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2026.06.04

【獣医師さんに聞いてみた】猫の腎臓を守るには?リン・水分・体重から見直す日々のケア

【獣医師さんに聞いてみた】猫の腎臓を守るには?リン・水分・体重から見直す日々のケア

「なんとなく元気がないかも」「食べ方が少し変わったかも」と、はっきりしない変化に気づくことはないでしょうか。こうした変化の背景にはさまざまな要因がありますが、猫の病気の中でもよく知られている腎臓の不調も、こうした変化のひとつとして、気づきにくいかたちで現れることがあります。
腎臓は、体の中の老廃物を排出し、水分のバランスを保つなど、重要な役割を担っている一方で、変化が表に出にくい臓器でもあります。さらに、腎臓病は「これをすれば防げる」と言い切れるものではなく、さまざまな要因が重なりながら、時間をかけて進行していくとされています。
だからこそ大切なのは、特別な対策を一つ選ぶことではなく、日々の暮らしの中で負担を減らしていくこと。
では、具体的にどんなことに気を付ければいいのか。リン・水分・体重を軸にしながら、定期検査や日常ケアも含めて、腎臓と向き合うためのポイントを獣医師さんに聞いてみました。

■猫の健康や体調に関する疑問を、獣医師の視点から紐解いていくシリーズ。獣医師さんに聞いてみたシリーズはこちら

CAT's TALK

獣医師 菱沼 篤子

【獣医師】菱沼 篤子

獣医学部を卒業後、動物病院での臨床・栄養指導を経験した後に公的機関で獣医師として勤務。現在はtamaのアドバイザー、商品開発などに携わる。中型犬、小型犬と一緒に暮らしていますが、猫のことも大好きです

腎臓病は、加齢、体質、食事内容、生活環境など、ひとつではない要因が関わって進行していくと考えられています。
そのため、「これをすれば防げる」といった明確な対策があるわけではありません。さらに、腎臓はある程度機能が落ちるまで目立った変化が出にくく、気づいたときには進行していることも少なくないといわれています。
こうした特徴から、猫にとっての腎臓病は「防ぐ」というよりも、できるだけ負担をかけないように日々を整えながら、長く付き合っていく疾患と捉えるのが自然です。

腎臓は、体の中の老廃物を尿として排出したり、水分バランスを保ったりする役割を担っています。
ただしこの臓器は予備能力が高く、ある程度機能が低下しても、すぐには表面化しません。
そのため初期段階では、

・なんとなく元気がない
・食事量にわずかな変化がある
・水を飲む量が少し変わった気がする

といった、はっきりしない変化しか見られないことも多いのです。
だからこそ、「異常を見つける」というよりも、日頃から状態を知っておくことが重要になります。

腎臓への負担をゼロにすることは難しくても、日々の中で意識できるポイントはいくつかあります。
特に大きな軸となるのが、食事・水分・体重の3つです。

■リンを意識した食事設計

リンは体に必要な栄養素ですが、過剰になると腎臓への負担につながると考えられています。一般的なキャットフードでは、リンはおおよそ0.5〜1.2%程度(DM値)で設計されており、シニア期にはその中でも、やや控えめな設計(目安として0.7〜0.9%前後)のフードが選ばれることもあります。
ただし「〇%以下にすればよい」といった明確な基準があるわけではなく、重要なのは年齢や状態に合わせてバランスを整えることです。極端に制限するのではなく、体重や食べる量を保ちながら、無理なく続けられる食事を選ぶことが現実的な対応といえます。

■水分をとれる環境づくり

猫はもともと水分摂取量が少ない傾向があります。そのため、水分を「飲ませる」のではなく、自然と摂れる環境を整えることが大切です。
腎臓は、体内で生じた老廃物を尿として排出する役割を担っていますが、水分が不足すると尿が濃縮され、老廃物が体内にとどまりやすくなったり、腎臓への負担が高まる可能性があります。

・ウェットフードを取り入れる
・水の設置場所を増やす
・ぬるま湯を加える

といった工夫は、腎臓の負担をやわらげる一助になります。

■体重を維持する(痩せさせない)

体重を維持することは、直接的に腎臓病の予防につながるわけではありませんが、体に余計な負担をかけないための大切な前提のひとつです。
食事量が不足した状態が続くと、必要な栄養が行き渡らず、全身の機能が少しずつ低下しやすくなります。そうした状態は、腎臓にも無理をかける要因のひとつになります。
また「腎臓のために」と食事を制限しすぎてしまい、結果として食べられるものや量が減り、体重が落ちてしまうケースも避けたいポイントです。
安定して食べられ、体重が維持できている状態を保つことが、結果的に腎臓に負担をかけにくいコンディションにつながります。

■定期的な健康チェックで早期に気づく

腎臓の変化は、見た目だけでは把握が難しいことが多く、血液検査や尿検査で初めて分かるケースもあります。
そのため、変化が出てからではなく、変化を捉えるために検査を受けるという視点が大切です。

■ 歯周ケア|慢性的な炎症を持ち込まない

口腔内のトラブルは慢性的な炎症につながり、全身の状態に影響を及ぼす可能性が指摘されています。炎症の積み重ねは体への負担となるため、結果として腎臓への影響も無視できないと考えられています。

■腸内環境|全身のコンディションとして考える

腸内環境と腎臓の関係については、いわゆる「腸腎連関(ちょうじんれんかん)」として研究が進んでいる分野です。
腸内細菌は老廃物のもとになる物質の生成に関わっており、その一部は腎臓から排出されるため、腸内環境の状態が腎臓の負担に影響する可能性が指摘されています。
腸内環境を整えることが直接的な予防につながるとまでは言い切れませんが、腸内で生じた老廃物の一部は腎臓で処理されるため、 腸内環境の状態が腎臓の負担に影響する可能性は無視できないと考えられています。
こうした背景から、腸内環境は腎臓と切り離して考えるのではなく、 全身のコンディションの一部として捉えてサポートしましょう。

腎臓病に対して「これだけやれば大丈夫」という方法はありません。
しかし、それは同時に、日々の小さな工夫が無意味だということでもありません。
リン・水分・体重という基本に加え、検査や日常ケアを無理のない範囲で積み重ねていくこと。
その継続が、結果として腎臓への負担を減らすことにつながります。

腎臓病は、気づかないうちに進行していくことが多く、完全に防ぐことが難しい疾患です。
それでも、日々の食事、水分、体重といった基本を整えること、そして小さな変化に気づける環境をつくることは、確実に意味を持ちます。
特別なことをするよりも、無理なく続けられる範囲で負担を減らしていくこと。その積み重ねが、腎臓と長く付き合っていくための、もっとも現実的な選択といえます。