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2025.07.03
猫がごはんを食べない原因と対策|食欲不振のチェックポイントと解決法
昨日まで元気に食べていたのに、突然ごはんを食べなくなったり、急に食欲が落ちると「病気では?」「ご飯が合わない?」と不安になるものです。
猫は体調不良を言葉で伝えることができないため、食欲の変化は重要なサインのひとつ。単なる気まぐれではなく、体の不調や環境の変化、ストレスなど、さまざまな原因が隠れている可能性があります。
この記事では、猫の食欲が落ちたときに考えられる主な原因と、それぞれに対する具体的な対策をスタッフ猫の視点を交えながら解説します。猫の「食べない」を見逃さず、早めの対応で健康を守りましょう。
猫の食欲不振の主な原因
猫の食欲が落ちる原因は、大きく分けて以下のようなものがあります。
1. 体調不良・病気
最も注意すべき原因が、病気による食欲不振です。特に以下のような疾患が疑われます:
・口腔内のトラブル(歯周病、口内炎など):痛みで食べられない
・消化器系の不調(胃腸炎、便秘など):吐き気や腹痛で食欲が落ちる
・腎臓病・肝臓病:慢性疾患による倦怠感や吐き気
・感染症(猫風邪、ウイルス性疾患など):発熱や鼻づまりで食欲減退
これらは放置すると命に関わることもあるため、食欲不振が2日以上続く場合は、すぐに動物病院で診察を受けることが重要です。
2. フードの問題
猫の食欲が落ちる背景には、単なる「好み」だけでなく、フードの品質・保存状態・嗅覚刺激など、複数の要因が絡んでいます。
■フードの変更直後の拒否反応
猫は「ネオフォビア(新しいものへの警戒心)」を持つ動物であり、急なフード変更に対して強い拒否反応を示すことがあります。特に、タンパク質源や脂質の種類が変わると、嗅覚・味覚の違和感が生じやすく、食欲低下につながります。
◎対策:新しいフードは7~10日かけて徐々に混ぜて切り替えるのが理想。または、好みによって食欲が低下している場合は、トッピングを使う方法もあります。猫は香りに強く反応する動物なので好物のトッピングを加えることで、食欲を刺激することができます。
■酸化・劣化による嗜好性の低下
キャットフードに含まれる脂質は、空気や光、湿度によって酸化しやすく、酸化臭(油の劣化臭)が猫の嗅覚に不快感を与えます。特に開封後1ヶ月以上経過したドライフードは、嗜好性が著しく低下する可能性があります。
◎対策:
・フードは密閉容器で冷暗所に保存する
・開封後は1ヶ月以内に使い切る
・小分けパックを選ぶことで酸化リスクを減らす
■温度・湿度による風味の変化
高温多湿の環境では、フードの香りが飛びやすく、猫にとって魅力的な香りが失われます。特に夏場は、フードの香りが弱くなり、食欲が落ちる傾向があります。
また、湿度が高いと酸化が進みやすいため、猫が「いつもと違う匂い」と感じて食べなくなることがあります。
◎対策:
・ドライフードの場合は、ぬるま湯を入れてふやかしたり、香りの強いトッピングを加えることで嗜好性を高める工夫が有効
・ウェットフードやスープタイプの場合は、電子レンジで数秒温めることで香りが復活し、食欲を刺激
・冷房の効いた部屋で食事を与えることで嗅覚刺激を保つ
■栄養バランスの偏り
猫は肉食性が強く、特定のアミノ酸(タウリン、アルギニンなど)や脂肪酸(アラキドン酸)を必要とします。猫にとって必須の栄養素(タウリン、アルギニン、アラキドン酸など)が不足すると、体調不良や代謝異常を引き起こし、結果として食欲が落ちることがあります。
◎対策:
・AAFCO基準を満たした総合栄養食を主食としてあげる
■食器や給餌環境の影響
猫はヒゲが食器に触れることを嫌がる(ヒゲ疲れ)ため、食器の形状や高さも食欲に影響します。また、金属製の食器の匂いや反射光を嫌う猫もいます。
◎対策:
・浅くて広い陶器製の食器を使う
・食器の高さを調整して首や関節への負担を減らす
このように、フードの問題は単なる「味の好み」だけでなく、嗅覚・栄養・保存・環境・心理的要因が複雑に絡んでいます。猫の食欲不振を見逃さず、多角的な視点でフードを見直すことが重要です。


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クリ
昨日のごはん、なんか匂いが違った気がするんだよね〜。ちょっとだけ食べたけど、いつもと違ったから残しちゃった。

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ゴロー
ボクちんはいつもと違った味のご飯だと、よりおいしく感じるであります!

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ランラン先生
このように猫の中でも、食事による食欲不振に陥るパターンは異なりますので、しっかり観察することが大切になるでしょう。

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ムー
猫ってホント、気まぐれだから困っちゃうわよね~。
3. 環境の変化・ストレス
猫は環境の変化に敏感な動物です。以下のような要因がストレスとなり、食欲に影響を与えることがあります。
・引っ越しや模様替え
・新しい家族やペットの登場
・騒音や来客
・食器、フードボウルの変化
・家族の不在や生活リズムの変化 など
ストレスが原因の場合は、猫が安心できる空間を整え、落ち着ける環境を作ることが大切です。


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ナナ
最近お部屋の模様替えがあって、なんだか落ち着かないの・・・。それで、いつもの時間にお腹も減らないのよね。
4. 年齢による変化
シニア猫になると、代謝が落ちたり、嗅覚や味覚が鈍くなったりして、食欲が自然と低下することがあります。また、関節痛や歯の衰えなどで、食べること自体が負担になる場合もあります。
年齢に応じたフードの見直しや、食べやすい形状・温度への工夫が必要です。


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ランラン先生
年を重ねると、食べる力も少しずつ変わってくるものです。無理せず、食べやすい工夫が必要となります。
猫の食欲不振時のチェックポイント
猫の食欲が落ちたときは、以下のようなポイントを観察しましょう。
・水は飲んでいるか?
・嘔吐や下痢はないか?
・便の状態は正常か?
・元気や遊ぶ意欲はあるか?
・口の中に異常はないか?(赤み、腫れ、臭いなど)
・フードの匂いに反応するか?
これらを記録しておくと、動物病院での診察時に役立ちます。特に「食べたいけど食べられない」様子が見られる場合は、口腔内の痛みや消化器系などの不調が疑われます。


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王子
僕は、カツオの匂いには絶対反応するけど、反応しないときは本当に具合悪いときなのだ。
猫の食欲が落ちたときの対策
原因に応じて、以下のような対策を試してみましょう。
■フードの工夫
・香りの強いふりかけなどをトッピングする
・ウェットフードやスープタイプに切り替える
・ウェットフードを温めて香りを立たせる(電子レンジで数秒)
・少量ずつ与えて様子を見る
・食器の高さや素材を変える(食べやすさの改善)など


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クリ
温めたごはんって、香りがふわ〜ってして、つい食べちゃうんだよね♪
■環境の見直し
・静かで落ち着ける食事スペースを確保する
・他のペットや人の動きを避ける
・食事時間を一定に保つ
■ストレスケア
・安心できる隠れ場所を作る
・飼い主とのスキンシップを増やす
・遊びや運動で気分転換を促す
■獣医師への相談
食欲不振が2日以上続く場合や、他の症状(嘔吐、下痢、元気がないなど)が見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。早期発見・早期治療が、猫の健康を守る鍵となります。
猫の食欲不振が続く場合、食欲増進剤の使用が検討されることがあります。
食欲増進剤は、猫の食欲不振に対して一時的な改善を期待できる治療法のひとつです。ただし、薬剤によっては副作用が生じる可能性もあるため、食欲低下の程度や猫の体調を考慮したうえで、必ず獣医師に相談のうえ使用することが大切です。
特に、持病を抱えている猫や高齢猫の場合は、薬の選択や投与量に慎重な判断が求められます。自己判断での使用は避け、獣医師の指導のもと、安全かつ適切なケアを行いましょう。


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ムー
2日以上食べないときは、すぐ病院に連れて行ってね。早めの対応が大事なのよ。
まとめ
猫の“食べない”は、体や心からの大切なメッセージ。気まぐれに見えても、そこには必ず理由があります。病気以外の場合は、日々の観察から生まれるちょっとした工夫で、食欲は戻ってくることも多いもの。
「食べない」ことを見逃さず、原因に応じた対策を早めに行うことで、猫の健康を守ることができます。食事は猫の命を支える大切な時間。だからこそ、食欲の変化には敏感に、そしてじっくり向き合っていきましょう。

