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2025.07.31
2024年に登場した猫の食欲増進剤|キャットフードとの併用と使い方のポイント[#獣医師監修]
猫が病気の治療をしているとき、治療そのものと同じくらい大切なのが「食べる力」です。
しかし、体調の変化や治療の影響で、食欲が落ちてしまう猫は少なくありません。
そんなとき、「少しでも食べてほしい」「栄養を摂って回復につなげたい」という思いを支えてくれるのが、2024年に登場した猫専用の食欲増進剤です。
この薬は、病気の治療中や回復期において、食欲不振が深刻な問題となっている猫に対して、獣医師の判断のもとで処方される医薬品です。
日常的な食べムラに使うものではありませんが、「いざというときに頼れる選択肢がある」ということは、猫と暮らす家族にとって大きな安心につながります。
獣医師監修の下、新しく登場した猫用の食欲増進剤についての情報をまとめました。


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【獣医師】菱沼 篤子
獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです
猫の食欲が落ちる理由とは?
猫の食欲が落ちる原因はさまざまです。以下のような要因が考えられます
・加齢による代謝の低下や嗅覚の鈍化
・口腔内のトラブル(歯周病・口内炎など)
・ストレスや環境の変化
・病気による体調不良(腎臓病・肝臓病・消化器系の疾患など)
食欲が落ちると、必要な栄養が摂れず、体力や免疫力の低下につながるため、早めの対策が重要です。
2024年発売の猫用食欲増進剤とは?
2024年に登場した猫用食欲増進剤は、日本国内で初めて猫専用として承認された医薬品です。
これまでの製品とは異なり、猫の行動特性や、筋肉量の維持にも配慮して設計されている点が大きな特長です。
主なポイントは以下の通りです:
・液体タイプで、直接口に投与するかキャットフードに混ぜて使える
・嗅覚を刺激する香り成分を配合し、食事への興味を引き出す
・消化を助ける成分や胃腸の働きを整える素材を含む
・筋肉量の維持や代謝調整にも関与する可能性がある
・獣医師の診察・処方が必要な医薬品であり、サプリメントとは異なる
脳内の食欲中枢に働きかけることで、自然な「食べたい」という気持ちを引き出す仕組みになっており、臨床試験に基づいた効果と安全性が確認されています。
また、猫は警戒心が強く、苦手な匂いや味には敏感に反応します。
この薬は、猫の嗅覚や食事へのこだわりといった習性を考慮し、無理なく投与できるよう工夫されているのです。
猫の食欲増進剤はどんなときに処方される?
食欲増進剤は、以下のような状況で獣医師により処方されることがあります。
・慢性腎臓病や肝疾患などの持病による食欲不振
・高齢による嗅覚の低下や代謝の変化で食が細くなったとき
・ストレスや環境の変化によって一時的に食欲が落ちたとき
・がんや消化器疾患など、病気の治療中に栄養摂取が必要なとき
・術後や投薬中で、体力回復のために食事量を確保したいとき
食欲不振の原因が不明な場合や、急激な体重減少がある場合は、まず原因の特定が優先されます。そのうえで、補助的に食欲増進剤が処方されることになります。
キャットフードとの併用方法と工夫
食欲増進剤は、キャットフードとの併用が基本です。以下のような使い方が推奨されています:
・ウェットフードに混ぜることで香りが広がりやすくなる
・ドライフードに少量の水分と一緒に加えることで、食感や香りが変化し、食べやすくなる
ただし、フードの種類や猫の好みによって反応が異なるため、少量から試すことが大切です。
食が細い猫と暮らす方へ|療法食への不安と備え
普段から食が細かったり、食事にこだわりの強い猫と暮らしていると、「もし病気になったら、療法食を食べてくれるのかな・・・。」という不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
療法食は、病気の治療や管理に欠かせない栄養設計がされていますが、猫が食べてくれなければ意味がありません。そんなとき、食欲増進剤が選択肢としてあることは、心強い備えになります。
もちろん、すべての猫に効果があるわけではありませんが、「いざというときに使える手段がある」ことを知っておくだけでも、安心感は大きく変わるのではないでしょうか。
日頃から猫の食の傾向を把握し、獣医師と相談しながら準備しておくことで、万が一のときにも落ち着いて対応できるでしょう。
使用時の注意点と相談のすすめ
便利なアイテムではありますが、使い方を誤ると逆効果になることもあります。以下の点に注意しましょう:
・まずは動物病院で相談することが基本
・過剰に使用しないこと
・猫の反応をよく観察する(食後の様子も含めて)
・複数の製品を併用しない
食欲増進剤は、猫の健康状態や体質に合わせて慎重に使うべき医薬品です。
まとめ|食欲増進剤は猫の食欲を支える新しい選択肢
2024年に登場した猫用食欲増進剤は、病気の治療中や回復期において、食欲不振に悩む猫をサポートする新しい選択肢です。
キャットフードとの併用や、日々の工夫と組み合わせることで、猫の健康維持に役立つ可能性があります。
普段から食が細い猫と暮らしている方にとっても、「いざというときに頼れる薬がある」という安心感は大きな支えになります。
猫の気持ちに寄り添いながら、無理なく食事を楽しめる環境を整えていくことが、長く健やかな暮らしにつながるのではないでしょうか。
また、医療は進んでいるので、今後も楽しい猫との暮らしが続くような新薬などが開発されると思います。その際は、コラムで解説させていただきたいと思います。

