心につながるのです。