■猫の「食べムラ」は性格？それとも本能？それとも飽き？

「昨日まであんなに食べてたのに、今日は見向きもしない…」
そんな猫の“偏食”に悩んだことはありませんか？実はそれ、猫の本能や性格、そして“飽き”が関係しているかもしれません。この記事では、猫の食行動を「ネオフィリア（新しいもの好き）」と「ネオフィビア（新しいもの嫌い）」という視点に加え、「食事の飽き」という要素からも深掘りし、猫の食の好みや変化にどう向き合えばよいかをスタッフ猫が調査しました。

ネオフィリアとネオフィビアとは？猫の食行動の基本性質

「ネオフィリア（neophilia）」とは、新しいものに対して好奇心を持ち、積極的に試そうとする傾向のことです。反対に「ネオフィビア（neophobia）」は、新しいものに対して警戒心を持ち、避けようとする傾向を指します。
この2つの性質は、動物行動学では探索行動と回避行動のバランスとして研究されており、特に食行動においては「安全性の判断」と「好奇心の発揮」が密接に関係しています。

猫はこの両方の性質を持っており、個体によってどちらが強く出るかが異なります。偏食もこの性質の延長線上にあると考えられます。

ネオフィリア傾向の猫：好奇心旺盛な食の冒険者

ネオフィリア傾向が強い猫は、新しいフードやおやつに興味津々。こうした猫は、私たちが新しいフードを試す際にも比較的スムーズに受け入れてくれることが多く、食事の幅を広げやすいという利点があります。
この傾向は、探索行動が活発な猫に多く見られ、特に子猫期にさまざまな食材や食感に触れることで育ちやすくなると言われています。

ただし、ネオフィリア傾向の猫は、刺激のない食事に興味を失いやすいという一面もあります。毎日同じ味・同じ食感が続くと、「もう飽きたであります…」とそっぽを向くことも。これは偏食というより、好奇心が満たされないことへの自然な反応とも言えます。
そのため、ネオフィリアの猫には、香りや食感に変化をつけたローテーションや、トッピング・温めなどの工夫が効果的です。
このように、ネオフィリアの猫は「新しいもの好き」だけでなく、「刺激がないと飽きる」という特性も持っているため、食事管理には創意工夫が求められます。

しかし、注意点もあります。頻繁にフードを変えると、腸内環境が安定せず、消化不良や下痢を引き起こすことがあります。また、嗜好性の高いオヤツばかりを好むようになると、栄養バランスが崩れる恐れもあります。
ネオフィリアの猫には、計画的なローテーションや、総合栄養食をベースにした食事管理が大切です。

ネオフィビア傾向の猫：慎重で繊細。食に対しては保守的

ネオフィビア傾向が強い猫は、新しいフードに対して警戒心が強く、なかなか口にしないことがあります。これは本能的な防衛反応であり、決してわがままではありません。
この傾向は、不安傾向が強い猫や、過去に不快な食体験をした猫に多く見られます。特定の匂いや食感に対して強い拒否反応を示すこともあり、私たちが新しいフードを導入する際には慎重な対応が求められます。

対応のコツは以下の通り：

・今までのフードに少しずつ混ぜて慣らす
・温めて香りを立たせる
・静かで安心できる場所で食べさせる

ネオフィビア傾向の猫には、食事のルーティンを守ることが安心感につながるため、急な変更は避け、徐々に慣らしていくことが重要です。

偏食は性格だけじゃない？体調・環境・経験の影響

ネオフィリア・ネオフィビアの傾向に加えて、猫の偏食には体調や環境、過去の経験も大きく関係しています。

・嗅覚・味覚の変化：猫は匂いに非常に敏感。製造ロットの違いや保存状態の変化でも食欲に影響します。
・体調の変化：口内炎、腎臓病、消化器系の不調など、体調不良が原因で食べ物を避けることがあります。
・学習経験：過去に食べたもので体調を崩した記憶があると、その食べ物を避けるようになります（味覚嫌悪学習）。
・環境の変化：食事場所の変更、騒音、同居動物の存在なども、食欲や食べ方に影響します。

これらの要因が複雑に絡み合い、猫の食行動は日々変化します。偏食は、猫が自分の体調や環境に適応しようとする自然な反応とも言えるのです。

食事の「飽き」も原因？猫の嗜好性と変化への対応

猫は同じ味や食感が続くと飽きてしまうことがあります。
特にネオフィリア傾向の猫は、刺激のない食事に興味を失いやすく、偏食に見える行動をとることも。

■飽きへの対策

・総合栄養食をベースに、香りや食感の違うフードをローテーション
・トッピングや温めで香りを引き立てる
・食事の時間や場所に変化を加えて刺激を与える

まとめ：偏食は猫の「個性」と「本能」のあらわれ

猫の偏食行動は、単なる気まぐれではなく、本能的な安全意識・個体の性格・環境や体調・そして飽きが複雑に絡み合った行動です。
「ネオフィリア」「ネオフィビア」「飽き」という視点で見ることで、猫の食行動をより深く理解でき、適切な対応が可能になります。
食事は猫の健康の土台。だからこそ、猫の性格や傾向に合わせた食事管理が、長く元気に過ごすための鍵になります。
偏食に悩んでいる方も、焦らず、猫のペースに寄り添いながら、少しずつ改善していきましょう。