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2024.05.09

猫と人間はどこまで互いに理解できているの?最新研究を見てみよう

猫と人間はどこまで互いに理解できているの?最新研究を見てみよう

ミステリアスで魅力的な生き物、猫。
大きな瞳としなやかな身のこなし、そして私たちを翻弄する自由な振る舞いに心つかまれた人が後を絶ちません。

実際に猫と暮らしていると、ときどき「どうしてこんなことをするんだろう?」と思う不思議な行動を見かけることがあります。
それもまた、猫の可愛い部分の一つではあるのですが、猫の意図や気持ちを知りたい…と思ったことがある方は少なくないのでは。

そこで、今回は「猫と人間はどれくらいお互いを理解できているのか」ということに関する最新研究から、分かっていることをまとめてご紹介いたします!

参考文献:

*1 2022「ネコの認知研究の最新動向と今後の展望」Japanese Psychological Review 2022, Vol. 65, No. 3, 295–313,麻布大学 高木佐保

猫は認知能力に優れた生き物!

最新研究では、猫たちが人間とのコミュニケーションでどのような情報を読み取っているのかについて紹介されていました。
それらの実験を通して、"どうやら猫は認知能力に優れた動物らしい"ということが分かっているそうです。

認知機能とは、理解、判断、論理などのさまざまな知的機能のことを指します。
とくに心理学では知覚を中心とした概念となります。心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれますが、これらを包括して認知と呼ばれているそうです。

人間と長く一緒に過ごし、さまざまな仕事に適した品種が古くから誕生するなど、人間との共生にある意味特化した犬と比較して、野生動物としての特長や個性を現代でも維持し続けているとされる猫。
本能の動物というイメージがあった猫たちですが、日常生活のさまざまな面で、犬と同じくらい認知機能を駆使していることが、少しずつ分かってきているのです。

猫の認知機能が少しずつ分かってきた

近年、猫の認知に関する研究で分かった代表的な成果は以下になります。


・猫は、人間の手で指し示す行動に"意図的に"注目することができる(理解)
・猫は、人間の顔の向きや表情、視線の動きから結果を予測して行動している(推論)
・猫は、自分に注目している人間に興味を抱きやすい(知覚)
・猫は、人間の気分の変化を敏感に察知し、行動を変化させる(想像)
・猫は落ち込んでいる人を励まそうとスリスリする(コミュニケーション)
・猫は人間の声を聴き分けることができる(理解)
・猫は自分の名前を呼ぶ声と人間の顔を結び付けて記憶している(理解)
・猫は母猫のニオイを1歳前後まで記憶している(記憶)


ほかにもさまざまな猫の認知機能に関する実験が行われています。
これまでも、「ネコ科」の動物としての研究はされてきたものの、現在進められている研究では"家庭での日常"にスポットを当てたものが中心になってきているようです。
普段、猫たちがどんなことを考え、意図して行動しているのかということに興味を持つ研究者が多くなったのかもしれません。

■ ちょこっとまとめ:「猫の愛情は気まぐれ」ではなかった?

これまで、猫といえば「気まぐれな生き物」というイメージが強かったと思います。でも、近年の研究ではじっくりと周囲を観察し、家族の声色や表情の変化なども読み取りながら行動していることが分かってきています。
そしてそれらの認知機能を駆使して、猫は人間に対して愛情を感じ、信頼してくれていることが科学的に証明されつつあるのです。
また、人間と猫の間で構築される愛情の関係は「親と子ども」「人間と犬」とは異なった形なのではないか、という面で心理学的にも注目の研究対象となっているそうです。
猫の体そのものではなく、猫と私たち人間との関係についての研究からも、目が離せませんね。

猫は嫉妬より「分かる~」と共感する?

嫉妬という感情は、非常に複雑な感情で、複数の感情が重なり合って出て来るものだとされています。
複数の感情を同時に表すというのも、認知機能が発達していないとできないことなのです。
さて、皆さま、猫は嫉妬すると思いますか?

これについて面白い研究結果が紹介されていました。
犬であれば、自分が大好きな飼い主がほかの犬を撫でたり、褒めたりしていると、怒ったり、相手の犬に攻撃的になる、飼い主と相手の犬を引き離そうとする…という行動が見られるそうです。
皆さんもイメージする通りの「嫉妬」だと思います。

さて、同じことを猫にするとどんな反応が見られるでしょうか?
多くの猫が見せた反応は……撫でられている相手の猫をじーっと見る、だったそうです。

犬が嫉妬して相手の犬に攻撃したり、吠え掛かったりした一方で、猫は攻撃的な行動に出ることはほとんどなかったそうです。
嫉妬する代わりに、じっと見つめる。
「これは嫉妬とは真逆の“共感”である可能性も否定できない」と研究者たちは指摘しています。
つまり、猫は「ナデナデされるの気持ちいいよね、分かる~」と思ったり「やっぱうちのママはナデナデ上手だわ~自慢だわ~」と思ったりしている可能性があるというのです。

なんだか猫らしいというか、ちょっと面白い反応ですよね。

おわりに~猫ともっと仲良くなるために

今回は猫の認知機能に関する研究について一部ご紹介しました。
現在も進められている猫たちの研究。
獣医学や動物行動学などの分野だけではなく、人間の心理学側からのアプローチなどもあり、非常に興味深かったです。ついつい、獣医学や動物栄養学の側からの研究に目が行ってしまいがちなのですが、視野を広げることがもっともっと猫と仲良くなるきっかけになるのかもしれませんね。