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2025.10.16
猫と人間の違い【食性編】ちょこちょこ食べの理由と狩りの本能[#猫研究所]
■人間と猫の違いシリーズ:vol.2(食性編)
「うちの猫、なんでちょこちょこしか食べないの?」
そんな疑問の背景には、猫という動物が持つ本能的な食性が深く関係しています。猫が一度にたくさん食べず、何度も少しずつ食べるのは、単なる気まぐれではありません。それは、野生時代から受け継がれた狩りの習性と、俊敏さを保つための知恵によるもの。
小さな胃、瞬発力を必要とする狩り、そして1回の食事で得られるわずかなカロリー。猫は、生きるために「ちょこちょこ食べ」を選んできた動物なのです。
この記事では、猫が1日に何度も食事をとる理由や、回数とカロリー、胃のサイズ、そして人間との食性の違いまで、猫の食べ方に隠された本能と健康のヒントを、スタッフ猫たちがわかりやすく解説します。
「人間と猫の違い」シリーズ
vol.1 猫と人間の違い【栄養素編】必要な栄養素とその理由[#猫研究所]
vol.2 猫と人間の違い【食性編】ちょこちょこ食べの理由と狩りの本能[#猫研究所]
vol.3 猫と人間の違い【ストレスへの反応編】生き物としての本能と社会性[#猫研究所]
vol.4 猫と人間の違い【寿命編】どうしてこんなに差があるの?長寿へのヒント[#猫研究所]
vol.5 猫と人間の違い【寿命編②】肉食獣は短命?猫の寿命と食性の関係[#猫研究所]
猫は1日に何度も狩りをする動物
猫は本来、小動物を1日に10〜20回ほど狩る習性を持つ「多頻度狩猟型」の動物です。これは、1回の獲物(ネズミなど)が小さく、1匹あたりのカロリーが約30〜50kcal程度と少ないためです。
4kgの猫が必要とする1日のカロリーは約250〜300kcal。つまり、猫が必要なエネルギーを補うには、最低でも5〜8匹の獲物が必要になります。


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ゴロー
ネズミって、ちっちゃいでありますからね〜。1匹じゃ足りないであります!

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ランラン先生
猫は「小さな獲物を何度も狩る」ことで、必要なエネルギーを得てきたのです。
猫の胃は小さく、消化も早い
猫の胃の容量は、体重4kgで約100〜150ml。人間の胃(約1.5L)と比べると非常に小さく、消化能力も異なります。
猫は野生下で何度も狩りを繰り返す生活をしてきたため、食後すぐに次の狩りに備えて動けるよう、消化に負担をかけない食べ方=少量ずつ食べるスタイルが定着しました。
つまり、猫にとっては「食べる→休む→動く→また食べる」というサイクルが自然で、ちょこちょこ食べは狩り中心の生活リズムに適した食べ方なのです。


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ムー
ちょっと食べて、寝て、またちょっと食べるのが私のスタイルよ。

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クリ
それが猫の自然なリズムだよね。まとめて食べると、気持ち悪くなってオエッてなることあるもん。
もっとカロリーの高い獲物を狙えばいいのでは?と思うかもしれませんが、猫にはそうしない理由があります。
■なぜ猫は高カロリーの獲物を狙わないのか?
猫は俊敏で瞬発力に優れた「待ち伏せ型」のハンター。長時間追いかけるような狩りには向いておらず、小さな獲物を素早く仕留めるスタイルが最も効率的なのです。
また、大型の獲物は反撃してくる可能性があり、怪我のリスクが高まるため、猫にとっては危険。さらに、猫の胃は小さく、一度に大量の食事を消化することができません。小さな獲物をこまめに食べる方が、体に負担が少なく、安定してエネルギーを得られるのです。
このように、猫の体の構造や狩りのスタイル、安全性、消化能力など、すべてが「小さな獲物向き」に進化してきた結果、猫は高カロリーの獲物ではなく、小さな獲物を何度も狩るという戦略を選んできたのです。
猫の俊敏性と空腹の関係
猫は狩りの際、瞬発力と集中力が求められる動物です。満腹状態では動きが鈍くなり、獲物を逃してしまう可能性が高まります。
そのため、猫は「空腹時にこそ狩りをする」という本能を持っており、満腹になるまで食べることを避ける傾向があります。この習性は家庭猫にも残っており、一度にすべてのフードを食べず、時間を空けて少しずつ食べるという行動につながっています。


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ナナ
お腹いっぱいだと、ジャンプのキレが落ちるのよね〜。

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ゴロー
ナナちゃんはいつでもジャンプのキレは悪いであります。
猫と人間の食事スタイルの違い
人間は1日3回の食事が一般的で、1回の食事で多くの栄養を摂取します。これは、胃の容量が大きく、一度に多くの食材を消化できる構造を持っているためです。
一方、猫は胃が小さく、一度に大量の食事を消化するのが苦手な動物です。そのため、猫にとっては「少量ずつ、何度も食べる」スタイルが自然であり、人間のように時間を決めてまとめて食べる食事スタイルは不向きなのです。
さらに、人間は社会的な理由で食事時間が固定されがちですが、猫は自分のリズムで食べることを好むため、時間に縛られることをストレスと感じる場合もあります。
■猫の生活リズムと食事スタイルの関係
猫は本来、早朝や夕方に活発になる「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」の動物です。これは、野生の猫が獲物を狩るのに適した時間帯が、日の出前後や日没前後だったことに由来します。
ただし、家庭猫の場合は、野生のように狩りをする必要がないため、この活動のピークを中心にしながらも、1日の中で何度も短時間の活動と休息を繰り返すようになっています。
つまり、猫の生活リズムは「寝る・動く・食べる・また寝る」というサイクルが数時間単位で何度も繰り返される構造になっているのです。
■活動と休息を繰り返す猫の1日
猫は1日のうち12〜16時間ほどを睡眠に費やすと言われていますが、これは「ずっと寝ている」のではなく、短い活動と休息を交互に繰り返しているということ。このリズムに合わせて、食事も「一度にたくさん」ではなく、少量ずつ何度も食べる方が自然なのです。


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ランラン先生
野生では朝夕が狩りの時間。でも、家庭猫はそのリズムをベースに、もっと自由に動いてるのです。

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ゴロー
ボクちんは昼も夜も関係なく、気が向いたら動くのであります。
■人間の生活に合わせる猫たち
家庭猫は、人間と一緒に暮らすことで、ある程度は人間の生活リズムに影響されます。
たとえば、朝ご飯の時間に合わせて起きたり、夜は静かに過ごしたりする猫も多いです。
しかし、猫の本能的なリズムは完全には変わりません。人間が寝ている深夜や早朝に活動したり、昼間に突然走り回ったりするのは、猫にとって自然なことなのです。
■食事時間のズレとストレス
人間は「朝・昼・晩」と決まった時間に食事をとるのが一般的ですが、猫は自分のリズムで少量ずつ食べることを好みます。そのため、決まった時間にしか食べられない環境は、猫にとってストレスになることもあります。
特に、長時間空腹が続くと胃酸過多や嘔吐の原因になることもあるため、猫の自然なリズムに合わせたスタイルが推奨される場合もあります。


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ランラン先生
猫は、時間じゃなくて「タイミング」で食べるんですよ。

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ムー
気が向いたらちょっと食べたいわ。時間なんて関係ないの。
猫の食性に合わせた食事管理のポイント
猫の食性を理解することは、健康管理にも直結します。猫は自分の気分やタイミングで食べるため、一度に大量のフードを出されても、すぐに全部食べるとは限りません。
しかし、フードが常に大量に置かれていると、気が向いたときに何度も食べてしまい、結果的に食べすぎや肥満につながることがあります。
また、逆に食事の間隔が空きすぎると、胃酸過多による嘔吐やストレスの原因になることも。そのため、猫には少量ずつ、複数回に分けて食事を与えるスタイルが理想的です。
最近では、自動給餌器を使って1日4〜6回に分けて給餌する方法も一般的になってきています。
さらに、猫の年齢や活動量に応じて、フードの種類や給餌タイミングを調整することも重要です。


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ムー
自動給餌器って、便利〜。ボタン押すとカリカリ出てくるの好き。

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ランラン先生
このように賢い子だと、自分で自動給餌器からご飯を出してしまうので注意が必要です。
■狩り風の食事スタイル
猫は本来、獲物を見つけて狩りをし、食べて、休むというサイクルで生活してきました。この「狩り→食べる→休む」という流れは、現代の家庭猫にも形を変えて残っています。
たとえば、家庭猫は獲物を狩る代わりに、オモチャで遊ぶことで狩りの代替行動をとることがあります。
そして、遊び終わったあとにフードを食べに行くという行動は、まさに「狩りの成功後に食事をとる」という自然な流れを再現しているのです。


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ゴロー
ボクちん、ネズミのおもちゃを追いかけたあとにカリカリ食べると、なんか達成感あるであります。

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ランラン先生
それは、狩りの本能が満たされたから。遊びと食事の順番にも意味があるんです。
まとめ:猫の「ちょこちょこ食べ」は本能に基づいた行動
猫がちょこちょこ食べをする理由は、単なる気まぐれではなく、狩りのスタイル・胃の構造・俊敏性の維持など、複数の要因が絡んだ本能的な行動です。
人間とは異なる食性を持つ猫に対しては、その特性を理解したうえで、適切な食事管理を行うことが大切です。
猫の自然なリズムを知ることで、より快適で健康的な食事スタイルを選ぶヒントが見えてきます。それぞれの猫に合った方法で、食事の時間や回数を工夫してみましょう。

