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2025.10.02

猫と人間の違い【栄養素編】必要な栄養素とその理由[#猫研究所]

猫と人間の違い【栄養素編】必要な栄養素とその理由[#猫研究所]

■人間と猫の違いシリーズ:vol.1(栄養素編)

ときに猫は、まるで私たちの言葉を理解しているかのような仕草を見せ、心を通わせてくれる存在です。そんな猫たちは、かけがえのない家族の一員ですが、忘れてはならないのは、人間とは異なる種族であるという事実です。
猫と人間は、見た目や生活スタイルだけではなく、必要な栄養素に関しても、根本的な違いがあります。この記事では、猫と人間の食性の違いや、猫にとって欠かせない栄養素について、スタッフ猫たちが調べた内容とともに、詳しく解説します。

人間は肉・魚・野菜・穀物など幅広い食材を消化・吸収できる雑食性である一方、猫は「完全な肉食動物」です。狩りで主に小動物を獲る食生活に適応してきた猫は、野菜や草、穀類などの植物性の食材からは必要な栄養素を十分に摂取できません。
猫の消化器官は、肉(タンパク質)を効率よく分解・吸収するように設計されており、炭水化物の消化能力は低めです。そのため、猫にとっては動物性タンパク質と脂肪が主なエネルギー源となります。

人間は、狩猟と採集を組み合わせた生活をしていたため、肉・魚・果物・野菜・穀物など多様な食材を食べる能力を進化させてきました。これにより、環境に応じて柔軟に食生活を変えることができるようになったと考えられています。

DOG's TALK

ゴロー

ゴロー

ボクちん、お肉がいっぱいのウェットフードだとテンション上がるであります!野菜だけのご飯なんて、考えられないであります!

ランラン先生

ランラン先生

それは当然です。私たち猫は肉食動物。植物性の食材だけでは、必要な栄養素が足りないのです。だからこそ、栄養設計されたフードが大切になります。

王子

王子

ボクはカツオの香りがすると、ついお皿に顔を突っ込んでしまうのだ。動物性の力は偉大なのだ!

人間は穀類などに含まれる炭水化物を主要なエネルギー源として活用できますが、猫は肉食動物であり、炭水化物の消化能力が高くありません。それでもキャットフードには、製造上の理由や食物繊維の役割などから、炭水化物が30〜40%程度含まれていることも一般的です。猫にとって炭水化物は補助的な栄養素であり、種類や量に配慮すれば、腸内環境の調整やエネルギー補給に役立つこともあります。特に繁殖期や離乳期、病中・病後などでは、炭水化物から作られる栄養素の《グルコース》の需要が高まるため、炭水化物の摂取が有効になる場合もあります。
炭水化物量は、フードの分析値から「100 −(タンパク質+脂質+灰分+水分)=炭水化物(%)」でおおよそ算出できます。大切なのは、猫の体質やライフステージに合わせて、バランスの取れた食事を選ぶことです。

猫は炭水化物を消化できない、猫に炭水化物は必要ない、といった記事を目にすることがありますが、猫にとって炭水化物は、適量なら消化でき、食物繊維の補給としてなどの役割がある栄養素です。

DOG's TALK

ランラン先生

ランラン先生

炭水化物はゼロじゃなくてもいいのです。でも、私たちの体に合った量と質が大事なんですよ。

ゴロー

ゴロー

お腹の調子を整える食物繊維はありがたいけど、糖分が多すぎると太っちゃうのであります。

ムー

ムー

肉がメインなのは当然だけど、炭水化物も少しなら役に立つのよね。

猫は肉食動物として進化した結果、体内で合成できない栄養素が多く、食事から直接摂取する必要がある栄養素ががあります。

1. タウリン

猫にとって最も重要な必須栄養素のひとつが「タウリン」です。人間は体内でタウリンを合成できますが、猫は合成能力が非常に低いため、食事から直接摂取する必要があります。
タウリンは、猫が狩りで獲る獲物(ネズミ・鳥など)に豊富に含まれているため、野生の猫は毎日の食事から十分な量のタウリンを摂取できていました。そのため、「食べれば足りる」状態が続きました。進化の過程では、使われない機能はエネルギーの無駄とみなされ、徐々に退化していきます。
タウリンを合成する能力は、猫にとって「使わなくても生きていける」ものだったため、酵素の活性が低下し、最終的に合成能力がほぼ失われたと考えられています。

2. アラキドン酸

アラキドン酸は脂肪酸の一種で、炎症反応や免疫機能の調整に関与する重要な成分です。人間はリノール酸(主に植物に含まれる)からアラキドン酸(主に動物に含まれる)を合成できますが、猫はこの変換ができないため、食事から直接摂取する必要があります。
アラキドン酸は動物性の脂肪に多く含まれるので、普段の食事から十分に摂取できていました。そのため、タウリンと同じく「植物性油脂から合成する能力」は不要となり、退化してしまったと考えられています。

「猫が獲物とする小動物に多く含まれるため、合成する能力が退化した」という理由で、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンDも、食事から摂取することが必須となっています。

3. ビタミンA(レチノール)

人間はβカロテン(主に植物に含まれる)からレチノール(主に動物に含まれる)を合成できますが、猫はこの変換能力がほとんどありません。したがって、レチノールという形でのビタミンAを直接摂取する必要があります。

4. ビタミンB3ナイアシン

猫は、トリプトファン(主に植物に含まれる)からビタミンB3(ナイアシン)を合成する能力が低いため、食事から十分な量のビタミンB3(ナイアシン)を摂取する必要があります。

5. ビタミンD

人間は日光を浴びることで皮膚でビタミンDを合成できますが、猫はこの能力がほとんどありません。したがって、食事からビタミンDを摂取する必要があります。

猫は、長い進化の過程で完全な肉食動物としての道を選びました
その結果、狩りによって得られる動物性の食材から、必要な栄養素を直接摂取できるようになり、体内で栄養素を合成する能力の多くを必要としなくなったのです。本来、他の動物が体内で合成できるタウリン・アラキドン酸・ビタミンA(レチノール)・ナイアシンなども、猫は食事から直接摂ることが前提の体に進化しました。
これは、「使わない機能は退化する」という進化の原則に従った結果であり、猫の体は「食べれば足りる」環境に最適化されたと考えられます。

DOG's TALK

ランラン先生

ランラン先生

進化って、便利なようで厳しいのです。食事で摂れるなら、作る力は不要と判断されたのでしょう。

ゴロー

ゴロー

ボクちんたちは狩りのプロだから、必要な栄養ははいつも獲物からもらってたんでありますね。だから、作る必要なんてなかったってわけであります。

ムー

ムー

でも今は、獲物じゃなくてフードの時代。そのフードにお肉含まれる栄養が入ってないと不調になるってことなのよね。

人間が日常的に食べている食材の中には、猫にとって有害または消化できないものが多数存在します。猫は植物由来の毒性成分に対する解毒能力が低いため、以下の食材には注意が必要です。

玉ねぎ、ニンニク:赤血球を破壊し、貧血を引き起こす可能性があります。
チョコレート:テオブロミンという成分が猫にとって毒性を持ちます。
⇒ 肉食獣の猫は「肉だけ食べる」前提で進化してきたため、植物に含まれる毒を分解する力が弱く、玉ねぎやニンニク、チョコレートなどに含まれる成分が、猫の体にとって危険になります。人間なら問題ない量でも、猫の命には関わることになります。

生の魚介類:チアミン(ビタミンB1)を破壊する酵素を含む場合があり、神経障害の原因になることも。
⇒ 一部の生魚に含まれる《チアミナーゼ》という酵素が、ビタミンB1(チアミン)を分解してしまう作用があり、猫が生の魚を頻繁に食べるとチアミン欠乏症になる可能性があります。猫は肉食獣として進化してきましたが、主に哺乳類や鳥類などの小動物を捕食してきたため、魚を常食する環境ではありませんでした。
そのため、魚に含まれる特殊な酵素(チアミナーゼ)への耐性や分解能力を持たないまま進化してきたのです。肉食=すべての動物性食品に強い、というわけではなく、進化の過程で食べてこなかったものには弱いと考えられています。
※加熱した魚介類であれば《チアミナーゼ》の働きは失われるため、猫が食べても問題ありません。

DOG's TALK

ゴロー

ゴロー

ボクちん、チョコレートの匂いは好きでありますが、食べちゃダメって言われたであります。

ナナ

ナナ

玉ねぎなんて、見ただけでイヤよ。体に悪いものは、ちゃんと避けないとね。

王子

王子

ボクは刺身が大好きだけど、生のお魚ばかり食べちゃダメって言われるのは、そういう理由だったんだね。

猫の健康を守るためには、猫の栄養ニーズに合わせて設計された食事を与えることが、もっとも安心で確実な方法のひとつです。市販の総合栄養食は、必要な栄養素がバランスよく含まれており、日々の食事管理に役立ちます。
また、手作り食を選ぶ場合も、猫に必要な栄養素を正しく理解し、専門的な知識に基づいて調整することが大切です。

DOG's TALK

クリ

クリ

人間の食べ物って、香りは魅力的だけど、ボクたちには合わないんだよね。やっぱり猫専用が一番安心。

王子

王子

ボクは王子専用のごはんが欲しいのだ。でも、総合栄養食なら王子にもぴったりなのだ!愛情たっぷりの手作りもうれしいな。だけど、栄養はしっかりチェックしてほしいのだ。

猫と人間では、栄養の必要性が大きく異なります。猫は完全な肉食動物であり、タウリンやアラキドン酸、ビタミンAなど、動物性食品からしか摂取できない栄養素が多数存在します。一方で、人間の食事をそのまま猫に与えることは、栄養バランスの面でリスクがあるため、注意が必要です。

猫の健康を守るためには、猫の栄養ニーズに合わせた食事を選ぶことが大切です。市販の総合栄養食は、必要な栄養素がバランスよく含まれており、日々の食事管理に役立ちます。
また、手作り食を選ぶ場合も、猫に必要な栄養素を正しく理解し、専門的な知識に基づいて調整することが重要です。

猫の性格や好み、行動のパターンは驚くほど多彩です。だからこそ、食事もその子に寄り添った選択の中から最適を探していきましょう。