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2024.02.08

猫の糖摂取について知っておきたい基本のこと [#獣医師コラム]

猫の糖摂取について知っておきたい基本のこと [#獣医師コラム]

私たち人間の健康管理において、重要な「糖質」。時には適量を取り入れ、また時に制限が必要になることもあります。猫の健康管理を行っていく際にも、この糖質は意識する必要があります。
でも、だからといって人間と全く同じ考え方で良いのでしょうか?

今回は猫の健康維持を意識した時、糖分をどのように考えるべきなのか、そして注意するべきポイントはないのか、獣医師が分かりやすくご紹介します。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。

「猫は糖分を摂取してはいけない」って本当?

まず、最初に結論を言うと、猫は「糖分を摂取してはいけない」ということはありません。

健康的な猫にとって糖分はほかの栄養と比較して、"優先度が低い"栄養と言えるのかもしれません。
もちろん、猫の食事に含まれる栄養が、極端に偏っていないことが大前提ではありますが、糖分の摂取によって直ちに猫の体調に影響するようなことはありません。

猫の体内では、糖はエネルギー源として利用されますが、人間よりもエネルギーとして活用される量がはるかに少なく、あまり有効活用されることがないため、普段の食事における優先度は低め。
とはいえ、全くメリットがないということはなく、比較的エネルギーに変換されるスピードは速いため、緊急時の栄養補給源としては有用と言えます。

一方で、猫は「糖尿病」になることがあり、人間と同じように糖尿病と診断された猫では食事に含まれる糖質の制限が必要になるケースがあります。

猫が糖尿病になるメカニズム

糖尿病とは、血液中にエネルギーとして消費しきれないほどの量のブドウ糖が溶けている状態が続く病気のこと。血液中にどれくらいのブドウ糖が溶けているかを「血糖値」で表します。
健康的な猫では、血糖値をコントロールするためのホルモン(インスリン)がその都度放出され、血糖値が極端に高い状態が続かないようにコントロールしています。
しかし、何かしらの理由でこのホルモンに反応しなくなる、ホルモンが出ても量が極端に少なかったりして、血糖値に変化が見られなくなり、血液中の糖が吸収できないために血糖値が高いままになると、やがて「糖尿病」になります。

人間と同じように、猫も糖尿病になることがありますが、適切な食事の管理と投薬によるコントロールが大切です。

■猫が糖尿病になるリスクと考えられている要素

・膵炎など膵臓のトラブル
・加齢に伴う機能低下
・遺伝的要因
・体重過多/肥満
・投薬治療の副作用

とくに肥満状態の猫は糖尿病になるリスクが高いことが知られています。
特に中~高齢の去勢したオス猫に多いとされます。

■糖尿病と診断された猫の食事・暮らし

まず、食事に関しては、やはり糖質の制限された療法食を与えることです。
猫は糖分がどれくらい含まれているかは嗜好性に影響しません。また、猫自身にとっても糖質は"優先度が低い"栄養ですから、制限したところで問題ないケースが多いようです。
そのほか、注意するべき要因としては、ストレスが挙げられます。猫はストレスを感じると血糖値は上がるとされているからです。
トイレが汚れている、落ち着いてくつろげる場所がないなど、気づかぬうちに猫にストレスがかかっていないか、チェックしてみてください。
そのほか、膵炎など膵臓の病気、口内炎といった痛みがストレスとなって糖尿病になることもあるようです。

■子猫では、低血糖状態になることも!

子猫は体力を使い過ぎたり、一定時間以上ご飯を食べなかったりすると低血糖状態になる事があります。この時は、意識的に血糖値を上げるために糖分を摂取させる必要があります。
もし可能であればガムシロップやオリゴ糖など粘度がある物が子猫も飲みやすいのですが、なければ砂糖水を作りスポイトなどで少しずつ飲ませることが応急処置になります。

猫にとって適切な糖の量は?

猫の栄養基準を見てみても、糖分の基準は設けられていません。
フードに含まれる糖を含む炭水化物(デンプンや食物繊維なども含む)が35%までなら、無理なく消化できると考えられています。

おまけ:猫が感じる美味しいものとは

まず、哺乳類が味を感じることができるのは、舌の上にある味蕾(みらい)と呼ばれる器官の働きによるものです。
味蕾はさまざまな性質を持つ複数の細胞から構成されていて、一部の細胞は味を刺激として認識する神経細胞として機能しています。
人間では味蕾の数は約10,000~7,000個といわれる一方で、猫の場合は約500ほどといわれています。数にして人間の1/20から1/14ほど。
このことから、猫は味覚を感じる力が弱いといわれているようです。
しかしこの味蕾が少ないからと言って、猫は味覚が鋭くない…とはとても思えません。

過去に行われた実験では、アミノ酸を含む水と全く含まない真水を猫に与えた時には、アミノ酸が含まれている水を好んで飲むことが分かっています。
つまり、猫にとっての「美味しい」には「甘さ」を感じさせる糖分ではなく、アミノ酸がかかわっていそう…ということまでは分かっているのですが、それ以上についてはまだまだ謎だらけなのだそうです。
さらに別の実験では、猫の味蕾には複数のアミノ酸を味として認識する機能があることが分かったのです。
人間では、「グルタミン酸」などのアミノ酸をうま味として認識することができますが、猫も同じようにアミノ酸を「味」として認識しているようです。
お肉や魚のタンパク質を構成するのが、このアミノ酸です。肉食動物である猫は、アミノ酸に対する味蕾だけが発達したため、人間よりも味蕾の数が少ないのかもしれません。

おわりに

今回は猫の健康維持と「糖分」についてご紹介いたしました。

基本的に、猫にとって糖分自体はあまり重要な栄養素ではありません。
ある程度の期間継続して過剰に摂取すれば、糖尿病や肥満になる可能性があります。
成長した健康的な猫にとってはたくさん糖分を摂取させることに大きなメリットもありませんので、与えないほうが無難かなというところです。