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2021.10.21

猫の体重管理のためのチェックポイント"給与量の目安"ってどんなもの?

猫の体重管理のためのチェックポイント

猫の毎日の食事となるキャットフードですが、どれくらいの量を与えていますか?多くの方が与えるフードの量を考える時に参考にするのが、キャットフードのパッケージなどに書いてある「給与量の目安」ではないでしょうか。

でも、「給与量の目安」とはどのように決められているものなのでしょうか?また、体重管理が必要な猫に与えるフードの量の考え方などを簡単にまとめてみました。

キャットフードの給与量の目安とは?

キャットフードのパッケージなどに記載されている「給与量の目安」は、総合栄養食の場合はそのフードと水だけを与えることを想定して、健康的な状態を維持するのに必要となる栄養を補うのに十分な量という意味で記載されていることが多いです。
給与量の表記については、「ペットフードの表示に関する公正競争規約」という消費者庁や公平取引委員会によって認められたルールによって定められているため、日本で流通している総合栄養食の基準を満たしたキャットフードにはすべて給与量の目安が記載されています。

キャットフードの給与量の目安は、そのフードと水だけを与えていても猫が必要とする栄養を十分に摂取できる量、ということがポイントになります。

給与量の目安通りに与えていても太ってしまうのはなぜ?

給与量の目安を守っていれば健康的な状態を維持できるはずですが、給与量の目安通りに与えているはずなのに「太り気味」「肥満」などの状態になってしまっている猫も多いです。
給与量の目安を守っているのに猫が太ってしまう背景にはいくつか理由が考えられます。

 

■猫の健康状態、運動量などに給与量の目安が合っていない

猫によっては、運動量が多い猫もいればほとんど運動をしないのんびり屋さんの猫もいます。当然、運動量が多い猫とそうではない猫では消費するカロリーや必要とする栄養素にも違いがあります。
また、体質的に筋肉質な猫とそうではない猫、毛量の多い猫とそうではない猫でも消費カロリーに違いが出てきます。
若い猫とシニア猫でも同じように差が生まれます。
給与量の目安を算出する際、それぞれのメーカーがどのような計算方法で出しているかは公表されていないことが多く、猫の体質や体調に合っているかは分かりにくい部分です。
フードが作られている国によっては、広いお庭などで自由に運動をする猫を想定してカロリー計算が行われていることもありますし、日本のマンションなどで完全室内飼いのスタイルで暮らしている猫を想定していないケースもあります。

給与量の目安通りにキャットフードを与えているはずなのに、猫が太ってしまっているようであれば、もしかすると猫が暮らす環境と給与量の目安があっていない可能性があります。

 

■オヤツや副食でカロリーオーバーしている

猫との大切なコミュニケーションのひとつであるオヤツや副食ですが、これが肥満などの背景にあることも多いです。
給与量の目安を守っていてもオヤツを与えている分だけカロリーがオーバーしてしまうので、太りやすくなってしまうというわけです。
猫が喜んでくれるので、オヤツを与えたいという方も多いと思います。猫との楽しいコミュニケーションのひとつでもあるオヤツを続けながら、猫の体重管理を意識するのであれば、オヤツを与える分だけ食事の量を減らすのが効果的です。

キャットフードを与える量の考え方

最後に、豆知識として猫の必要とするエネルギー量を細かく計算する方法をご紹介します。いくつか猫の必要とするエネルギーを計算する式があるのですが、今回は比較的簡単なものをご紹介します。

順序としては、RER(Rest Energy Requirement;安静時エネルギー要求量)を出し、そこから猫の体調に合わせたDER(Daily Energy Requirement;1日あたりのエネルギー要求量)を計算する必要があります。

RERとは、「猫が何もせずにじっとしているだけで消費するエネルギー量」です。猫がぼーっとしていたり、ごろんと寝転んでいたりする状態で消費されるエネルギーと考えてください。
RERは、以下の計算式で出すことができます。

 

<簡易版>
★RER=70+30×体重(kg):体重4kgの猫で190kcal
<電卓を使って計算する版>
★RER= [体重(kg)の0.75乗]×70:4kgの猫で198kcal

簡易な方法でも、電卓で計算する式でも大きな差は出ませんので、どちらかを使って計算してみてくださいね。

RERが分かると、猫のそれぞれの体調に合わせてDER(エネルギー要求量)を出すことができるようになります。
DERはRERに猫の体調に合わせた係数をかけることで算出することができます。

 

給与量の目安は大まかな目安であり、猫の状態に合わせた給与量を知るための計算は、より厳密に給与量のコントロールが必要な場合に使用してみてくださいね。
給与量の目安をベースに、計算して出したカロリーに近づけて調整してみるのも良いと思います。

DOG's TALK

tamaの獣医さん 菱沼獣医師からひとこと

tamaの獣医さん 菱沼獣医師からひとこと

肥満の猫の場合は、適切な食事の量を算出するためにこの計算を行う場合があります。肥満気味の猫のカロリー計算を与える時には現在の体重ではなく、理想の体重に合わせて計算をするようにしてくださいね。
オヤツの制限や遊びで運動を取り入れることも併せて行うことでより効果的になりますよ。

おわりに

今回は猫の給与量の目安と、猫の体重管理に役立てたい猫の適切な食事の量、カロリー計算についてご紹介しました。
キャットフードの給与量の目安は、多くの場合でフードが作られた国や地域で平均的な猫の暮らしを想定してカロリー計算を行い、定められている場合が多いです。そのため、日本の完全室内飼いの猫には合っていないというケースもあります。また、給与量の目安の根拠となっているのは猫の平均値ですので、「うちの猫の必要カロリー」とはズレている可能性も高いといえます。
猫の給与量を考える時に活用できる計算式などをご紹介しましたが、最も正確なのはどのフードを何グラム与えた時に体重がどれくらい増えた/減ったということを記録していくこと。こまめに記録していくことで、適した量が徐々にわかってきます。
キャットフードの給与量の目安通りに与えているのに太ってしまった、ということに悩むご家族も多いですが、給与量の目安は一つの基準であり、猫の体調や個性に合わせてフードの量をこまめに調整していくことが大切です。
また、猫の中には小食の猫もいます。小食の猫の場合も無理に食べさせようとせず、猫が食事に興味を持ってくれるようにウェットフードを試したり、栄養が豊富なオヤツを与えるなどの工夫をして健康維持に役立てていきましょう。

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