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2025.10.23

猫と人間の違い【ストレスへの反応編】生き物としての本能と社会性[#猫研究所]

猫と人間の違い【ストレスへの反応編】生き物としての本能と社会性[#猫研究所]

■人間と猫の違いシリーズ:vol.3(ストレス編)

猫と人間は、同じ「生き物」でありながら、ストレスの感じ方や反応の仕方には驚くほどの違いがあります。この記事では、猫と人間のストレス反応の違いを、行動・生理・環境適応の観点から、スタッフ猫たちのコメントを交えてわかりやすく解説します。

ストレスとは、「外部からの刺激に対する心身の反応」のこと。生き物が生存するために備えている防御反応の一種です。

■人間の場合

心理的な要因が中心。未来への不安や人間関係など、抽象的な要素がストレスを引き起こします。また、過去の記憶や予測によってストレスが増幅されることもあります。

■猫の場合

環境の変化や縄張りの侵害など、本能的・物理的な要因が主。猫は「今この瞬間」に生きる動物であり、未来への不安よりも現在の安全が最優先です。

人間は社会的動物であり、ストレスの多くは「他者との関係」や「未来への不安」から生じます。

■人間の主なストレス症状

・不眠、食欲不振、頭痛、胃痛
・イライラ、不安、うつ状態
・集中力の低下、仕事のミス
・人間関係のトラブル

言葉で表現できる一方、言葉にできないストレスが身体症状として現れることもあります。

猫は「予測できる環境」を好む動物です。
そのため、縄張りの変化や生活リズムの乱れは、命の危険と直結するほどのストレスになります。

■猫の主なストレス症状

隠れる、動かなくなる:これは「フリーズ反応」。野生では敵に見つからないための防御行動です。
過剰なグルーミング(毛づくろい):セロトニン不足や不安による「転位行動」。本来の目的(狩りや逃避)ができないとき、代替行動として現れます。
攻撃的になる(噛む・引っかく):逃げ場がない場合、攻撃に転じる「ファイト反応」。特に閉鎖空間では顕著です。

他にも、トイレに失敗したり食欲の低下がみられることなどがあります。

DOG's TALK

ムー

ムー

引っ越しは命がけよ。知らない匂い、知らない音…全部が敵に見えるの。

ナナ

ナナ

あたちはトイレの場所が変わる方がよっぽどストレス。落ち着いてできないじゃないの。

猫と人間では、ストレスへの対処法も大きく異なります。

■人間の場合:

・話す、相談する
・趣味や運動で気分転換
・睡眠や食事の改善
・カウンセリングや医療的サポート

■猫の場合:

・安心できる場所に逃げる(隠れる)
・ルーティンを守る(食事・トイレ・睡眠)
・家族との距離感を調整する(甘える・離れる)

対処法人間
安心できる場所に逃げる △(物理的逃避は難しい)
ルーティンを守る △(変化に対応する必要あり)
他者との距離調整 ◎(相談・距離を置く) ◎(甘える・離れる)
言語的表現 ×
医療的サポート △(難しい)

※表がすべて表示されない場合は横スクロールしてください。

猫のストレスを減らすには、環境・行動・関係性の3つの視点が大切です。

■環境面

・隠れ場所や高い場所を用意
・トイレは清潔&静かな場所に
・音や匂いに配慮(掃除機・香水など)

■行動面

・毎日のルーティンを守る
・無理な接触は避ける
・猫じゃらしなどで遊び、狩猟本能を満たす

■関係性

・多頭飼いなら個別の空間を確保
・家族のストレスも猫に伝わるので、穏やかな接し方を

DOG's TALK

ゴロー

ゴロー

ボクちんは、静かにお昼寝できる環境がいいのであります。あとは、ムーちゃんと一緒に眠れれば最高でありますね。

ムー

ムー

私は部屋の奥の隅っこで一人で寝るのが好き。だけど最近、その場所をナナにとられてるの。

ナナ

ナナ

だって、あそこは元々あたちの場所だもん。

ストレスは、猫にも人間にも健康に大きな影響を与えます。

■人間の場合:

・高血圧、糖尿病、過敏性腸症候群(IBS)など、慢性ストレスが生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
・免疫力の低下・睡眠障害・うつ病など、心身両面に影響

■猫の場合:

・ストレスが原因で膀胱炎や消化不良になることがあります。
・長期的なストレスは、免疫力の低下や行動異常につながることも。

■ストレスは免疫力の低下を招き、以下のような疾患の引き金になります。

猫伝染性腹膜炎(FIP):ストレス環境下で発症率が上昇
鼻気管炎(ヘルペスウイルス):再発の原因にストレスが関与
慢性腎不全:ストレスによって急激に悪化するケースあり
特発性膀胱炎:原因不明だが、ストレスが主因とされる。再発率が高く、環境改善が重要

また、ストレスが原因となり食欲が低下することで、脂肪が肝臓に蓄積する「肝リピドーシス」や、ストレスによる水分摂取量の減少や尿の濃縮が影響し、「尿路結石・腎不全」などにかかる場合もあります。

ちなみに…猫と犬のストレス反応の違い

■単独行動と群れ行動が生む、ストレス耐性の差

猫と犬は、どちらも人間と暮らす動物として人気ですが、ストレスへの反応や耐性には大きな違いがあります。これは、彼らの進化的背景・社会性・本能的行動の違いによるものです。

■猫は「環境の変化」に敏感

猫は縄張り意識が強く、自分の空間が守られていることが安心の源です。
そのため、家具の配置換えや来客、掃除機の音など、些細な変化でもストレスを感じやすくなります。

■犬は「社会的な関係性」に敏感

犬は群れで生活する動物で、他者との関係性や指示に従うことで安心感を得る傾向があります。
環境の変化には比較的順応しやすいですが、飼い主との分離や孤独には弱い面も。

・鳴く、吠える(分離不安)
・破壊行動(家具をかじるなど)
・食欲不振・下痢などの身体症状

特徴
環境の変化への敏感さ 高い 中程度
社会性 低い(単独行動) 高い(群れ行動)
ストレスの表現方法 隠れる・毛づくろい・攻撃 鳴く・破壊行動・徘徊
家族との関係性 距離感を調整 密接な関係を好む
ストレス耐性 低め 比較的高め

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DOG's TALK

ランラン先生

ランラン先生

猫は“場所”に安心を求め、犬は“人”に安心を求める。この違いが、ストレス反応の差につながるのです。

猫と人間のストレス反応は、脳の構造・社会性・生存戦略の違いに根ざしています。その違いを理解することで、猫との暮らしはもっと穏やかで、互いにとって心地よいものになります。
猫は「今ここ」の安心を求め、人間は「未来への不安」に悩む。違いがあるからこそ、猫から学べることがたくさんあるのですね。