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2020.03.05
猫って耳も素晴らしい!キュートなだけじゃない猫の耳の機能美をご紹介《cat academy第4回》
私たちと一緒に暮らす猫たち。毎日見ていても飽きないくらい、全身の至るところが可愛らしく、魅力的ですよね。まるで私たちを魅了するために生まれてきたような生き物、猫。ですが、そんな猫の体のパーツひとつひとつを見てみると「あれ?」と気になることはありませんか?
「なんでこんな形なんだろう?」「これはなんのためについてるの?」など、猫の身体にまつわるちょっとした謎(にゃぞ)について調査してみました。
今回取り上げる謎(にゃぞ)は「猫の耳」についてです。
第1の謎(にゃぞ)猫の耳のアレに名前はあるの?
猫の耳は可愛いだけではなく、とっても機能的。そんな機能が盛りだくさんの猫の耳の部位の正式な呼び名と機能を知れば、あなたも猫耳マスターになれるかも。
<猫の耳の中の毛>
多くの猫の耳の中からは、ひげのような少し硬めの毛が外に向かって生えています。これは大きな猫の耳に異物や虫が入り込むことを防ぐために生えています。犬とは違い、猫の耳の掃除や毛抜きなどのお手入れは基本的には必要ありませんので、あまりいじらないでおく方が良いと思います。
もちろん、耳からイヤなニオイがしたり、耳の中で炎症を起こしてしまっている場合など、手入れが必要なときは獣医師さんに相談したうえで、治療を行っていきましょう。
ちなみに、猫の耳の毛のことは英語で「taft(タフト)」と呼びます。
<猫の耳の先の毛>
一部の猫には耳の先端、最も高い位置に長い飾り毛が付いています。これはリンクスティップ(lynx tips)といいます。lynx=オオヤマネコという意味なのですが、オオヤマネコ以外にもカラカルやボブキャットなどの野生の猫の仲間にみられる特徴です。
私たちの身近にいる猫では長毛で大型になるメインクーンや、メインクーンの血を引く猫にはリンクスティップが見られます。これらの身近にいる猫たちにリンクスティップが見られるからといって、ヤマネコの血が入っている…とは限らないようです。
ただ、猫のチャームポイントとして魅力的ですよね。オシャレ(?)にもみえますね。
第2の謎(にゃぞ)猫の耳の多機能さについて
私たち人間にとって耳と言えば、物音を聞くための器官ですが、とってもハイスペックな猫の耳は物音を聞くだけにとどまらず、さまざまな役割を持っています。
■猫の耳はアンテナでもある
猫の感覚器(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の中でも最も優れた能力を持っているのが、耳だといわれています。犬が人間の数万倍もの能力を持っている嗅覚を頼りにしていることは良く知られていますが、猫の聴覚は人間と比べてどれくらい優れているのでしょうか?
猫は、様々な種類の音を聞き分ける能力に優れているといわれていて、音の周波数を表すヘルツで表すと、認識できる音の範囲は人間の約5倍といわれています。これはもちろん、優秀なハンターである猫にとってはとても大切なこと。
さらに猫の耳と言えば、円錐(えんすい)を縦に半分にしたような三角形が思い浮かびますが、これも非常に音を集めるのに優れた構造なのだそうです。
この集音性に加えて左右の耳を器用に動かすことで、猫は音の反射を利用して物の位置や距離までを知ることが出来るのだとか。
高性能なアンテナであり、見えない場所を音波で探るソナー(船などで音波を活用し、海底の障害物などの距離や大きさを計測する機械)のような機能も持っているのが、猫の耳なんですね。
人間が何千年もかけて開発した機械と同じ働きをする耳を、生まれながらに持っている猫って、やっぱり不思議で素晴らしいです。
■猫の耳は放熱器官でもある
さて、猫の祖先が砂漠などの暖かい地域からやってきたことをご存じの方も多いと思います。とっても暑い場所では、動物たちは当然ながら少しでも熱を逃がそうと進化してきました。その際に進化してきたのが、耳というワケ。
砂漠などの暑い地域で暮らす動物は耳を大きくすることで表面積を広げ、体にこもった熱を放出しようとしてきました。猫の先祖と同じく砂漠で暮らしているフェネックギツネなどもとっても大きな耳をしていますよね。
この頃の名残で、猫の耳は今でも放熱器官としての役割を持っています。暑い時には、人間では汗をかくことで、犬は口で息をすることで体温を調節していますが、猫は耳からの放熱でも体温を調節していると考えられているのだそうです。
■ 補足:暑い地域にルーツを持つ猫と寒い地域にルーツを持つ猫
猫の仲間は砂漠地帯から世界中に広がっていき、それぞれの地域の暮らしに適応してきたと考えられています。今ではさまざまな姿かたちの猫がみられますが、一般的に寒い地域にルーツを持つ猫は体が大きく、耳が小さくなり、暑い地域にルーツを持つ猫は体はスリムで耳が大きくなる、といわれています。
これは猫に限った話ではなく、大きな体に小さな耳を持つ雪原に暮らすホッキョクギツネと、小さな体に大きな耳を持つ砂漠のフェネックギツネの比較でもわかるように、哺乳類全体にみられる傾向なのだそうです。
この法則は、ベルクマン・アレンの法則といわれています。
今ではいろいろな特徴を持つ猫がいるので、一概には言えないと思いますが、猫のルーツを想像する際に参考にしてみると面白いことが分かるかもしれません。
■猫の耳は感情表現もしてくれる
猫の耳の大切な役割としては、猫の感情表現がありますよね。猫が怒ったり、不機嫌な時を表す言葉として「イカ耳」「ヒコーキ耳」なんてものがあります。これは猫が耳を後ろにぺたっと倒している時は怒りを表している、ということから来ています。
また、興味があるものや気になるものには耳をそちらに向けますが、これも猫たちは自慢の鋭い聴覚を活用して、少しでも多くの情報を得ようとしているからだと考えられます。
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猫と暮らすようになってから、猫は耳だけで返事をすることを知って、なんだかちょっぴり感動したのを覚えています。名前を呼んだ時、(窓の外に鳥がいて目が離せなかったり、睡眠中などの理由で)すぐに猫がこちらに寄って来ることができなくても、耳だけはちゃんと呼んだ声の方を向けていることが多いかと思います。
「今ちょっと手が離せないんだけど、聞いてるよ」という猫なりの優しさを感じさせてくれる耳が、私は大好きです。
第3の謎(にゃぞ)猫の耳の根本が裂けているのはなぜ?
初めての猫と暮らし始めた頃、猫の体をくまなく眺めている時にとあることに気が付きました。
「猫の耳の生え際、根本の部分の皮膚がまるで二枚に分かれているかのように裂けている…!?」
特に血が出ていたり、猫が痛がっている様子も見られないのですが、皮膚から毛皮が剥がれてしまっているかのような状態に驚いたものです。
でも、色々な猫の耳を観察している内に、「これって普通なんだ」と気が付いたのですが、これも実は猫の耳が機能的だからこその構造のようです。
猫の耳は優れたアンテナなので、さまざまな情報を得るためにできるだけ可動域は大きい方が良いと考えられます。そのため、猫は大きな耳を前、後ろ、左右と動かすのですが、その時のために耳の可動に合わせてこの根本の皮膚の襞(ひだ)があるようなのです。いわゆる、遊びのためのスペースというワケ。この襞(ひだ)があるからこそ、さまざまな向きに動かすことが出来るんですね。
ですから、猫の耳の根本が裂けているように見えても、猫が気にしたり、出血していたりしない限りは通常です。裂けているように見える猫の耳の根本ですが、猫にとっては便利な機能のひとつなんですね。
おわりに
猫の耳には本当に素晴らしい機能がたくさん取り入れられていることが分かりました。猫は可愛いだけではなく、非常に優れた能力を持っている動物です。
私たち人間の技術では追いつくことが出来ない能力もたくさんあるにも関わらず、私たち人間と一緒に過ごして笑顔にしてくれたり、癒してくれたりもするのです。
そのキュートさについつい忘れてしまいがちですが「本当はスゴい」猫の耳の能力を胸に、猫との楽しい毎日を過ごしていきたいものですね。