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2025.11.20
猫の水分補給を促す方法とおすすめフード~猫たちと学ぶ、飲まない理由と飲ませ方[#猫研究所]
猫は「水をあまり飲まない動物」と言われています。確かに、多くの猫は飲水量が少なく、「うちの猫、水をほとんど飲まない」と感じる方も多いでしょう。
一方で、「うちの子はよく水を飲むから大丈夫」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には飲んでいるように見えても必要量に達していないケースが多く、慢性的な水分不足が腎臓病や尿路疾患など深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。
この記事では、猫が水を飲まない理由を進化的・行動的な観点から深掘りし、効果的な水分補給の方法とおすすめのフードについて詳しく解説します。猫の健康を守るために、まずは「なぜ飲まないのか」を理解することから始めましょう。
猫がお水を飲まない理由とは?
■「飲まない」のではなく、「飲む必要がなかった」という背景
猫が水をあまり飲まないのは、単なる気まぐれではなく、進化的な背景と本能的な習性によるものです。


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ゴロー
ボクちん、水あんまり飲まないであります。でもそれってダメなのでありますか・・・?

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ランラン先生
私たちの祖先は砂漠に住んでいて、水が少ないから、獲物から水分をとって生きていた習性が残っているんです。
だけど、現代の食事ではその習性だとお水が足りない場合もあるんですよ。
1. 体内の水分保持能力が高い
猫は、尿を非常に濃縮して排出する能力を持っています。これは、少ない水分でも体内の老廃物を効率よく排出するための仕組みです。結果として、体が「水を節約する」方向に働くため、喉の渇きを感じにくく、水を飲む頻度が自然と少なくなるのです。
2. 飲み水への警戒心
猫は非常に慎重な動物であり、水の匂いや味、容器の材質、置き場所などに敏感です。水が古くなっていたり、容器が汚れていたりすると、飲むのを避けることがあります。また、静かな場所でないと落ち着いて飲めない猫も多く、環境が水分摂取に影響を与えることがあります。
そして、最大の理由は進化的な背景にあります。
3. 砂漠出身の祖先による進化的特徴
猫の祖先は、北アフリカや中東の乾燥地帯に生息していた「リビアヤマネコ」とされており、水源が乏しい環境で生き延びるために、体内で水分を効率的に利用する能力を進化させてきました。
この祖先たちは、獲物(ネズミや小鳥など)を食べることで、体に必要な水分のほとんどを摂取していました。獲物の体は約70~80%が水分で構成されており、血液や筋肉に豊富な水分が含まれていたため、捕食するだけで水分補給ができたのです。
つまり、砂漠のような水源が乏しい環境でも、食事から十分な水分を得られるため、わざわざ水を飲むという行動そのものが必要なかったのです。
この性質は、現代の家庭猫にも強く残っており、たとえ水が目の前にあっても「飲まなくても平気」と感じてしまうのです。
しかし、ここで問題になるのが現代の食事スタイルです。近年、キャットフードはドライタイプが主流となり、水分含有量はわずか10%程度しかありません。祖先のように獲物から水分を得ることができないため、自然な水分摂取が難しくなり、慢性的な水分不足に陥りやすいのです。
水分不足が引き起こす病気
猫が水を十分に摂取できないと、体内の機能に大きな負担がかかり、さまざまな健康トラブルを引き起こします。
水分は尿の排出や体温調節、代謝などに欠かせないため、不足すると全身に影響が及びます。
特に猫は尿を濃縮する能力が高いため、少ない水分でも排泄できますが、その分、尿の中のミネラルや老廃物の濃度が高くなります。濃い尿は結晶や結石を作りやすく、腎臓や膀胱に負担がかかるため、飲水量が少ない状態が続くと、泌尿器へのリスクが急激に高まります。
■リスクが高まる病気の例
・尿路結石・膀胱炎:濃縮された尿が結晶化しやすくなり、排尿時の痛みや血尿の原因に。
・腎臓病:老廃物の排出が滞り、腎機能に負担がかかる。慢性腎不全は高齢猫に多い病気。
・便秘:腸内の水分不足により、排便が困難になる。
・脱水症状:体温調節や代謝に悪影響を及ぼす。
など。


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ナナ
水分が足りないと、体のいろんなところに負担がかかるのね。

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王子
僕は、カツオ食べたいから健康じゃないと困るのだ。水分、大事なんだな・・・。
猫の水分補給を促すために(ウェットフードの活用法)
猫の水分摂取を促す最も効果的な方法のひとつが、食事からの水分補給です。
なぜなら、猫は本能的に「食事から水分を得る」習性を持っており、飲み水よりも食事に含まれる水分を自然に摂取しやすいからです。特に、現代のキャットフードはドライタイプが主流で、水分含有量はわずか約10%しかありません。
そのため、食事に水分を加える工夫は、猫の健康維持にとても有効です。
具体的には、次のような方法があります。
・ウェットフード:水分含有量が約70~80%と高く、食事と同時に水分補給が可能。
・スープ仕立てのフードやトッピング:ドライフードに水分を加えることで、自然に摂取量を増やせる。
・手作りスープの追加:味付け前の鶏肉や魚の煮汁を少量加えることで、香りが立ち、食欲と水分摂取を同時に促進


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ムー
スープ仕立てのご飯・・・。それって最高ね!おかわりしたい〜!

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ゴロー
香りがいいと、つい食べちゃうでありますよね~。それで水分もとれるなんて一石二鳥であります!
■その他にもできる水分補給を促す工夫
猫の飲水量を増やすためには、日常のちょっとした配慮も効果的です。
・水が流れる給水器を使う
動きのある水を好む猫は多く、循環式の給水器は興味を引きやすく、飲水量アップにつながります。
・寒い場所にお水を置かない
冷たい水は猫が嫌がることがあります。暖かい部屋に置くことで、飲みやすくなります。
・フードとお水は離して設置する
食事の近くに水があると、匂いが混ざって嫌がる猫もいます。少し離れた場所に置くと安心して飲めます。
・ぬるま湯を試す
冬場や寒い時期は、常温より少し温かいお湯を用意すると飲みやすくなることがあります。
・複数の水飲み場を設置する
家の中に1か所だけでなく、複数の場所に水を置くと、猫が気づいたときに飲みやすくなります。
・器の材質を変える
陶器やガラスなど、匂いがつきにくい素材を選ぶと、猫が安心して飲めます。プラスチックは匂いが残りやすいので避けるのが無難です。
・器の形や深さを工夫する
ヒゲが当たるのを嫌がる猫もいるので、浅めで広い器に変えると飲みやすくなります。
・水をこまめに交換する
新鮮な水を好む猫は多いので、1日数回取り替えることが理想です。
・水に香りをつける
粉ミルクをふりかけたり、鶏肉や魚の煮汁を少量加えると、香りで興味を引きやすくなります。
・氷を浮かべる
夏場は氷を入れると遊びながら飲む猫もいます。
・高さを調整する
床に置くより、少し高い位置に置くと飲みやすい猫もいます。
水分摂取量の目安と管理方法
猫の水分摂取量は、1日に必要とするカロリー(DER)とほぼ等しいとされています。例えば、4kgの猫であれば1日約238mlの水分が必要です。体重別のDERを算出したので、以下の表を参考にしてください。
避妊去勢をした成猫が1日に必要とするカロリーと水分量(体重別)
| 体重 | 2kg | 3kg | 4kg | 5kg | 6kg | 7kg | 8kg | 9kg | 10kg |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| カロリー | 141kcal | 191kcal | 238kcal | 281kcal | 322kcal | 361kcal | 400kcal | 436kcal | 472kcal |
| 水分量 | 141ml | 191ml | 238ml | 281ml | 322ml | 361ml | 400ml | 436ml | 472ml |
※横スクロールで体重10kgまでの猫が1日に必要とする水分量の目安がご確認いただけます。
※さまざまな条件によって必要な水分量は変わりますので、あくまで目安です。
・ウェットフードの水分も含めて計算(tamaでは、ウェットフードの商品ページに摂取できる水分量の目安を記載しています)
・飲水量を記録する:給水器の目盛りや専用アプリを使って管理する方法もおすすめ
・季節や体調に応じて調整:夏場や病気のときは、より多くの水分が必要になることがあります


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ゴロー
猫の体重に合わせて、必要な水分量を知っておくと安心でありますね。

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ナナ
あたち、レディーだから体重は秘密だけど、だいたい220mlくらい飲まなきゃなの。結構多いのね。飲めるかな?

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ランラン先生
(逆算するとナナちゃんの体重は3kg台後半ってところですね・・・。)
水分はしっかり摂らなければならないので、お水をゴクゴク飲めそうになければ、ウェットフードを準備してもらうなど、ご家族に協力してもらいましょう。
まとめ
猫が水をあまり飲まないのは、祖先の生態に由来する進化的な特徴と、猫特有の行動的な習性によるものです。
現代の室内飼育環境では、自然な狩りによる水分摂取ができないため、私たちが意識的に水分補給をサポートする必要があります。
給水器の見直し、食事からの水分補給、環境の整備など、できることはたくさんあります。特に、ドライフード中心の食生活では水分不足が深刻になりやすいため、ウェットフードやスープ仕立ての食事を取り入れるなど、意識的な工夫が欠かせません。
猫の健康を守るために、まずは「なぜ飲まないのか」を理解し、その子に合った方法で水分摂取をサポートしていきましょう。
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