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2026.06.25
【猫の医療最前線】猫の食欲増進剤(エル―ラ)|実際に使ってみた変化と併用のポイント[#獣医師監修]
猫の病気の治療をしているとき、治療そのものと同じくらい大切なのが「食べる力」です。
しかし、体調の変化や治療の影響で、食欲が落ちてしまう猫は少なくありません。
そんなとき、「少しでも食べてほしい」「栄養を摂って回復につなげたい」という思いを支えてくれるのが、2024年に登場した猫専用の食欲増進剤「エルーラ(Elura)」です。
この薬は、病気の治療中や回復期において、食欲不振が深刻な問題となっている猫に対して、獣医師の判断のもとで処方される動物用医薬品です。
日常的な食べムラに使うものではありませんが、「いざというときに頼れる選択肢がある」ということは、猫と暮らす家族にとって大きな安心につながります。
このエルーラの特徴と使い方、そして実際に使用して感じた変化について、整理していきます。
■最新の研究や話題から猫の医療をわかりやすく紹介するシリーズ。猫の医療最前線シリーズはこちら


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【獣医師】菱沼 篤子
獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです
猫の食欲が落ちる理由とは?
猫の食欲が低下する背景には、さまざまな要因があります。
・加齢による嗅覚や代謝の変化
・口腔トラブル(歯周病・口内炎など)
・環境の変化やストレス
・慢性疾患(腎臓病・肝疾患・消化器疾患など)
食欲が落ちると、必要な栄養が摂れず、体力や免疫力の低下につながるため、早めの対策が重要です。
2024年発売の猫用食欲増進剤「エルーラ」とは?
エルーラは、日本国内で承認された猫専用の食欲増進剤(動物用医薬品)です。
これまでの製品とは異なり、猫の行動特性や、筋肉量の維持にも配慮して設計されている点が大きな特長です。
主なポイントは以下の通りです:
・液体タイプで、直接口に投与するかキャットフードに混ぜて使える
・嗅覚を刺激する香り成分を配合し、食事への興味を引き出す
・消化を助ける成分や胃腸の働きを整える素材を含む
・筋肉量の維持や代謝調整にも関与する可能性がある
・獣医師の診察・処方が必要な医薬品であり、サプリメントとは異なる
脳内の食欲中枢に働きかけることで、自然な「食べたい」という気持ちを引き出す仕組みになっており、臨床試験に基づいた効果と安全性が確認されています。
また、猫は警戒心が強く、苦手な匂いや味には敏感に反応します。
この薬は、猫の嗅覚や食事へのこだわりといった習性を考慮し、無理なく投与できるよう工夫されているのです。
エルーラはどんなときに処方される?
食欲増進剤は、以下のような状況で獣医師により処方されることがあります。
・慢性腎臓病や肝疾患などの持病による食欲不振
・高齢による嗅覚の低下や代謝の変化で食が細くなったとき
・ストレスや環境の変化によって一時的に食欲が落ちたとき
・がんや消化器疾患など、病気の治療中に栄養摂取が必要なとき
・術後や投薬中で、体力回復のために食事量を確保したいとき
食欲不振の原因が不明な場合や、急激な体重減少がある場合は、まず原因の特定が優先されます。そのうえで、補助的に食欲増進剤が処方されることになります。
実際に使って感じた変化と注意点
実は私自身の猫にも、体調を崩したタイミングで、獣医師の判断のもとエルーラを使用したことがあります。
使用前は「本当に食べるようになるのか」「無理やり食べさせることにならないか」という不安がありました。
実際に感じた変化として印象的だったのは、食べる行動のきっかけが戻ることでした。
具体的には:
・フードのにおいを確認するようになる
・少量でも口にしてみる回数が増える
・食事への反応そのものが戻る
一方で、いわゆる「急にたくさん食べるようになる」というよりは、興味や行動がじわっと戻る感覚に近い印象でした。
■実感した重要ポイント
実際に使ってみて最も強く感じたのは「薬だけで完結するものではない」という点です。
同時に行っていたこととして:
・ウェットフードやピューレタイプのオヤツ中心に切り替え
・ウェットフードやピューレを鼻先につけてあげて、舐めることを促す
・少量を複数回に分ける
といった工夫を組み合わせていました。
その結果として、食欲増進剤は「食べるスイッチを入れる役割」食事や環境が「実際の摂取量を支える役割」という関係であると感じました。
また、非常に強いバニラのような香りがするので、お口に直接投与する必要があるかもしれません。エル―ラはべたつきがあるので投与後はしっかりお口の周りを拭いてあげましょう。
■注意したい点(重要)
・すべての猫で同じ反応が出るわけではない
・体調や原因によって効果の程度は変わる
・過剰な期待は禁物
そして何より、医薬品のため、必ず獣医師の診断と管理のもとで使用することが前提です。
食が細い猫と暮らす方へ|備えとしての考え方

普段から食が細かったり、食事にこだわりの強い猫と暮らしていると、「もし病気になったら、療法食を食べてくれるのかな・・・。」という不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
療法食は、病気の治療や管理に欠かせない栄養設計がされていますが、猫が食べてくれなければ意味がありません。そんなとき、食欲増進剤が選択肢としてあることは、心強い備えになります。
もちろん、すべての猫に効果があるわけではありませんが、「いざというときに使える手段がある」ことを知っておくだけでも、安心感は大きく変わるのではないでしょうか。
日頃から猫の食の傾向を把握し、獣医師と相談しながら準備しておくことで、万が一のときにも落ち着いて対応できるでしょう。
使用時の注意点と相談のすすめ
便利なアイテムではありますが、副作用が出る場合があったり、疾患によっては使用できない場合もあるので、必ず獣医師さんに相談をして処方してもらいましょう。
・まずは動物病院で相談することが基本
・過剰に使用しないこと
・猫の反応をよく観察する(食後の様子も含めて)
・複数の製品を併用しない
食欲増進剤は、猫の健康状態や体質に合わせて慎重に使うべき医薬品です。
まとめ|エルーラは「食べるきっかけ」を支える選択肢
エルーラは、「これを使えば必ず食べるようになる」薬ではありません。ただ、実際に使ってみて感じたのは、食べない状態から抜け出すきっかけになることがあるという点でした。
猫の食欲は、体調や環境、フード、ストレスなど、いくつもの要素が重なって変化します。だからこそ、薬だけに頼るのではなく、食事や環境と一緒に整えていくことで、少しずつ良い方向に向かうケースもあるのかもしれません。
2024年に登場した猫用食欲増進剤のエル―ラは、病気の治療中や回復期において、食欲不振に悩む猫を支える新しい選択肢です。
キャットフードとの併用や日々の工夫と組み合わせながら、その時の状態に合わせて取り入れていくことが、無理のないサポートにつながります。普段から食が細い猫と暮らしている方にとっても、「いざというときに頼れる手段がある」という安心感は、大きな支えになるはずです。
猫のペースに合わせながら、無理なく食事を楽しめる環境を整えていくこと。その積み重ねが、長く健やかな暮らしにつながっていくのかもしれません。
医療は少しずつ進んでいます。これからも猫との暮らしを支える新しい選択肢が増えていくかもしれません。その際には、またコラムでご紹介していきたいと思います。

