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2023.09.28

ちゃんとオイルコーティングして「ます」。キャットフードとオイルの話

ちゃんとオイルコーティングして「ます」。キャットフードとオイルの話

キャットフードについて調べていると、ときどき「これって本当なのかな?」と感じる情報を見つけることがあります。
インターネット上には古い情報がそのままになっているところや、正しくない情報がもっともらしく紹介されているところもあります。

猫の健康を守るためにも、これらの情報に惑わされず、正しい情報を知っておきたいですよね。
今回は、キャットフードの製造法に関してたびたび話題になる「オイルコーティング」についてご紹介いたします。

オイルがキャットフードの酸化を進める?

まずは、オイルコーティングと結び付けて語られることも多い「酸化」について振り返ってみましょう。
キャットフードに含まれる「脂質」などの成分が酸素と結びついたり、紫外線などに反応して変性してしまう現象を「酸化」と言います。
酸化が進んだキャットフードには、嗜好性がガクッと落ちたり、変性した脂質が猫の体調に悪影響を与えるようになるなど、様々なデメリットがあります。

猫の健康と安全のためには、普段与えているキャットフードの酸化をなるべく防ぐことが大切です。

オイルコーティングは悪者ではありません。

オイルコーティングは、キャットフードの製造工程の一部で、脂質を加えたり、調整する際に行われるものです。
この工程は、キャットフードの栄養バランスを調整する上で必須のものなのです。

必要以上にオイルコーティングが悪者扱いされてしまう背景には、かつて採用されていた製法にも理由があるようです。

■昔:キャットフードにオイルを練りこむ

まず、肉や魚などの他の材料と一緒に全て混ぜて練りこんでしまう方法があります。
この製法は長らくキャットフードで採用されてきました。
他の材料と同じように機械に入れてフードに練りこむことで、手間もかからず手軽です。
ただし、この方法ではオメガ3脂肪酸などの熱に弱い成分の酸化が製造の工程で進んでしまう可能性があります。

 

■以前:オイルスプレー

やがてキャットフードに関する研究が進み、オメガ3やオメガ6といった熱に弱いオイルもキャットフードに使用されるようになり、他の原材料と一緒に練りこんでしまうデメリットが注目されるようになります。
この時点でフードを粒にして加熱した後、冷ましてからオイルをスプレーする「オイルスプレー」工程が用いられるようになりました。しかしこの工程では、オメガ3やオメガ6脂肪酸を熱によるダメージからは守ることができるものの、オイルを粒の表面にまぶしただけなので、ベタつきが強く感じられるだけではなく、空気に触れることで酸化が進みやすいという弱点がありました。
 

■近年:真空下でオイルをスプレーコーティングする

近年、プレミアム品質のキャットフードで採用されることが多いのが、キャットフードの粒を作った後にオイルを真空状態で吹きかけるという製法です。
フードの粒を作った後、熱を冷ましてから真空状態にすることでオイルの成分が高温になり酸化することを防ぐことができるようになりました。

真空状態にすることで、奥までオイルがぎゅっと浸透するようになります。オイルが粒にきちんと浸透しているので、ムラになりにくく、粒によって偏りが発生しにくくまんべんなく成分をしみ込ませることができます。オイルが染み出したりすることもなく、ベタベタ感も軽減できています。

これまでのオイルコーティングの問題点を解決してくれる製造方法ですが、専用の機械が必要となり、作れる工場が限られていたり、製造コストは以前の製法のものと比べて高くなる傾向にあります。
ちなみに、tamaのキャットフード ボナペティもこの真空でのスプレーコーティング製法を用いて製造されています。
この製法は表面だけをオイルでコーティングする方法、オイル成分を練りこむ製法と比べても酸化が進みにくくなっています。

猫にとってオイルは必要!その理由

次に、キャットフードにオイルが使われている理由を改めてご紹介します。従来の方法では酸化やベたつきといったリスクがあったにも関わらず、なぜオイルがキャットフードの製造工程において重視されていたのか、探っていきましょう。

  • 必須栄養素である脂肪酸の供給源として

リノール酸、DHA・EPA、アラキドン酸は猫の必須栄養素であり、総合栄養キャットフードの基準を満たすためには必ず配合しなくてはいけません。これらの成分を含む食材を使用するだけでは基準を満たすことができない場合、オイルをプラスすることで必要な栄養基準を調整することがあります。

 

  • 嗜好性を高めるため

キャットフードに使用されている油(オイル)は、フードの嗜好性を高めるために使用されているという一面もあります。

天然由来の成分で猫の興味を引く香りを使用することで、興味を持ち嗜好性が上がります。
また、香りでキャットフード特有のにおいを抑えるために使用されている側面もあります。

 

  • 栄養バランスを整えるため

嗜好性を高める以外にも油(オイル)には大切な役割があります。それは、栄養バランスの調整です。
健康管理において、油分を含む脂質は必須栄養素の一つです。脂質はエネルギー源として活用されるほか、細胞を保護する膜を作ったり、皮膚や被毛の保護にも必要な栄養素です。

また、キャットフードに使用される油(オイル)には機能性成分を含むものもあり、健康維持に役立てる目的で敢えて使用されているものも。代表的なものとしては、EPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸のほか、植物由来の油(オイル)には抗酸化力を持つポリフェノールやビタミンEを含むものもあります。

ミスリードを誘うような業者に注意


インターネット上では「オイルコーティングはキャットフードの酸化を進める」ということを前提に、不安を煽るような記事を掲載しているサイトを目にするようになりました。
最終的には「独自製法を取っている自社のフードなら安心」と結論付けて、販売に結び付けようという意図で書かれていますので、その記事が信頼できる情報をもとに書かれているのか注意が必要です。

例えば、通常のオイルコーティングの手順をあたかもオイルコーティング以外の独自の製法であるかのように記載しているケースもあります。
ですが、真空下でオイルをしみ込ませる製法自体は近年では多くのプレミアムキャットフードで採用されているものです。ちなみに、独自としている製法について特許庁のデータベースでも調べてみましたが、該当する技術は存在しませんでした。(独自の技術ではないということ)

「なんとなく良さそう」「最新技術のような気がする」という印象を与えるような書き方、紹介の仕方をする巧妙なミスリードを狙った業者が多くなっています。
大切な家族である猫に与える食事ですから、正しく信頼できる情報であるかどうかは非常に重要です。
tamaでは皆さまと同じ目線で、正しい情報を発信し続けてまいります。

おわりに

今回は、キャットフードの製造工程において、勘違いされがちな「オイルコーティング」について改めてご紹介いたしました。
正しくオイルコーティングやキャットフードの酸化が進む原因について知ることができれば、インターネット上でたびたび見かける情報に惑わされることも減っていくのかもしれません。
キャットフードに使用されている成分や製造工程など、不安に感じることがあればtamaのコンサルティングサービスなどでお気軽にお問い合わせください。