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2021.11.04

猫のフケの原因と対策は?病院に行くべきか見極めるポイントも解説[#獣医師監修]

猫のフケの原因と対策は?病院に行くべきか見極めるポイントも解説[#獣医師監修]

乾燥してくると、猫の背中あたり白く小さなフケを見つけることがあります。被毛が白っぽい猫では気になりにくいですが、黒っぽい被毛の猫だと目立ってしまい、気になることも。
この猫のフケはなにかの病気のサインなのでしょうか?また、注意するべきポイントはあるのでしょうか?

本日は猫のフケについて、獣医師さんから教えていただきました。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

tamaの獣医さん 菱沼獣医師

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。大型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです。

猫のフケはなぜ出るの?

猫のフケは人間と同じく、皮膚の一番上の層である角質の細胞が剥がれ落ちたものです。角質の細胞はその役割を終えて寿命を迎えると、自然と剥がれ落ちて新しい細胞に入れ替わります。これ自体は皮膚を健康的な状態に維持するためにとても大切なことです。
猫の場合、こまめに毛づくろいをしていますので、フケが出ても毛づくろいによって取り除かれることも多く、また目には見えないほど小さなフケとして出ていることもあります。
ですから、健康的な猫ではフケがあまり気にならないかもしれませんね。

また、フケがみられても多少出ている、という程度であればあまり心配はいりません。空気の乾燥や静電気の刺激が原因でかゆみが生じ、体を掻いているときに少しフケが出てしまう、ということもあります。

一方、私たちが目で見ることができるほど大きなフケがたくさん猫の体に見られるときは、何かしらのトラブルが関係している可能性があります。
次にちょっと気になるな、というフケについてご紹介します。

下記は猫にフケが発生する、主な原因です。

■白癬(はくせん)

白癬(はくせん)とは、「皮膚糸状菌」と呼ばれるカビが皮膚の表面や爪、毛などに感染することで発症する病気です。フケだけではなく、不規則な脱毛や毛の弱さ、皮膚の赤身などが発生した場合、この白癬である可能性も考えられます。

■食事

普段猫が摂取している食事のなかに皮膚の健康を維持する栄養素が欠けている場合、フケが生じる可能性があるのです。特に、オメガ3、オメガ6といった脂肪酸やタンパク質、ビタミンが不足していると、フケが生じやすい傾向にあります。

■ストレス

猫は極度の恐怖やストレスを感じたときに、一時的に大量のフケを出すことがあります。興奮が落ち着けば、フケも出なくなります。猫は興奮したあとに毛づくろいを行うことがありますが、猫の毛づくろいには自分を落ち着かせる効果があるため、毛づくろい中は邪魔をしないようにしましょう。

■乾燥

人間同様、猫の皮膚には角質をはがれにくくするため、角質の間や表面には脂分が存在します。皮膚が乾燥して脂分が不足すると角質がはがれやすくなり、それらがフケとして出てしまうのです。

■加齢

子猫のときは十分な水分があるためフケが発生しにくいですが、加齢に伴って水分が減るため、フケが出やすくなります。高齢な猫のなかには毛づくろいが面倒になってしまう場合もあり、さらに多くのフケが発生しやすくなるのです。

猫のフケが引き起こす可能性のある病気

こちらでは、猫のフケが原因で引き起こす可能性がある病気をご紹介します。

■アレルギー性皮膚炎

猫がアレルギー性皮膚炎を発症する要因としては、食事中のアレルゲンやハウスダスト、ノミ、ダニ、花粉などが挙げられます。アレルギー性皮膚炎を発症するとフケだけではなく、かゆみや湿疹なども出ることがあります。症状がひどくなると抜け毛が見られることもあり、対応策として猫のアレルゲンを特定する、などがあります。
また、かゆみが強い場合は猫にステロイドなどのかゆみ止めが含まれた薬を使うことがあります。

■寄生虫による皮膚炎

うちに来たばかりの子などは、ネコショウセンコウヒゼンダニ、ツメダニ、ネコノミ、ネコハジラミといった、さまざまな寄生虫に感染している可能性も考えられます。たとえば、ネコショウセンコウヒゼンダニに規制された場合、猫は強いかゆみを引き起こされます。ツメダニによるツメダニ症は湿疹を伴う脱毛が見受けられ、ほかにも先述したアレルギー性皮膚炎を発症します。寄生虫による皮膚炎は駆虫薬で治療ができますが、ほかの猫に移ってしまうため、感知するまで隔離しなければなりません。

■真菌による皮膚炎

真菌とはいわゆるカビを指す言葉であり、真菌も猫のフケを発生させる要因のひとつなのです。猫の場合は皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)と呼ばれる皮膚炎が比較的多く見られます。皮膚糸状菌は脱毛やフケが主な症状で、免疫力が低い子猫や高齢の猫がかかりやすい傾向にあります。同居しているほかの動物や人にも映る可能性があるため、こちらも感知するまでは隔離することをおすすめします。

猫のフケを防ぐための予防策と対策

猫のフケを防ぐためには、下記を行いましょう。

・ブラッシング
・清潔にする
・保湿
・生活環境の改善
・食事改善

食事由来でアレルギーやフケが発生している場合は、アレルギーの原因となっている食材を取り除くことで、食事起因のアレルギーを防げます。アレルゲンの特定は、すぐにできるものではないため、まずはこれまであげていたフードのタンパク質源とは異なるフードをあげてみるなどして、アレルゲンとなっている食材に目星をつけていきましょう。
すでに出ているフケを抑えるには、皮膚表面の皮脂が剥がれ落ちないように、猫用の皮膚スプレーなどで保湿をしてあげましょう。

こんな猫のフケには要注意

■猫がかゆがっている、皮膚が赤みを帯びている、脱毛がみられる

猫のフケが気になる時は、毛を掻き分けて周囲の皮膚の状態もチェックしましょう。猫がかゆがっている様子が見られたり、皮膚が赤みがかっていたりするようであれば、皮膚トラブルによってフケが出ている可能性が高いです。
皮膚のトラブルが起きている猫では、耳の中や目の周りが赤っぽくなることが多いので、そういった部分をまずはチェックしてみるのも良いと思います。

猫の皮膚トラブルというと、アレルギーによるもの(アトピー、食物アレルギー)を心配される方も多いですが、それは考えられる理由のひとつです。

そのほかにも、免疫系疾患、細菌による感染症、真菌(カビ)感染、寄生虫(ノミ・ダニ)など、さまざまな原因が考えられます。そのため、かゆみやフケが長引くときには動物病院で相談してみてください。

■全身に広がっている

もしも猫の体全体からフケが出ているように見えたときは、体調を崩して毛づくろいが十分にできていない可能性があるため要注意です。フケが出ているほかにも食欲が低下したり、飲水量が増えた/減った、トイレの回数が増えた/減ったりといった変化が見られないでしょうか?また、ぐったりしていたり、元気がないように見えたりする時間が長くなっていませんか?一度チェックしてみましょう。
また、環境の変化によるストレスや、多頭飼いの場合には落ち着いて毛づくろいができる場所がないという可能性もあります。

■ほかにもこんなことはありませんか?

猫のフケが気になるときには、食事の内容を見直すことも大切です。角質は本来、皮膚の表面を保護するために皮脂や天然の保湿成分、セラミドによって守られています。しかし皮脂の分泌バランスが乱れたり、セラミドを十分に体内で合成することができないと、角質の細胞が刺激を受けて剥がれ落ちやすくなります。
そうなると、普通に暮らしていても静電気やハウスダスト、化学物質などが刺激となり、フケを出しやすくなる可能性があります。

皮脂が適切に分泌され、セラミドも十分に作ることができる状態が理想的ですが、そのためには食事を見直すことも大切です。健康的な皮膚を維持するためには適度なタンパク質、そして脂質が必要になります。
猫の食事の内容をチェックしてみて、オヤツを与えすぎているために栄養バランスの取れたキャットフードをあまり食べていなかったり、手作り食を与えている期間が長くなったりしていないでしょうか。
偏った食事内容を続けていると、タンパク質や脂質が不足してしまい、皮膚のトラブルがみられることもあります。
1日を通して栄養バランスがとれた食事を意識していきたいですね。

tamaの獣医さんからのコメント


猫の背中にフケが出ている、ということに気が付いて心配される方は多いのですが、多くの場合は空気の乾燥などが原因で一時的に起こっていることが多いです。気になるようであれば、冬の暖房を使う期間は部屋の湿度を少し意識してみるのも良いかもしれませんね。
また、定期的なブラッシングも皮膚の血行を良くしてくれますので、皮膚の健康維持には効果的です。抜け毛をそのままにしておくと静電気を帯びやすくなりますので、皮膚の状態をチェックするためにも寒い時期のブラッシングはこまめに行いたいですね。
それから、猫のシャンプーを家庭で行う方もいますが、シャンプーのし過ぎによって皮膚が乾燥してフケが出やすくなることもあります。

猫のフケが気になったら、フケが出ている以外にも何か気になることがないかを確認してください。皮膚の赤みや脱毛、食欲不振などがあれば病気が関係している可能性もあります。適切な治療が必要になりますので、信頼できる獣医師さんにご相談してみてくださいね。

おわりに

本日は猫の背中などにみられることがあるフケについてご紹介しました。猫のフケは多くの場合、あまり心配がないケースも多いようですが、重大な病気のサインが隠れている可能性もあります。
普段の暮らしのなかでも猫の様子を観察し、気になることがあれば相談できるようにしておきたいですね。

 

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